FC2ブログ

金子 成人 付添い屋・六平太 獏の巻 嘘つき女




付添い屋六平太シリーズの第九弾です。

第一話 犬神憑き
付添い屋の秋月六平太は、北町奉行所の同心・矢島新九郎から「打ち首獄門にかけられる罪人の、市中引き廻しに同道していただきたい」と依頼される。隠れ家を密告され捕らわれた兇盗・五郎兵衛は、奪った金五百両の隠し場所を、打ち首と決まっても白状せずにいた。五郎兵衛は、死の直前、不思議な言葉を六平太に告げる。
第二話 宿下がりの女
新川の味噌屋「出羽屋」の娘・寿美は、つい最近、奉公していた武家屋敷から宿下がりをした。その直後から、編笠を被った侍に付け狙われるようになったという。寿美は、側室と家臣の密通をはからずも目撃してしまっていた。
第三話 となりの神様
六平太は鰻屋「兼定」の主人定松から、店で無銭飲食をしたまま出ていった亀助という男の居所を調べてほしいと依頼させる。亀助はどこの店に行っても金を払わない。だが、彼が長く滞在する店は必ず繁盛するというのだ。
第四話 嘘つき女
代書屋「斉賀屋」に勤める博江に呼び出された六平太は、ある少女が代筆を依頼した不穏な手紙の内容について相談される。一方、市中引き廻しとなった兇盗・五郎兵衛の一味の者たちが、六平太の身辺をうろつきはじめる。


今回は、まさに六平太の活躍が目立つ物語です。

第一話「犬神憑き」では、罪人の市中引き回しの付添いという、普通ではありえない依頼があります。そこは、普段付き合いのある同心の矢島からの依頼ということであまり突っ込むところではないのでしょう。

その上で、この話の「犬神憑き」というタイトルのもとともなった長屋の騒動などを織り込みながら、もう一つの意味でもある、「犬神」という二つ名の五郎蔵という盗賊が、打ち首前に、六平太にある言葉を言い残し、死んでいくのです。

第二話も、側室の秘密を見てしまったがために襲われる武家屋敷に奉公していた娘の付添いという、用心棒稼業の六平太ならではの物語です。

第三話は、ある種のファンタジーであり、本書の息抜き的な話になっていて、その男が店に来ると繁盛するという噂の男の物語です。剣戟の場面はなく、ほっこりとする人情話になっています。

そして、第四話は、博江に代筆を頼んだ娘に絡んだ人情話です。この話もほんのり心があたたかくなる話です。

その上で、第一話で語られた犬神の五郎蔵という盗賊が隠したと思われる金をめぐり、五郎蔵の残された子分たちが各話で入れ代わり六平太の前に現れ、五郎蔵の最後の言葉を探り出そうとします。

そして、第四話でほっこりする人情話と共に、五郎蔵の残した金をめぐる捕物が展開され、本書全体を通して五郎蔵に絡む金にまつわる物語が語られるのです。

そしてもう一点、行方不明となっていた、六平太の女だったおりくについての話が、少しずつではありますが語られます。今では博江という新たなヒロインと思われる女性が登場しているものの、おりくが再び登場するのであれば、六平太をめぐる色恋の話が繰り広げられることになるのかも知れません。

金子 成人 付添い屋・六平太 麒麟の巻 評判娘




付添い屋六平太シリーズの第八弾です。

第一話 大根河岸
青物問屋「加島屋」の主人・幸之助から下赤塚にある富士塚までの付添いを頼まれた六平太は、片道四里半(18キロ)を同行することになった。ここ三、四年、幸之助は道中で体調を崩してしまうというのだ。
第二話 木戸送り
六平太が稽古に通う四谷の相良道場に、常陸国笠松藩石川對馬守下屋敷の使い方、横田邦士郎が助けを求めて駆け込んだ。屋敷内で喧嘩から刃傷沙汰を起こした邦士郎は、なんとか無事外に逃がしてほしいと懇願する。
第三話 評判娘
六平太がなにかと世話を焼いている博江が、「当世 評判女」に東の前頭八枚目で番付入りした。物見高い男たちが勤め先の代書屋へやってくることに、武家出身の未亡人である博江は戸惑っていた。
第四話 二十六夜
妹佐和の夫音吉から付添いの相談を受けた六平太は鉄砲洲にいた。音吉の幼なじみ巳之助は、四年前に人を殺めた罪で遠島となっていたが、恩赦で江戸に戻ってくるという。音吉は巳之助が復讐に向かうことを恐れていた。(「内容紹介」より)


約一年半ぶりにこのシリーズ作品を読みました。久しぶりに読むことでかなり客観的な読み方になっていると思われます。

というのも、以前からこのシリーズは活劇小説というよりは人情物語としての側面の方が強いという印象だったのですが、本作を読んで改めて人情話だとの思いを強くしたからです。

