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雫井 脩介 仮面同窓会




かつての悪ガキ四人組みのいたずらがもとで発生した殺人事件を描く、長編の推理小説です。

青春の思い出を語り合うだけのはずだった。同窓会で再会した洋輔ら四人は、旧交を温め合ううちに、かつての体罰教師への仕返しを思いつく。計画通り暴行し置き去りにするも、教師はなぜか別の場所で溺死体で発見された。犯人は俺達の中にいる!?互いへの不信感が募る中、仲間の一人が殺されて…。衝撃のラストに二度騙される長編ミステリー。(「BOOK」データベースより)


主人公の洋輔は、十年近く経って開催された同窓会で、かつての皆川希一、大見和康、片岡八真人という仲間と再会します。彼等は共に、樫村から理不尽な仕打ちを受けていました。それは体育教官室の前で強いられる正座や、前時代的な「天突き体操」であったりしたのです。

彼らの樫村に対する恨みは強く、久しぶりに会った同窓会でのことでもあり、いつしか樫村に対する仕返しを計画しているのでした。

計画通りに樫村を拉致し、顔を隠した四人の前で「天突き体操」をさせることに成功します。その後、ガムテープを巻いたままの樫村を放置したまま帰宅した四人でしたが、翌日もたらされたのは、仕返しの現場からは離れた静池で樫村が死んだというニュースでした。

樫村を仕返しの現場に放置したことを知っているものは他にはおらず、樫村殺しの犯人は四人の中にいるとしか考えられないと、疑心暗鬼にかられる四人です。

そのうちに、事態は思いもかけない方向へと向かうのでした。

本書の帯には、「『火の粉』『犯人に告ぐ』を凌ぐ、雫井脩介の新たな名作誕生」という惹句がありました。しかしながら、『火の粉』は未読で分かりませんが、とても『犯人に告ぐ』を凌ぐなどという作品ではありません。

これが同じ雫井脩介の作品とは思えないほどの作品でした。

そもそも、高校時代の教師に対する恨みを十年後に晴らすという設定自体に無理を感じますし、その点については目をつぶるとしても、途中でのミスリードを誘う仕掛け、それも複数の仕掛けも、あまり出来がいいとは感じませんでした。

私はこの仕掛けにはまったのですから、意外性が無かったといえば嘘になります。しかし、一般的に出来のいいミステリーでの仕掛けにはまることにより感じられる痛快感、爽快感全くと言っていいほどに感じられなかったのです。

『犯人に告ぐ』の面白さは改めで言うまでもないほどに高いものですが、本書は本当に同じ作者が書いた作品かと疑いたくなるほどです。惹句のためにハードルが挙がっていたのは否定できませんが、それにしても残念な作品としか言えませんでした。

雫井 脩介 途中の一歩 (上・下)



「大人のための愛と勇気の物語」という惹句が書いてありましたが、端的に言って理解しがたい作品でありました。

漫画家の覚本とその悪友の長谷部、覚本の担当だった編集者の玉石とその知り合いの相馬らは、そろそろ恋人を見つけなければと、合コンを繰り返すのですがなかなか良い子は見つかりません。そんな中、覚本の現在の担当編集者である西崎綾子をきっかけに、男どもと同様に自分の年齢に焦りつつ合コンを繰り返すOLの松尾奈留美や、現役の人気漫画家である緑川優、そのアシスタントの紗希、それに綾子自身という女子組は、覚本ら男どもとの間で、思いもかけない恋の綱引きが始まります。

これまで読んできた雫井就介の小説を思っていたら足をすくわれました。ミステリーは勿論、恋愛小説でも読みやすくていながらも読み応えのある作品を発表してきた作家だと思い期待して読み始めたのですが、残念な結果でした。

この作家にしては人物の造形が中途半端な気がします。主人公の覚本はまあ、そこそこ描いてはあるのですが、友人の長谷部は合コンの場面にしか存在感がないし、世間知らずの上から目線の相馬は結局学歴を強調する意味がよく分かりません。まあ、外の登場人物にしても、この作家の他の作品に比べると存在感がありません。

登場人物の仕事振りにしても、漫画家の仕事内容など興味を持てそうではあるのですが、表面的にしか描いてなくてこの点でも物足りません。恋愛ものとしても小さな世界で完結するだけで心に響きません。コミカルな展開なのでそれも当り前かと思っていると、ストーリー自体に興味がもてていませんでした。

このように思うのは、私が恋愛ものが得意ではないから、という理由だけではないと思うのですが、ネット上で評判を見ると、私同様にこれまでの雫井作品とは異なり面白さはない、との評価が散見されつつも、この作品なりに面白いとも声も少なからず見られました。

結局、作家は何を言いたかったのでしょう。「人生で大事なのは、途中の一歩なんですよ。始めの一歩よりありふれているから気づかないけど、自分次第で特別な一歩になる」というセリフを言わせています。タイトルもこの言葉からとっているところからすると、この点を言いたかったのでしょうか。

確かにこの作家の作品らしく読みやすいのは事実ですし、テンポが悪いわけでもありません。そうすると個人的な好みの問題に帰着するのかとも思われます。それでもなお、雫井作品としては高い評価をつけるわけにはいきませんでした。

雫井 脩介 犯人に告ぐ2  闇の蜃気楼


「振り込め詐欺」の手法を使い仕組まれた「誘拐ビジネス」に対する神奈川県警の巻島史彦警視を描く警察小説です。警官がテレビに出演し犯人に呼び掛けるという衝撃的な内容だった前作からすると、少々見劣りのする物語でした。

