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深緑 野分 ベルリンは晴れているか





第二次世界大戦後の連合軍の統治下にあるベルリンを舞台にした長編のミステリー小説で、第160回直木賞の候補になった作品です。

あらすじ
1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下におかれたベルリン。
ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、
ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。
米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。
しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり――
ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。


上記「あらすじ」は、筑摩書房の公式ページに記載されていたあらすじです。

本書で描かれる戦後ベルリンのでの一般市民の姿やユダヤ人の姿は決して明るくはありません。

また、現在の物語の進行の間に挟まれる、「幕間」として記述されているアウグステの幼いころからの物語で描かれるナチス、またドイツ一般市民、それに特にナチスに迫害されるユダヤ人の姿は悲惨です。


これまでいろいろな場面で見聞きしてきたナチスによるユダヤ人迫害の歴史をまた見せつけられるのはかなり気の重いことでした。また、戦中、戦後のベルリン市民の生活苦にしても同様です。

日本がそうであった時代と変わらないのでは、との印象を持ちながらの読書でした。

ただ、直木賞候補作となった作品であり、前作の出来が良かった、という事実だけで読み進めました。

確かに、読後の印象はそうは悪くありません。しかしながら、本書に描かれている状況の重さは、やはり、この傾向の作品はもう読まないでもいい、と感じたのも事実です。



ミステリーとしての本書にしても、明かされた謎は決して納得できるものではありませんでしたし、途中で感じた疑問点は最後まで残りました。

明かされる謎は確かに意外ではありますが疑問が残るものでもありました。

また、ドブリギン大尉は、当初からアウグステを目的地付近まで車で送ってやれば時間的にも無駄がないのに、ということもあります。



物語の合間に挿入される「幕間」と、その構成の持つ意味、何よりも四か国による統治下のベルリンという土地の描写力など、本書の持つ魅力は大きなものがあります。

ただ、物語の持つ「重さ」は決して簡単なものではありません。

そして、第154回直木三十五賞候補になった『戦場のコックたち』でも感じたことですが、「どの時代のどんな人物を題材にしようが、文学は自由」ではあるものの、なぜ舞台がベルリンである必要があるのか、ずっと疑問が付きまといました。
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深緑 野分 戦場のコックたち


1944年の初夏、19歳のティムこと管理部付きの五等特技兵ティモシー・コールはフランスのノルマンディー地方にあるコタンタン半島にパラシュート降下を果たした。兵隊の給食を担当するコックの顔も持つティムは、第二次世界大戦の欧州戦線で、コック兵仲間とともに、料理と戦闘に明け暮れる毎日に飛びこむことになった。

全五章からなるこの物語は、章ごとに何らかの謎が生じ、主人公であるティムと探偵役であるエドらを含めた特技兵仲間が謎を解いていきます。行方不明になった大量の粉末卵の箱や、不要になったパラシュートを集めている兵士の目的、幽霊兵士の出現などの日常の中の謎を解き明かしていくのです。

しかし、謎解きがメインの推理小説というわけでもなさそうです。作者は、衛生兵に光を当てた映画『プライベート・ライアン』などを見て後方支援に関心を持ったとありました。縁の下の力持ちでありながら、自らも命掛けで銃を持つ後方支援という立場に目を向けたいという思いがあったようです。

とはいえ舞台は戦争です。描くのは難しかったと思われます。作者は「戦地に赴いた兵士たちが残したたくさんの記録や証言、使っていた教範。触れられるものには何でも触れて、会える人には会って、そこから想像しました。」とあるように、巻末にも示されている膨大な資料を読み、想像を膨らませたのです。

そうして出来上がった本書の臨場感は見事です。しかし、見事ではあるのですが、読んでいて何か物足りません。更に二段組みで350頁にもなろうかというこの本はかなりの長さがあります。にもかかわらず、物語の流れは平板です。各章での謎解きも決して興を起こさせると言うほどのものでもありません。何度か途中でやめようかと思ったほどです。

一番は日本人作家が何故にアメリカ兵の物語を書いているのか、という疑問が読んでいるあいだずっと頭の中にあったことでしょう。しかし、物語の中にはアメリカ兵を描く必然性を見つけることはできませんでした。このことは、直木賞選考委員の中にも同じ意見を書かれている方がおられるので、私個人の独善的な見方でもないと思われます。

でも、日本人がアメリカ兵の物語を書いている、という点に目をつぶり、物語の平板さが気になりつつも読み終えると、最終的には全体的な構成としては上手くまとめてあった、という印象になっていました。細かな謎解きに対する不満も、最後に残された大きな物語の流れの中にそれなりの落ち着き先があったのです。

では、読後感として面白い小説だったと言えるかと問われれば、諸手を挙げての賛成というわけにはいかないようです。

ちなみに、本書は2016年の「このミステリーがすごい!」、「ミステリが読みたい!」の国内編で共に第2位を取り、週刊文春の2015年ミステリーベスト10で第3位になっています。加えて、第154回直木賞、第18回大藪春彦賞、2016年本屋大賞の各候補作にもなっています。こうみると、本作品が力作であることに間違いはなく、そして作者の力量の可能性は高く評価されているのでしょう。

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Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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