第一話からして、六平太の物語ではなく、まったく青物問屋「加島屋」の主人の話に尽きます。富士講に行く幸之助が必ず数日間は体調を崩すため、心配した家族が主の付き添いを頼んできたのですが、案の定、主人は一人でどこかに消え、六平太には家族には内緒にするように頼むのでした。その裏には、主人幸之助の秘密が隠されていたのです。

本書に収められている四つの話はそれぞれに独立していて、第二話は六平太の剣術がメインの話になります。ただこの話に出てくる石川對馬守家剣術指南役の唐沢信兵衛が、残りの三話に顔を見せ、六平太との勝負を挑んでくるのです。

第三話は「当世 評判女」という江戸の町の良い女番付に振り回される長屋の男どもや、この番付に載った博江の困惑、それとは別に、六平太がいつも世話になっている木場の材木商「飛騨屋」の娘登世につきまとう男の物語という人情話です。

そして第四話は、六平太の妹佐和の夫音吉が、恩赦で戻ってくる島帰りということになる、幼なじみの巳之助をめぐる人情話です。

第二話以外は、六平太がいなくても成立しそうな話であり、六平太自らが絡んでくる第二話だけが六平太の剣の冴えが見どころになっているのです。

唐沢信兵衛という男との闘いが第四話で語られますが、第四話の話とは直接には関係の話ではあるものの、そこは連作短編シリーズものの強みであり、面白いところでしょう。

ともあれ、久しぶりに読んだこの物語は、時代小説として抜きんでている、とまではいかないものの、水準以上の大白さがあると思います。

金子 成人 付添い屋・六平太 鳳凰の巻 強つく女


付添い屋六平太シリーズの第七弾です。

第一話 残り雁
六平太は、夕闇のなか三人の侍に襲われている男を行きがかり上、助けた。狙われた男は、大身の旗本、戸田左近家中の高山金之丞。高山は、女郎と心中した戸田左近の身代わりにされ、死んだことにされていた。
第二話 毒空月
大名家、旗本、大店に出入りする乗り物医師・志村了斎の付添いを請け負った六平太。了斎は溜まった薬代の片に商家の娘をを妾にしているという。そんな阿漕で意地の悪い了斎の乗り物が、子供達に襲われた。
第三話 強つく女
六平太は、小間物問屋「沢野屋」の女主、お寅の付添いを番頭の与左衛門から頼まれる。お寅の物に対する審美眼は確かなのだが、腕の落ちた職人に対して容赦がないため、ほうぼうで恨みを買っているというのだ。
第四話 長屋の怪
同じ長屋住まいの噺家・三治の顔色が良くない。訳を聞くと、神楽坂の料理屋で、偶然押し込みの密談を耳にしてしまい、以降誰かに付け狙われているという。折しも江戸では、荒っぽい押し込みが頻発していた。(「内容紹介」より)

本巻から第三部が始まりました。とは言っても、これまでと特別変わってはいません。ただ、義妹佐和が嫁ぎ、一人住まいとなった六平太が新しく近くの市兵衛店に転居したこと、それに出て行ったままの髪結いのおりきの行方も分からないままです。代わりに第一話で殺された金之丞の妻女が気になる存在として登場します。

シリーズものの常として、各巻ごとに記す事柄はあまり無いのです。本巻でも、新しいシリーズに入ったということだけが目新しく、それ以外、特に無く困ったものです。

ただ、だからと言って面白くないわけではなく、六平太の身の回りの変化に気をやりながらも、いつもの付き添い稼業に伴い語られる人情話は、それはそれで心地よい時間です。この時代小説がすごい!2016年版の第四位に選ばれているのもよくわかります。

金子 成人 付添い屋・六平太 朱雀の巻 恋娘


付添い屋六平太シリーズの第六弾です。

第一話 福の紙
六平太は上州から江戸見物にやってきた男三人組の名所案内をすることになった。そのうちの一人、和助が突然別行動をしたいと言い出す。江戸の紙漉かし屋に奉公していたころ、世話になった人に会いに行くと言うのだが…。
第二話 吾作提灯
御家人安藤庄助の次男、竹之助は十歳。深川堀川町にある私塾「錬成塾」に通っている。塾往復の護衛として雇われた六平太は、竹之助がまっすぐ家に帰らない日があることを知る。
第三話 恋娘
このところ、日本橋にある薬種問屋「九観堂」の娘、美緒から六平太に付添いの声がよくかかる。美緒が六平太の前で飲めない酒を飲んだり、付添いの際、出合茶屋の前をわざと通ったりするのに手を焼いていたのだが…。
第四話 おおつごもり
六平太の妹・佐和が浅草「ち組」の纏持ち、音吉と祝言を挙げることになった。同時に、七年続いた六平太と髪結い・おりきの仲に波風が立ち始める。
そして、六平太がかつて仕えていた信州十河藩加藤家は、存亡の危機を迎えていた。藩に粛正の嵐が吹き荒れ、六平太にも、負の刃が襲いかかる! (「内容紹介」より)

