二上 剛 黒薔薇


新人作家の作品とは思えない、第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト受賞作である長編警察小説です。

大阪府警の新米刑事・神木恭子は、担当した殺人事件を、別件で関わった老人の供述から解決へと導く。しかし時を同じくして、老人の自宅の床下から嬰児を含む死体七体が発見された。二つの事件の背後には、府警上層部が内に宿す闇が広がっていた―。体面重視の違法捜査、キャリアとノンキャリアの暗闘―知られざる警察の真実に、淀んだ街に狂い咲いた情愛が絡まりつく。現場を知り尽くした元本職の刑事だから書きえた、究極の警察小説!第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト受賞作。 (「BOOK」データベースより)

とても、この作品が新人の作家の手によるものとは思えないほどの出来栄えの作品でした。それも、作者が元大阪府警の暴力犯担当の刑事だったというその経歴には驚かされました。

主人公は長田署・刑事課強行犯係の神木恭子という新米刑事です。何故か上司の強行犯係の矢野係長に気に入られ、刑事課へと引っ張られ、神木に向かって「人手は足りんが、化粧くさい奴はいらんのや」と言い切る、無愛想な折原刑事と組まされています。

全体的にとても暗い物語です。そして、欠点と言っていいものか、物語が平板です。登場人物にしても、神木の相棒である先輩刑事の折原圭作という女性蔑視を隠そうともしない男、などのよくありそうな設定の人物として登場するのですが、いつの間にか、神木の庇護者的な立場になっているかと思うと、終盤は全くその存在感が無くなってきます。

代わりに、神木恭子というキャラクターがどんどん変化していくのですから、それはそれで作者の意図なのかもしれませんが、そうであるのならば折原という刑事の描き方をもう少し明確にして欲しい気はしました。

結局ネタバレになるのであまり書けませんが、この物語は警察小説ではあっても、、特定の人物間での人間模様を濃密に描いた作品となっています。その特定の人物のキャラクターが強烈ですが、途中で尻切れになります。個人として強靭かと思えば、他の人物に頼りきりになり、頼られた人物も途中で腰砕けになり、どうも中途半端です。

この物語がリアリティーを持っているかと言えば、物語の全体的な構造としてはあまり無いとしか言えないと思います。しかしながら、個別の場面の描写などはさすがに現場にいた人の文章で、臨場感があるのです。

以上のように、小説として完成度が高い作品とは決して言えないにもかかわらず、物語としての面白さは持っている作品ですから。この作者が経験を積み、更によく練り上げられた作品を書かれるようになったときは凄いものを書かれるのではないでしょうか。

まだ本書以外には一冊しか書かれてはおられないようですが、しばらく追いかけてみようかと思っています。

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本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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