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ベロニカ・ロス ダイバージェント



物語の背景となる世界の状況設定こそ命であり、そこがうまくいけば物語の半分は終わったも同じ、と言えそうな、SF仕立ての痛快アクション小説でした。

「性格」により“無欲”“高潔”“博学”“平和”“勇敢”の五派閥に分けられた世界。“無欲”に生まれ、16歳になったベアトリスの適性テストの診断は異端者(ダイバージェント)だったが、そのことを隠したベアトリスの選択儀式での選択は“勇敢”だった。しかし、“勇敢”の派閥では正式に派閥に所属するためには選抜試験を受けなければならない。ベアトリスことトリスはインストラクターのフォーと共に試験に立ち向かうが、その裏には秘められた陰謀があった。

設定は全く違うのだけれど、どこかで読んだような気がする作品です。それは、例えば先日読んだジェイムズ・ダシュナーの『メイズ・ランナー』がそうですし、また映画しか見てはいないのだけれどスーザン・コリンズの『ハンガーゲーム』も同じ匂いがします。

というのも、これらの作品はアメリカでは「ヤングアダルト」というくくりで語られている作品だそうで、日本で言う「ジュブナイル」もしくは「ライトノベル」と呼ばれている分野に相当するそうです。

本書で語られる世界では、戦争の元凶は「人格の欠陥」であると考え、邪悪な性質の排除のために複数の派閥に分類されるようになっています。そして、五つの派閥しか存在意義を認められてはおらず、この五つの派閥に当てはまらないと判断された個人は無派閥になり、社会の最下層で暮らすことになります。

そもそも人間をこの五つに分類できるものかという普通に抱くであろう疑問は、というか、その疑問がこの物語の出発点かもしれませんが、少なくとも三部作の第一部である本書では答えは出てきません。そして他にも、個人の属性を判断する「適性テスト」なるものの妥当性はどうなっているかという点や、利他主義である“無欲”こそが清廉潔白であるから意思決定者としてふさわしいという設定に対しては、“高潔”は清廉潔白ではないのか、など、数多くの疑問もわいてきます。

まあこうした疑問も、そうしたことを前提とした架空の物語の設定だということで一応受け入れて読み進めることになります。ここらがヤングアダルトとして、深みのない小説の代名詞のように分類される原因なのかもしれません。本来はヤングアダルトであろうとジュブナイル若しくはライトノベルであろうと、「小説」の出来には関係のない分類である筈で、個々の作品ごとに判断されるべきとは思うのですが。

ともあれ、主人公は“無欲”を選ばず“勇敢”を希望し、そこでさまざまの試練が与えられ、その様がアクション小説のような展開になっていきます。そのうえで、選抜試験の背後に隠された秘密に肉薄していく様子が軽くミステリータッチで描かれます。

重厚な物語を期待せずに、軽く読めるアクション小説として手に取ればそれなりに面白い物語ではありました。

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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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