FC2ブログ

アンディ・ウィアー 火星の人


これは面白い本でした。内容は火星版のロビンソンクルーソーですが、SFとしての面白さを久しぶりに堪能できました。ちなみに、かつて上映された「火星のロビンソンクルーソー」という映画とは関係がありません。

マーク・ワトニーは有人火星探査チームの一員だったが、猛烈な砂嵐による緊急の火星離脱の直前に吹き飛ばされ、ひとり無人の火星に取り残されてしまう。無線も壊れてしまい、連絡のとりようもないワトニーはいかにして生き抜くのか。壮絶だが、ユーモラスなサバイバルが始まった。

とにかく、ハードSFという分類はされているのですが、これまでのハードSFとは異なり、中学生の数学でも理解できるような計算で必要な食糧、酸素量等を導き出し、それを、身近にあるものから創意工夫によって作りだしていきます。その過程は、実際は高度な学問、知識に裏付けられた工夫なのでしょうが、あまり難しさを感じさせません。

しかし、本作で一番の特徴として挙げなければならないのは主人公マーク・ワトニーのキャラクター設定でしょう。ひとり無人の火星に置き去りにされた男の能天気なこと。

基本的にマーク・ワトニーの手記(正確にはログ)の形で、それも一人称で述べられていますが、その姿勢は常に前向きです。例えば事故から一夜明けたときのログは、「けっして完全に絶望的な状態ではない。約四年後にはアレス4が到着して、火星に人間がもどってくる。」「というわけで、それが僕のミッションだ。」と、前向きに生きていこうと決心します。このあと、自分が四年間を生き抜くに必要な水、食糧、空気などの条件を考察し始めるのです。

そして、その条件の考察のときでもユーモアあふれるその文章が光ります。例えば、生き抜くためにはカロリーだけが足らず、毎日1100カロリーを作りださなくてはなりません。そうした状況でカロリー消費を減らすために、「片腕を切り落として食べれば、貴重なカロリーが獲得できて、必要なカロリーの総量を減らせる。いや、それはちょっと違うか。」

また、「あとがき」でSF評論家の中村融氏が引用している文章。それは、「エアロックは横倒しになっていて、シューッという音がずっときこえている。だから、空気が漏れているか、蛇がいるかどっちかだ。どっちにしても困った状況だ」。

他方、火星を離れた地球のNASAや緊急離脱した宇宙船の内部の場面などでは、通常の三人称での描写に移ります。このNASAでの描写などは、いかにも「SFおたく」だった作者らしく登場人物の配置も上手く、そこでの描写もとても新人とは思えません。何とかして火星で一人生きている主人公を助けようと努力するその姿は心を打たれます。

本作は作者アンディ・ウィアーの処女長編だそうです。それも、もとはネット上に少しづつアップしていたところを、あまりの人気に大手の出版社が目をつけ出版する運びになったと言います。

ここのところ、SF作品を読む機会が減ってきていました。でも、本作のような、驚きに満ちた世界を繰り広げてくれる作品に出会うと、やっぱりSFの面白さを再認識し、新たな感動を呼び起こしてくれる作品を探したくなるのです。

また、あのSF映画の名作「エイリアン」の監督のリドリー・スコットにより、主人公をマット・デイモンが演じて映画化されるそうです。これまた今から楽しみです。

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR