FC2ブログ

浅倉 卓弥 四日間の奇蹟


図書館でいつもの通り本を眺めていたら、「このミステリーがすごい!」大賞の金賞を受賞し、「癒しと再生のファンタジー」を描いた作品だという紹介文を見つけ、これまたいつもの通りにすぐに借りました。

自らもピアニストであった如月敬輔は、自閉症でありながら天才的なピアニストでもある楠本千織という少女を連れ、とある療養施設にたどり着いた。そこにいた職員の一人の岩村真理子は高校時代の如月敬輔を知っていて招いたらしい。次の日、真理子と千織が散歩をしているときにヘリの墜落事故に二人が巻き込まれてしまい、信じられないことが起きるのだった。

全くの前提知識なしに読んだ本が、意外な面白さを持っていたときの喜びはまたひとしおです。本書もまたまさにそんな本でした。惹句の「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」という文句が実に的を得た文言だと納得できる、とても新人の作品とは思えないほどに丁寧に書きこまれた作品でした。主人公如月敬輔と楠本千織との出会い、キーマンである岩村真理子との邂逅。そしてその後の展開と、そのどれもが不自然さは全く感じられませんでした。

タイトルに「奇蹟」とあることからも、内容はファンタジックな物語だということはすぐに見当がつきます。問題はその不可思議な出来事の処理の仕方でしょう。

この作品の要は「人格の転移」です。このことは本作品をちょっと調べればネット上のあちこちに書いてありますので、書いてもネタバレにはならないでしょう。つまりは、大林宣彦監督の青春映画の名作と言われている『転校生』の設定なのです。勿論、状況設定が同じというだけで、物語は全く違います。そして、その人智を超えた出来事の描き方は新人の域を超えていると誰もが思うでしょうし、その結果が「このミステリーがすごい!」大賞金賞受賞に結びついているのです。

文庫本で501頁と、若干長めではありますが、その長さを感じさせない筆力があります。単なる感傷ではない、読み手の心の中にまで入り込んでくる場面の描写は、勿論全くの個人的な印象ですが、どことなく小川洋子の『博士の愛した数式』を思い起こすものでした。

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR