ギレルモ・デル・トロ 沈黙のエクリプス(上・下)



昔読んだモダンホラーの一連の作品を思い出させる、吸血鬼ものとゾンビものを合わせたような作品。

疾病対策センターのイーフリアムは、離婚協議の途中、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に着陸した航空機が全く応答がないという連絡を受けた。駆けつけるとアウトブレイクが予想される中、四名以外の全員の死亡が確認される。その四名の生存者に共通する事柄を探るなか、彼らは空港の外へと出ていってしまう。一方、死体安置所でも異変が起き、死者が行方不明となってしまう。

いわゆるノンストップホラーと呼ばれる分野の作品だと思われますが、何よりもこの本の作者のひとりが映画監督のギレルモ・デル・トロだということが一番の特色でしょう。『パンズ・ラビリンス』や『パシフィック・リム』、そして、近年の『ホビット』三部作の監督として有名です。また、共著のチャック・ホーガンという作者は私は知りませんでしたが、映画化もされた『強盗こそ、われらが宿命(さだめ)』という作品でハメット賞を受賞したアメリカの気鋭のサスペンス作家です。

もともとギレルモ・デル・トロの企画をもとにテレビドラマ化され、同時に文章化もされた作品らしく、既に海外ドラマ『ストレイン 沈黙のエクリプス』として放映され、DVD化もされています。

内容は先にも書いたようにモダンホラーそのものです。ゴシックホラーとしてのブラム・ストーカーの『ドラキュラ』の世界が、より現代的に装いを変えて登場したというところでしょうか。乗客全員の死亡、そしてゾンビとしての復活、ヨーロッパから秘密裏に運ばれてきた棺桶、その中にいた吸血鬼のマスター。そのマスターに対抗する存在としてのルーマニア生まれの老質店主セトラキアンと、舞台設定はそのまま吸血鬼ものです。

難点は、話が冗長なのです。文庫版で上下合わせて750頁以上。私はソフトカバー版を読んだのですが、それでも574頁もあります。そしてそのソフトカバー版の中ほどまでは個々の生存者の変貌や、復活した死者たちの様子が執拗に描写されるのです。半ば過ぎにやっと正義の味方たちの結集が始まり、後半四分の一くらいからやっと反撃が始まります。

本書は三部作ということなので、全体からすればちょうどいい分量、ということなのでしょうか。それにしても、書かれていいる内容からすると、もう少し短くすることはそれほど難しいことではないと思うのですが。このような作品を読むと、アメリカの原稿料が文字数で決まると聞いた気もするけれど、だからなのではと勘繰りたくなります。

設定は個人的にも好きな分野だし、DVD版もサンプル版を見た限りではテンポよく進んでいるようですが、本書はもったいないという印象が先に立ってしまいました。この手の物語が冗長と言えば、まずはスティーブン・キングが思う浮かぶと思われます。しかし、キングの話はそれなりに読者を惹きつけていて、その冗長性も物語の世界を構築するのに役だっていると思うのです。

そうした点に目をつぶれば好きな分野でもあり、それなりに面白く読みました。

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