金子 成人 付添い屋・六平太 鳳凰の巻 強つく女


付添い屋六平太シリーズの第七弾です。

第一話 残り雁
六平太は、夕闇のなか三人の侍に襲われている男を行きがかり上、助けた。狙われた男は、大身の旗本、戸田左近家中の高山金之丞。高山は、女郎と心中した戸田左近の身代わりにされ、死んだことにされていた。
第二話 毒空月
大名家、旗本、大店に出入りする乗り物医師・志村了斎の付添いを請け負った六平太。了斎は溜まった薬代の片に商家の娘をを妾にしているという。そんな阿漕で意地の悪い了斎の乗り物が、子供達に襲われた。
第三話 強つく女
六平太は、小間物問屋「沢野屋」の女主、お寅の付添いを番頭の与左衛門から頼まれる。お寅の物に対する審美眼は確かなのだが、腕の落ちた職人に対して容赦がないため、ほうぼうで恨みを買っているというのだ。
第四話 長屋の怪
同じ長屋住まいの噺家・三治の顔色が良くない。訳を聞くと、神楽坂の料理屋で、偶然押し込みの密談を耳にしてしまい、以降誰かに付け狙われているという。折しも江戸では、荒っぽい押し込みが頻発していた。(「内容紹介」より)

本巻から第三部が始まりました。とは言っても、これまでと特別変わってはいません。ただ、義妹佐和が嫁ぎ、一人住まいとなった六平太が新しく近くの市兵衛店に転居したこと、それに出て行ったままの髪結いのおりきの行方も分からないままです。代わりに第一話で殺された金之丞の妻女が気になる存在として登場します。

シリーズものの常として、各巻ごとに記す事柄はあまり無いのです。本巻でも、新しいシリーズに入ったということだけが目新しく、それ以外、特に無く困ったものです。

ただ、だからと言って面白くないわけではなく、六平太の身の回りの変化に気をやりながらも、いつもの付き添い稼業に伴い語られる人情話は、それはそれで心地よい時間です。この時代小説がすごい!2016年版の第四位に選ばれているのもよくわかります。

金子 成人 付添い屋・六平太 朱雀の巻 恋娘


付添い屋六平太シリーズの第六弾です。

第一話 福の紙
六平太は上州から江戸見物にやってきた男三人組の名所案内をすることになった。そのうちの一人、和助が突然別行動をしたいと言い出す。江戸の紙漉かし屋に奉公していたころ、世話になった人に会いに行くと言うのだが…。
第二話 吾作提灯
御家人安藤庄助の次男、竹之助は十歳。深川堀川町にある私塾「錬成塾」に通っている。塾往復の護衛として雇われた六平太は、竹之助がまっすぐ家に帰らない日があることを知る。
第三話 恋娘
このところ、日本橋にある薬種問屋「九観堂」の娘、美緒から六平太に付添いの声がよくかかる。美緒が六平太の前で飲めない酒を飲んだり、付添いの際、出合茶屋の前をわざと通ったりするのに手を焼いていたのだが…。
第四話 おおつごもり
六平太の妹・佐和が浅草「ち組」の纏持ち、音吉と祝言を挙げることになった。同時に、七年続いた六平太と髪結い・おりきの仲に波風が立ち始める。
そして、六平太がかつて仕えていた信州十河藩加藤家は、存亡の危機を迎えていた。藩に粛正の嵐が吹き荒れ、六平太にも、負の刃が襲いかかる! (「内容紹介」より)

このシリーズに変化をつけようというのでしょうか。六平太の妹の佐和も嫁ぐことになり、六平太自身もわりない中であった髪結いのおりきが出ていき、かつて仕えていた十河藩も藩政改革に手をつけることになります。

本書を持って第二部が完結だそうです。といっても、第一部がいつ完結したのかも知りませんでしたが。

痛快人情時代劇である本シリーズも、他の痛快時代小説と特別に異なるというわけではありません。市井に暮らす浪人が、自らがかつて仕えていた旧藩とのかかわりを断ち切れずに未だ藩の政争に巻き込まれる、という設定もよくある設定です。

それぞれの話で人情物語が語られ、六平太が旧藩の政争に巻き込まれ、また剣戟の場面があり、そして妹や自らの恋物語があると、まさに「王道時代劇」なのです。

ですが、他のシリーズよりは面白い。やはりそれは登場人物のキャラクターによるところが大きいのでしょうし、やはり登場人物の心情を、そして彼らの日常を描く文章のうまさなど諸々の原因があるのでしょう。

