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深緑 野分 戦場のコックたち


1944年の初夏、19歳のティムこと管理部付きの五等特技兵ティモシー・コールはフランスのノルマンディー地方にあるコタンタン半島にパラシュート降下を果たした。兵隊の給食を担当するコックの顔も持つティムは、第二次世界大戦の欧州戦線で、コック兵仲間とともに、料理と戦闘に明け暮れる毎日に飛びこむことになった。

全五章からなるこの物語は、章ごとに何らかの謎が生じ、主人公であるティムと探偵役であるエドらを含めた特技兵仲間が謎を解いていきます。行方不明になった大量の粉末卵の箱や、不要になったパラシュートを集めている兵士の目的、幽霊兵士の出現などの日常の中の謎を解き明かしていくのです。

しかし、謎解きがメインの推理小説というわけでもなさそうです。作者は、衛生兵に光を当てた映画『プライベート・ライアン』などを見て後方支援に関心を持ったとありました。縁の下の力持ちでありながら、自らも命掛けで銃を持つ後方支援という立場に目を向けたいという思いがあったようです。

とはいえ舞台は戦争です。描くのは難しかったと思われます。作者は「戦地に赴いた兵士たちが残したたくさんの記録や証言、使っていた教範。触れられるものには何でも触れて、会える人には会って、そこから想像しました。」とあるように、巻末にも示されている膨大な資料を読み、想像を膨らませたのです。

そうして出来上がった本書の臨場感は見事です。しかし、見事ではあるのですが、読んでいて何か物足りません。更に二段組みで350頁にもなろうかというこの本はかなりの長さがあります。にもかかわらず、物語の流れは平板です。各章での謎解きも決して興を起こさせると言うほどのものでもありません。何度か途中でやめようかと思ったほどです。

一番は日本人作家が何故にアメリカ兵の物語を書いているのか、という疑問が読んでいるあいだずっと頭の中にあったことでしょう。しかし、物語の中にはアメリカ兵を描く必然性を見つけることはできませんでした。このことは、直木賞選考委員の中にも同じ意見を書かれている方がおられるので、私個人の独善的な見方でもないと思われます。

でも、日本人がアメリカ兵の物語を書いている、という点に目をつぶり、物語の平板さが気になりつつも読み終えると、最終的には全体的な構成としては上手くまとめてあった、という印象になっていました。細かな謎解きに対する不満も、最後に残された大きな物語の流れの中にそれなりの落ち着き先があったのです。

では、読後感として面白い小説だったと言えるかと問われれば、諸手を挙げての賛成というわけにはいかないようです。

ちなみに、本書は2016年の「このミステリーがすごい!」、「ミステリが読みたい!」の国内編で共に第2位を取り、週刊文春の2015年ミステリーベスト10で第3位になっています。加えて、第154回直木賞、第18回大藪春彦賞、2016年本屋大賞の各候補作にもなっています。こうみると、本作品が力作であることに間違いはなく、そして作者の力量の可能性は高く評価されているのでしょう。

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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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