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乙一 平面いぬ。


次第に余震も間遠になっています。たまにあってもここらで震度1か、強くて震度2です。でもたまにある余震の震源に近い阿蘇や御船の避難所の方々は変わらずにつらい毎日を送られているようです。

明日は前震のあった四月十四日からちょうど一月目にあたります。はやいと言っていいものか分かりませんが、それでもまだ震度5程度の余震に気をつけるようにとの発表は気持ちのいいものではありません。

さて、本書はホラーと言い切るには少しのためらいがある作品でした。強いて言えば、ダークファンタジーとでも言うのでしょうか。四つの物語が収められた短編集です。

「石ノ目」 その目を見ると石になってしまう、石の目と呼ばれる存在をめぐる物語。ギリシャ神話のメドューサの物語のような設定でいて民話的雰囲気を漂わせるお話です。

「はじめ」 実在はしていないのだけれど、小学四年生の自分と親友の木園の二人にだけは実在する「はじめ」という名の女の子。二人にだけの実在である「はじめ」という少女をめぐる、せつなさに満ちた物語です。実在しない筈の存在と二人は共に遊び、幼き日々を過ごすのです。郷愁すらも感じさせるファンタジーとして仕上がっています。

「BLUE」 人の知らないところでは動き出す人形たち。雨宿りのつもりで入った骨董屋で購われた布切れで作られたのは、王子様、王女様、騎士、白馬、そして青い残り布をメインに作られたブルーという五体のぬいぐるみだった。とあるお客に買われていった先にはウェンディという女の子と、テッドという男の子の姉弟がおり、ブルーは乱暴者の弟テッドに渡され、さまざまな試練に会うのだった。

ブルーの行く末についての設定自体はありがちなものかもしれませんが、物語作家としてのこの作者の手腕で一片の寓話として仕上がっています。このお話も、せつなさがあふれる物語です。

「平面いぬ。」 上腕に入れた青い犬のタトゥー。その犬が鳴き声を挙げ、体の表面上をあちこちと逃げ回ります。話はそれなりに面白いのですが、個人的には作者の意図がよく分かりませんでした。

本書は非常に評判が良い短編集です。しかし、少なくとも本書に関しては、私の好みには合いませんでした。独特な世界観を持っていて、寓話的に人間の心の奥底に潜む何かを引っ張り出すような力強さを持ちながら、人の心を優しく包み込む魅力的な文体で、評判が高いのもよく分かる物語集ではあります。

しかし、そこに提示される登場人物の心理はかなりひねったものであり、文章の裏に思いを馳せなければいけないと感じられ、私のようにある程度のエンタメ性を求める人物にはむかないように思いました。

この作者に対しては「せつなさ」という単語が指標として言われているようです。確かに本書においても心をギュッとつかまれるような若干のやるせなさや哀しみを感じさせられます。その感覚に浸りたい人にはもってこいの作品ではないでしょうか。

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Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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