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ジョン・ヴァーリイ ティーターン

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もう30年以上も前に読んだこの本ですが、再読してみました。女船長のシロッコを主人公とするこの物語は、「八世界」シリーズで有名なジョン・ヴァーリイの、冒険小説と言ってもおかしくないSF小説です。

土星の近くで新たな衛星を見つけ、接近してみるとそれは車輪状の構築物だった。探索のために近づいたシロッコたちはその衛星に飲み込まれてしまう。目覚めると、そこは超巨大な車輪の内部であり、見知らぬ生物が闊歩する世界だった。

以前読んだブライアン・W・オールディスの『地球の長い午後』と同様の、異世界を舞台とする冒険小説、とも言える作品です。

『地球の長い午後』は遠い地球の姿を描いた小説でしたが、本作品は舞台そのものが異星人の構築物なのです。それも土星の衛星ヒューペリオンの軌道の内側に二点で接しようとし、その内側にある衛星ティターンの軌道を横切る軌道を持つ、直径が1300Km、外周が4000Kmにもおよぶ巨大なリング状の構築物です。

ヴァーリイの小説らしく、主人公は女性です。それもリーダーとしての資質を十分に備え、冒険心に満ち溢れた女性として描いてあります。その主人公を船長とする「リングマスター号」ごと、テミスと名付けられた構築物に飲み込まれてしまいます。

そこから先は、以後「ガイア」と呼ばれるこの構築物の内部を、同時に飲み込まれた他の6名の乗組員を探しながら、更にこのガイアのハブ部分にいるであろうガイアの創造者に会うべく探検していくのです。途中、飛行船にも似た空中浮遊生物や、ギリシア神話のケンタウロスに似たティーターニス、天使そのままの姿をした生物などガイア独自の生物に遭遇しつつ、天に向かってそびえるケーブルを伝い、ハブを目指します。

「戦い」「戦争」といった人間の闘争行為に対する、揶揄とも思えるあからさまな設定を持つこの物語は、本書に続く第二部でも「争い」の醜さを示唆しているそうです。作者の本作品を書いた意図の一端はこうしたところにもあるのかもしれません。

本書はハードSFなのです。しかしながら、内容はファンタジーとも言える冒険譚になっています。SF好きでなければ決して手に取ることもないであろう作品ですが、本書に続く第二部、第三部で物語は更なる展開を遂げる、のだそうです。残念ながら続編は読んでいません。第三部は日本語への翻訳すら為されていないようです。でも、いつか第二部は読んでみたい作品です。

蛇足ながら、本書の中で「十二番目の衛星を見つけた」との台詞があります。ところが、ウィキペディアによりますと「2009年10月までに、土星には64個の衛星(うち3個は不確実)」があると記載してあるのです。本書が刊行された1979年頃の情報はそうだったのでしょう。ちなみに、私の手元にある文庫本は3版で1983年3月25日で、初版の刊行日は1982年7月23日です。

ジョン・ヴァーリイ へびつかい座ホットライン


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ふと思い立ち、しまいこんでいたSF関係の文庫本を引っ張り出しました。一番最初に目についたのが本書です。殆ど三十年ぶりくらいに読み返してみました。奥付を見ると昭和六十一年一月三十一日発行とあります。本書に記入しているメモによると、1986年2月12日に熊本紀伊国屋書店で購入していますから、出版されてすぐに購入したみたいですね。当時は購入した本の裏表紙に購入日付を書いたいたのですから感心していいものやら、不思議な気持ちです。

読んでみると、全く新鮮な感じでした。覚えていたのは「へびつかい座」から送られてきた種々の情報を利用して、各段の進化を遂げた人類の物語であり、人体の変形に対して何の忌避感も持たない世界であるということだけでしたが、その情報は物語の展開にはほとんど役に立たないと言ってもいいものでした。

遺伝子の改変を試みたために「人類の敵」として断罪されているリロは、死刑執行の間際にトイード元大統領の手によって救出されます。リロが死刑判決を受けた原因でもある「ライフカプセル」が欲しいというのです。引き換えに、リロはトイードの求めに応じて土星へと赴くことになったのですが、待ち構えていたのは勿論冒険なのですが、その先にあったのは「死」だったのです。

今回、本書を再読するにあたり何となく違和感を感じたのは、本書がSFの一つの思想でもあるサイバーパンクに連なる匂いを持っていたからだと思います。それまでのSFの否定としてのサイバーパンク運動は、どうしても反社会性を帯び、何よりも個人の内面への回帰を強く主張したものでした。それは、宇宙狭しと飛び回り、新鮮な驚きをもたらしてくれるはずだった私の好きなSFではなかったのです。最初に読んだウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」があまり面白いと思えず、拒否感を持ってしまったのが大きいのかもしれません。人間の肉体への改変、は当たり前であり、脳はネットワークに直接につながる世界、大きく言えばそうした世界なのです。ただ、映画『ブレードランナー』は好きな映画の一つではあります。

本書はそうした人間の肉体への改変を当然としている世界であり、主人公の死も普通の出来事の一つとして起きる世界です。生や死の捉え方が全く異なる世界なのでやはり取り付きにくいのも当たり前だと思います。

物語の進行につれてそうした世界観も判ってきましたし、読み終えてみると、かつてのようにどっぷりとこの小説にはまっていました。

この物語はヴァーリイの作り上げた未来史である「八世界」を舞台にしています。つまり、地球は2050年にエイリアンにより侵略され、水星、金星、月、火星、タイタン、オベロン、トリトン、冥王星という八つの衛星、惑星に居住するのみです。「八世界」とはこの人類世界の呼称なのです。ちなみに、このうちタイタン、オベロン、トリトンとは、それぞれに土星、天王星、海王星の衛星を言います。

終盤、リロは「へびつかい座ホットライン」と呼ばれている未知の知性に会うべく太陽系を離れることになるのですが、ここに来るまでに何度か死んでいます。そのたびにクローン処理により別なリロとして再生して新たな記憶のもとに行動し、やっとへびつかい座に向けて旅立ちます。その先に待ち構えていたものは、という流れになるのですが、最後はやはり時空を超えた展開が待ち構えています。

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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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