このシリーズに変化をつけようというのでしょうか。六平太の妹の佐和も嫁ぐことになり、六平太自身もわりない中であった髪結いのおりきが出ていき、かつて仕えていた十河藩も藩政改革に手をつけることになります。

本書を持って第二部が完結だそうです。といっても、第一部がいつ完結したのかも知りませんでしたが。

痛快人情時代劇である本シリーズも、他の痛快時代小説と特別に異なるというわけではありません。市井に暮らす浪人が、自らがかつて仕えていた旧藩とのかかわりを断ち切れずに未だ藩の政争に巻き込まれる、という設定もよくある設定です。

それぞれの話で人情物語が語られ、六平太が旧藩の政争に巻き込まれ、また剣戟の場面があり、そして妹や自らの恋物語があると、まさに「王道時代劇」なのです。

ですが、他のシリーズよりは面白い。やはりそれは登場人物のキャラクターによるところが大きいのでしょうし、やはり登場人物の心情を、そして彼らの日常を描く文章のうまさなど諸々の原因があるのでしょう。

それは読んでいくときの心地よさに通じるものであるし、読後の爽快感にも通じるものなのでしょう。実際、このシリーズの読後感はさわやかです。

金子 成人 付添い屋・六平太 玄武の巻 駆込み女


殆ど一年近くの間があいて付添い屋六平太シリーズの第五弾を読みました。久しぶりに読むと、あらためてこの物語の面白さを感じます。

第一話 厄介者
六平太と相惚れの仲である、音羽の廻り髪結い・おりきが何者かに襲われた。六平太は、おりきの付添いを始めるが、おりき自身から「客にからかわれるからやめてくれ」と言われてしまった。おりきの身の危険は去っていなかった。
第二話 十三夜
馴染み客である飛騨屋の親子から、六平太は老夫婦の江戸見物の付添い屋・を頼まれる。しかし、妻のおもとのほうは、少し物忘れがひどくなっているようだ。江戸見物に出かけても、おかしなところへ行こうとするのだ。
第三夜 駆込み女
六平太は、商家のお内儀を鎌倉まで送るという付添いを頼まれる。行き先は、駆け込み寺として知られる東慶寺。味噌問屋のお内儀であるお栄は、義父母、夫の仕打ちに耐えかねて、家を出たのだという。
第四話 初時雨
江戸の老舗菓子屋をあの手この手で乗っ取ってきた『甘栄堂』は、悪事を知られている六平太をなんとか取り込もうとしている。ある日、秋月家に届いた『甘栄堂』からの付け届けの菓子を、妹の佐和は無断でお裾分けに持ちだしてしまう。
(「内容紹介」より)

秋月六平太という主人公個人としては、他のシリーズの主人公とそれほどに変わるものではありません。なのになぜこのシリーズに惹かれるのでしょうか。それは個々の登場人物のキャラクターの魅力に加え、作者の舞台設定のうまさがあるのだ思います。

前作の感想を書いたとき、『軍鶏侍』のほうが物語の持つ「和」の匂いが高く、私の好みにハマると書きました。しかし、本作を読むとその感想も危ういものと感じます。物語の持つ世界に馴染んだためなのか、作者の文章作成力が上がったのかは分かりませんが、物語の持つ面白さが増しているように感じられたのです。

これまでの作風とそれほど変わっているようには思えないのに何故なのかというと、人物の心理描写がもしかするとより丁寧になっているのではないか、という気はします。以前の作品が手元にないために比べることはできませんが、シリーズの面白さがどんどん増しているようです。

特に六平太の義妹の佐和に想い人が出来てからの佐和の心情や、妹の様子を見て感じる六平太の心の動きは読んでいてほほえましいし、それぞれの話、例えば「第二話 十三夜」でのおもとという妻の話は身につまされる話でもあり、感情移入してしまいました。

また、全体を通しての十河藩が絡んだ話や、六平太の顧客の一人である材木商「飛騨屋」の話、そして「飛騨屋」絡みでの十河藩の内情が明らかにされ、それに加えて敵役的立場の『甘栄堂』の存在感など、読んでいて物語の核となる出来事、人物の描き方がそれなりの主張が見えてきているように思えます。

物語の世界観の完成度がより高くなっていると言ってよさそうなのです。つまりは感情移入しやすいということですね。続けて続編を読みたいと思います。

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR