恒川 光太郎 金色機械


この作家の作品は始めて読みました。調べて見ると、『夜市』という作品で角川ホラー大賞を受賞されているようです。でも、本書でもホラー色はありません。というより、ちょっとダークな時代SFファンタジーですね。

とある大遊郭「舞柳(ぶりゅう)」にある「しなの屋」の楼主である熊悟朗と新しく店に入る遊女との面談の場面から始まる。その遊女の名は遥香といった。熊悟朗には心眼、つまり、嘘、隠しごとを火花と感じ、殺意を黒い霧と認識する能力があった。一方新しい遊女の遥香にも、命あるものを触るだけでその命を奪う力があったのだ。遥香は熊悟朗に自分の過去を語り始める。この二人の過去は意外なところで交錯するのだった。

恒川光太郎(つねかわこうたろう)という人は、「幻想的、民話的な作風で読者を魅了してきた」作家だそうです。確かに、本書も民話的香りが感じられます。

本書で最初に語られるべきは、タイトルにもなっている「金色機械」でしょう。村人が恐れ敬う、月からやって来た神様であり、かつて遥香が出会った神様「金色様」なのです。この簡単に言ってしまえば、語られることのない未知の存在によって作られたロボットである「金色機械」を中心に話は動くことになります。

章が変わると熊悟朗の過去の物語も語られます。父親に殺されそうになるところをその能力で察知し逃げ出したコヘ。山賊に助けられ、ならず者の巣窟「極楽園」、別名「鬼御殿」へと連れて行かれ、熊悟朗と名前を変えるのです。そこには遊女たちもおり、紅葉と呼ばれる娘もいました。更には、口を聞くことのできる黄金の仏像もあったのです。

当初、全くの前提知識無しに本書を読んだときには、若干章毎の時代設定がつかめず、物語の流れを見失いがちになりました。遥香の物語と熊悟朗の物語が、時代を違えて語られるので戸惑ったのです。しかし、一旦本書の構成が理解できると、物語に引き込まれてしまいました。

遥香は自分の母親を殺した犯人を探そうとしています。そして、その探索は熊悟朗の過去へと結びついて行くのです。この犯人探しというミステリーとしての要素もあり、それなりの興味を持って読み進めます。でも、なによりも「金色機械」の存在を中心とした物語の流れが、一点にむかって集約していく様が面白いのです。

「人間にとって善とは何か、悪とは何か」という本書の帯に書いてる惹句が、本書の序盤からはっきりと意味を持って読者に迫ってきます。遥香の行ってきた安楽死の話もそうですし、熊悟朗を拾った山賊の夜隼(よはや)が、「正しいとは何か」なぞわからん、と言い、「だが悪とは何かといえば」「幕府も藩も何もかもが悪」「我らは我らの流儀で生きるしかない。」と言い切ることもそうです。更には「これまでも作品の中で大きなテーマとして毎回死生観について描いてきましたが、今回ほど色濃くなったことはないでしょう。」と著者自身が語るように、物語の全編で「生きる」ことについて問われているようです。

とはいえ、先にも書いたように、SFファンタジーであり、ミステリー色を持ったこの物語は、単純に”楽しめる”小説でもあります。

スター・ウォーズの人型ロボットC-3POがモデルだという著者のイメージを持つことは無かったのですが、「金色機械」の生涯としても読めそうです。

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本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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