ミナト堂社長水岡はその息子裕太と共に何者かに誘拐されてしまうが、水岡のみが解放された。犯人は何故に水岡のみを簡単に開放してしまったのか。神奈川県警の巻島史彦警視は、この誘拐犯の捜査指揮を任されることになり、再び陣頭指揮に立つことになった。

本書は前作とは異なり、犯人探しの要素は全くなく、犯人側の視点と警察の視点とが交互に描かれ、犯人と警察、すなわち巻島との知恵比べが見どころになった小説です。この点で、前作同様の緊迫したサスペンス小説だとの私の思い込みは外れ、見劣りする、という印象になったのでしょう。

本書の冒頭は「振り込め詐欺」の詐欺の様子が描かれ、その犯人チームの詐欺行為に傾ける努力の様子などが示されます。そこで焦点が当てられているのが砂山知樹、健春の兄弟であり、指南役である淡野悟志です。この振り込め詐欺の実行の様子それ自体も一つの物語であって、その後の物語の伏線ともなっているのですが、個人的にはこの部分は余分としか思えませんでした。

何しろこの本を手に取ったのが前作『犯人に告ぐ』の面白さのためであり、本書の内容に対しては何の予備知識も無かったのです。つまりは前作のような緊迫感に満ちたサスペンスを期待していたにもかかわらず、「振り込め詐欺」の実行の様子が淡々と(と言っては語弊がありますが)語られるのですから、肩すかしをくらった印象なのです。

その後、神奈川県警の様子が少しずつ描かれていき、巻島警視が登場し、巻島の読みが深くなってくる後半はそれなりの面白さが出てきます。特に正体不明の淡野の仕掛けに振り回される被害者、警察に対し、巻島が少しずつ巻き返していく過程は、お定まりの流れはいえやはり読ませる作家という印象です。

ただ、やはり前作のインパクトが強く、どうしても引きずってしまいます。

他にも、前作から登場する県警本部長である曾根要介の描き方が若干強引過ぎると思われることや、特別捜査隊隊員の小川かつおの在り方が、やはり安易に過ぎるように思えることも気なるところではあります。共に、県警本部長になるキャリアにしては乱暴に過ぎるし、小川にしても一人前の捜査隊員ではありえない設定ではないかと思えます。

でも、こうした点は小説のデフォルメの範囲内であり、巻島を目立たせる細工の一つとして取り立てて言うほどのことではないとも思うのです。

ともあれ、前作の面白さが群を抜いていたため、そのハードルの高さで本書を見ていたことは否めず、そうした先入観を無くしてしまえば、やはりそれなりの面白さを持った警察小説ではあります。

とくに、今回犯人として登場した淡野はそれなりに魅力を持った悪役であり、今後のこのシリーズの行く末を暗示しているようです。今後の展開を待ちましょう。

雫井 脩介 検察側の罪人


ミステリーと言っていいものか、「正義」とは何か、という大上段からのテーマに正面から挑んだ大作です。

主人公の最上毅は、司法試験浪人時代に、自分が学生時代に暮らしていた寮の世話人夫婦の一人娘が殺された事件を忘れられないでいた。今は東京地検のベテラン検事になっている最上は、大田区で起きた老夫婦刺殺事件の容疑者の一人に、かつての事件の容疑者であった男の存在を知る。その男が今回の事件についてかかわりを持つのであれば今度こそは逃がさないと決意する最上だった。しかし・・・。

小説として面白いかと問われれば、決して全面的に賛成というわけにはいきません。読み始めから本書全体を通しての構造の見当がついて、ほぼその通りに進みました。加えて、物語自体が重すぎて、個人的な好みからも外れていました。

物語のトーンが重くても、十分なリアリティを持ち、丁寧な書き込みが為されていれば、それなりに感情移入できる作品ももちろんあります。しかし本書の場合、それもありませんでした。でも、結局のところ面白いと感じなかった一番の理由は、最上という検事の存在感の無さに尽きるようです。

テーマには興味がありました。昔、少しだけ法律の勉強をしていた私にとって、あくまで法律の解釈という側面の問題ではありますが、本書の扱う問題は決して遠い話ではなく、実に身近な問題でした。法律を学ぶときに「法とは何か」が常に問われ、勿論「正義」の何たるやについても話し合ったものです。

「正義」などという、誰しもが大切に思っているのに言葉として口に出すことをはばかるような、それでいて人間存在にかかわるようなこの言葉を、多くの作品が多かれ少なかれテーマにしてきました。すぐに思いつく作品では、東野圭吾の『さまよう刃』や横山秀夫の『半落ち』など、他にも挙げればきりないでしょう。

そして、本書『検察側の罪人』というこの作品で、答えのない設問ともいえるこの問題に対し、『犯人に告ぐ!』を書いた雫井脩介という作家はどのような答えを出すのか、非常な関心を持って読んだのです。しかし、雫井脩介という作家の物語の処理の仕方とすれば、決して認めたくはない作品と感じたのです。

勿論、検事の存在感が無い、という批判を、「正義とは何か」を問う小説の設定として設けられているだけ、と割り切れば取るに足りない事柄であり、そう捉える人にとっては、言葉は違うかもしれませんが、面白い小説ということになると思います。それほどの力作だという点では異論はないのです。

終盤、最上を追い詰めた新進気鋭の検事の慟哭は、作者なりのこの問題に対する答えなのでしょうし、読んでいて胸が熱くなる思いでした。それだけに、最上検事の行動に対しては賛否以前の印象を持たざるを得なかったことはとても残念でした。

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このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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