それは読んでいくときの心地よさに通じるものであるし、読後の爽快感にも通じるものなのでしょう。実際、このシリーズの読後感はさわやかです。

金子 成人 付添い屋・六平太 玄武の巻 駆込み女


殆ど一年近くの間があいて付添い屋六平太シリーズの第五弾を読みました。久しぶりに読むと、あらためてこの物語の面白さを感じます。

第一話 厄介者
六平太と相惚れの仲である、音羽の廻り髪結い・おりきが何者かに襲われた。六平太は、おりきの付添いを始めるが、おりき自身から「客にからかわれるからやめてくれ」と言われてしまった。おりきの身の危険は去っていなかった。
第二話 十三夜
馴染み客である飛騨屋の親子から、六平太は老夫婦の江戸見物の付添い屋・を頼まれる。しかし、妻のおもとのほうは、少し物忘れがひどくなっているようだ。江戸見物に出かけても、おかしなところへ行こうとするのだ。
第三夜 駆込み女
六平太は、商家のお内儀を鎌倉まで送るという付添いを頼まれる。行き先は、駆け込み寺として知られる東慶寺。味噌問屋のお内儀であるお栄は、義父母、夫の仕打ちに耐えかねて、家を出たのだという。
第四話 初時雨
江戸の老舗菓子屋をあの手この手で乗っ取ってきた『甘栄堂』は、悪事を知られている六平太をなんとか取り込もうとしている。ある日、秋月家に届いた『甘栄堂』からの付け届けの菓子を、妹の佐和は無断でお裾分けに持ちだしてしまう。
(「内容紹介」より)

秋月六平太という主人公個人としては、他のシリーズの主人公とそれほどに変わるものではありません。なのになぜこのシリーズに惹かれるのでしょうか。それは個々の登場人物のキャラクターの魅力に加え、作者の舞台設定のうまさがあるのだ思います。

前作の感想を書いたとき、『軍鶏侍』のほうが物語の持つ「和」の匂いが高く、私の好みにハマると書きました。しかし、本作を読むとその感想も危ういものと感じます。物語の持つ世界に馴染んだためなのか、作者の文章作成力が上がったのかは分かりませんが、物語の持つ面白さが増しているように感じられたのです。

これまでの作風とそれほど変わっているようには思えないのに何故なのかというと、人物の心理描写がもしかするとより丁寧になっているのではないか、という気はします。以前の作品が手元にないために比べることはできませんが、シリーズの面白さがどんどん増しているようです。

特に六平太の義妹の佐和に想い人が出来てからの佐和の心情や、妹の様子を見て感じる六平太の心の動きは読んでいてほほえましいし、それぞれの話、例えば「第二話 十三夜」でのおもとという妻の話は身につまされる話でもあり、感情移入してしまいました。

また、全体を通しての十河藩が絡んだ話や、六平太の顧客の一人である材木商「飛騨屋」の話、そして「飛騨屋」絡みでの十河藩の内情が明らかにされ、それに加えて敵役的立場の『甘栄堂』の存在感など、読んでいて物語の核となる出来事、人物の描き方がそれなりの主張が見えてきているように思えます。

物語の世界観の完成度がより高くなっていると言ってよさそうなのです。つまりは感情移入しやすいということですね。続けて続編を読みたいと思います。

金子 成人 付添い屋・六平太 鷺の巻 箱入り娘


付添い屋・六平太シリーズの四巻目です。これまで同様に四つの短編からなっています。

「箱入り娘」 六平太は不意の付添いが縁で、播磨石郷藩米倉家のお抱え屋敷に出入りするようになる。屋敷の主・お佐江の方の娘、結衣の輿入れが決まった。西国へ嫁ぐ前に、六平太は結衣を江戸見物に連れ出す。

「島抜け」 ひと月前、伊豆大島で三人の島抜けがあり、一人の消息がつかめない。男は兇盗・黒弥陀の一味だったくちなわの惣兵衛。黒弥陀は六年前、内部の裏切りにより全員が捕らえられた。一味を売った丑松は、半次と名を変え、六平太も通う元鳥越の髪結い「きのし床」を営んでいた。

