高山由紀子 吉原代筆人 雪乃 一 色もよう 1


若干、首をひねらざるを得ない、面白くないことは無いのだけれども、面白いとも断言できない本でした。

吉原の南のはずれにある、九郎助稲荷神社の境内を掃き清めていたおとよは、社殿の石段に蹲っている女を見つけ、捨て置けずに自分の家へ連れて帰る。その女の名は雪乃といい、人を探して吉原まで来たものの探し人はおらず、生きる術(すべ)を探しているという。そこで、一度目にした文字や絵をそのとおりに書けるという特技を持っていた雪乃は、おとよの手伝いとして吉原で生きていくことになるのだった。

吉原で暮らす女たちの様々な生き様を描き出している連作の短編集なのですが、どうも物語の世界に入りづらい作品でした。筋そのものが単調なこともありますが、それはまだいいのです。単純な筋でありながら情景や心理描写等の丁寧な書き込みにより、深い余韻を残す作品は沢山あります。残念ながら、本作品はその余韻を感じられませんでした。

あら捜しをすれば、吉原からは女が外に出るのは切手が必要であり、女が勝手に吉原へ入ることはまず無かったと聞いたことがあります。とすれば、女一人で吉原に入るという設定に、もう少し説得力があった方がいいのではないでしょうか。雪乃の抱える秘密にその理由があるのなら、そこらを上手く描いてほしかった、と、冒頭から思ってしまったのです。

「序」に続く一作目「旅立ち」では、娘を思う母親の女としての幸せと、母の子に対する思いとのせめぎ合いが描かれています。何の飾りも無い単純な筋です。しかし、その単調さを補うものがありませんでした。男が殺され、母親が自首をしたとき、犯人を聞いて雪乃はやはりと思うのですが、雪乃がそう思うことに別に何の感慨もありません。母親の過去が示され、それゆえに子と別れざるを得なかった母親の悲哀と感傷的な言葉が目立つばかりなのです。

もう少し、感傷に流されず、吉原の遊女たちの生活や日々の暮らしが丁寧に描いてあればと思い、そしてもう少し、説明的ではない文章で示してくれればとも思ってしまいました。

一方、まだ表には示されていない主人公の秘密や、垣間見せられる主人公の過去など、全体を貫く謎を抱えながら物語は進んでおり、もう少しだけでも私の好みに合った丁寧な書き込みがあれば面白い作品だろうに、とも思えるのです。

今後、しばらくは追いかけて見ようかとも思わせられる作家でした。

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