竹内 明 背乗り ハイノリ ソトニ 警視庁公安部外事二課


警視庁公安部外事二課を舞台にした珍しい、長編推理小説です。

中国の謀報機関・国家安全部の辣腕工作員と、警察に紛れ込んだ「潜入者」の罠にかかり、公安部を追われた元スパイハンター・筒見慶太郎。だが、左遷先のニューヨークで発生した外務大臣毒殺未遂事件を機に、8年の月日を経て再び彼らと対決の時が―。極秘の存在とされる公安部ウラ作業班の元精鋭たちが再び立ち上がる。これが国際謀報戦の現実だ!(「BOOK」データベースより)

とにかく、物語のリアリティが凄い。著者はTBSの報道記者として第一線で活躍していたジャーナリストらしいのですが、その情報量は膨大で現場を知り尽くしていることを思わせます。

主人公は元公安部外事二課のエースだった人物で、八年前にとある事件により現場から退き、現在はニューヨーク日本国総領事館の警備対策官として働いています。でも、本書では筒見慶太郎という人物の説明が全くなされないままに話は進み、物語が進む中で少しずつ人物背景などの説明が為されていくのです。

そのことは、筒見と共に働いていたチームのメンバーについても同様です。突然現場の巡査の動向が描写されていくかと思うと、それがそのままこの物語の本筋であり、後に彼が筒見の以前の仲間であり、また筒見と共に働くことになったりする人物であるなど、思わぬ展開を見せます。

このような物語の叙述の方法をもう少し明確にして欲しいとは思いました。若干、主人公ら登場人物の人となりが分かりにくいのです。本書のような登場人物がかなりな人数に上り、時系列も入り組んでいる話ではなおさらです。

本書の冒頭に<登場人物紹介>という一覧を設けてあり、約四十人ほどの紹介が為されています。このサービスは有難い、と感じるほどに物語は複雑で、登場人物も過去と現在とで錯綜しています。

分かりにくいという点でもう少し。各章の冒頭に過去の話が挿話のようにに語られています。最初のうちはこの話がよく意味が分からずに混乱しました。良く見ると章の中の各項の見出しには■印と共に時間と場所も示してあるのですが、各章の最初の挿話の部分には何も表示してなかったのです。こうした工夫に気づかない読み手にも問題がありますが、もうすこし分かりやすくしてほしかったとは思いました。

本書タイトルにもある「背乗り」とは、諜報員や犯罪組織の構成員が、行方不明者などの戸籍を乗っ取って、その人になりすますこと(出典 : ダ・ヴィンチニュース)だそうです。勿論この物語の重要な要因であるからこそタイトルにしてあります。

在外公館での警備の在り方や警視庁という組織、中でも公安部の働きなどについてのトリビアを紹介しながら、最初に書いたように公安の仕事がリアリティを持って描かれていきます。ただ、後半になるとフィクションとしての側面が急に表に出てきた感があり、若干の違和感を感じました。それまでのリアリティとの落差があり過ぎるのです。

とはいえ、以上述べてきた不満点もこの物語の面白さがあってこその話です。小説としては趣きの変わった小説としての面白さがあります。この本に続いて続編も書かれているようなので、今後は現場を知る作家の描く小説としてリアリティを維持しながら、どれだけフィクションの部分での面白さを維持できるかを確かめながら、是非読んでみたいものです。

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本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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