「神隠し」 秋月六平太は、困っていた。神田「紙半」の娘・お夏の行き先は、なにがなんでも野巫(町場の陰陽師)の御託宣に従うからだ。大川の川開きの当日、お夏は夕刻から花火見物でごった返す両国に出かけると言い出した。案の定、六平太は大川の橋の袂でお夏を見失う。

「藪入り」 夏の藪入りの十六日、六平太は竹木炭薪問屋「田丸屋」の丁稚奉公・幸助と深川にやってきた。幸助は一年前の夏に父を亡くした。その年の藪入りに実家のある下谷の裏店に行くと、母の姿はなく知らない家族が住んでいたという。幸助の母・おれんは、深川で男に売られていた。

(Amazon 内容紹介より)

本作からは「あとがき」が無くなってしまいました。何故でしょう。シリーズものの宿命として書くべき事柄も無くなるのでしょうか。

直前の巻(第三巻)の折に、一時間ドラマのようだ、と書きました。その理由らしきものとしては、話の展開のしかたとそれぞれの話の決着の付け方とがうまいと感じるのです。段取り良く進みその話を終えるのですね。そしてそれはどことなく現代的なのです。痛快時代小説としての面白さは十分に備えているのですが、例えば剣を銃に起き変えて西部劇としても通用しそうです。

以上のことは、この頃新たに知った作家野口卓の『軍鶏侍』シリーズを同時に読んでいて思ったことでもあります。『付添い屋』シリーズに比べ『軍鶏侍』シリーズのほうが人物の内面描写が格段に多いのです。

舞台の背景、つまりは情景描写にしても同様で、物語のもつ情景の広がりが『軍鶏侍』のほうが、より私の好みにはまりました。物語の持つ「和」の匂いが高いのです。人によっては情緒的に過ぎると感じるかもしれません。そうした方は、本『付添い屋』シリーズのほうが好みに合致するのではないでしょうか。

金子 成人 付添い屋・六平太 鷹の巻 安囲いの女


付添い屋・六平太シリーズの三巻目です。例によって、やはり全部で四つの短編からなっています。

「敵討ち」 神田の口入れ屋「もみじ庵」から1日2両という破格の付添い仕事が舞い込む。依頼人は、塚原七兵衛という老年の侍。塚原は二年前、息子の敵を討つために信州から江戸へやってきた。六平太は敵討ちの付添いを頼まれる。

「用心箱」 口入れ屋「もみじ庵」の斡旋した女が、奉公先の武家屋敷から金を盗んだという。逃げた女を見つければ、人宿組合から三両の礼金が入ると言われ、六平太は探索を引き受ける。犯人とされる女は、片方の眉がないという。

「安囲いの女」 谷中に住む、おようという香聞きの師匠が付き添いを求めているという。おようは、月に三度か四度、麻布谷町へ行き、二日ばかり滞在して谷中に戻る。実は、谷中で煙草屋の隠居の妾をやりながら、麻布では三人の男からそれぞれ月に一両二分の手当てで囲われていた。

「縁切り榎」 六平太は、材木商の飛騨屋の娘・お登世と、その友人であるおしのの灌仏会見物に付き添った。おしのは諸国産物を商う大店、日本橋「久野屋」の娘で、大名家の江戸屋敷に奥女中として奉公している。最近、お殿様の目にとまってしまい、このままでは寝所に行かされてしまうというのだ。
(以上Amazon 内容紹介より)

このところ、この金子成人という作家の付添い屋・六平太シリーズを立て続けに読んでいます。それだけ面白いからではあるのですが、続けて読んだためか、若干、違和感を感じてきました。物語として面白くないということではなくて、それぞれの話のまとまりが実にテレビドラマのようなのです。

つまりは、1時間で完結するということです。各章の話がきちんと完結し、それで終わりです。勿論、シリーズ全体を通しての十河藩との確執などのシリーズを通したドラマは残っていますし、サイドストーリー的に挿入されている小さなドラマもそのまま残っています。でも、各章の話の落ち着き方が一時間もののドラマに感じてきたのです。

理由はよく分かりません。他の脚本家出身の作家の作品も多く読んでいるのですが、そのように感じたことはありませんでした。金子成人という作家だけでの話です。

でも、物語として面白いのは間違いないのですから、続きも読みたいと思っています。

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このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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