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垣根 涼介 信長の原理






本作品は第160回直木三十五賞の候補作となった長編の歴史時代小説です。


  第一章 骨肉 / 第二章 増殖 / 第三章 制圧 / 第四章 均衡 / 第五章 亀裂 / 第六章 崩落


本書で描かれている信長像自体は、これまで種々書かれてきた信長像とそんなに異なるところはないと思われます。

吉法師と呼ばれていたころから若様らしくない「うつけ者」として陰口をたたかれるほどに暴れまわっていたこととか、長じて武将として天下にその名を知られるようになっても強烈な個性を持った癇性な殿様であったことなど、これまでと変わりません。



ただ、本書での信長の行動の基本には幼いころに蟻の行列から感じ取ったある原理がありました。

後に藤吉郎らに命じて確認することにもなりますが、懸命に働く蟻は二割しかいないという原理です。残りの蟻は六割が漫然と働き、最後の二割は怠けるだけなのです。

それは、現在「パレートの法則」やその亜流としての「働きアリの法則」と呼ばれているものであり、もともとは経済の分野においての経験則だそうです。



信長は、この原理に基づいて、より効率的な軍勢運営をなそうと苦労します。

ただ、この原理には藤吉郎も気づいていたらしく、のちに光秀にもつい漏らしてしまいます。その先にあるのは、私たちが知っている歴史的な現実です。



本書の一番の特徴としては上記の「原理」を中心に据えていることにあるにしても、さらに指摘すべきことは、登場人物らの内心の描写に多くのページ数を費やしていることが挙げられます。

信長はもちろん、藤吉郎や柴田勝家、さらには明智光秀といった武将たちの心の動きを、彼らの視点で丁寧に解析し、読者に示してあるのです。


また、信長が松永弾正久秀について、悪党なりの首尾一貫した行動哲学があるとして評価し、松永弾正の心情についてもかなりの紙数を費やして描いてあったことは、個人的に好ましく思ったところでした。



確かに、本書の六百頁弱という分量は少なくはなく、詳細な心理描写は少々辟易としましたが、それでも各武将たちの心象描写はそれなりに面白く、直木賞候補となるのも首肯できる作品でした。

とにかく、歴史小説として、独自の観点からの分析がなされていて面白く読んだ作品です。
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垣根 涼介 室町無頼


本書は才蔵という棒使いの少年を間に挟み、骨皮道賢と蓮田兵衛という二人の無頼の、室町時代の末期という時代背景のもと、京の町を舞台にした痛快時代小説で、2016年下半期の直木賞の候補となった作品です。

ならず者の頭目・骨皮道賢は幕府に食い込み、洛中の治安維持を任されていたが、密かに土倉を襲撃する。浮浪の首魁・蓮田兵衛は、土倉で生き残った小僧に兵法者への道を歩ませ、各地で民百姓を糾合した。肝胆相照らし、似通った野望を抱くふたり。その名を歴史に刻む企てが、奔り出していた。動乱の都を駆ける三人の男と京洛一の女。超絶クールな熱き肖像。(「BOOK」データベースより)

ソフトカバー本で530頁という決して短くはない物語ですが、その面白さに一気に読んでしまいました。登場人物それぞれのキャラクターが立っていて、文章のテンポもよく、非常に読みやすいのです。

読後に本書について調べてみると、かなりの部分が史実でした。本書のクライマックスになる一揆も「寛正の土一揆」として記録に残っており、なによりも骨皮道賢と蓮田兵衛という本書の中心となる人物二人が実在の人物だったのには驚きました。その点では、乱暴者の代表のように描かれている馬切衛門太郎という登場人物さえも実在の人物だというではありませんか。

本書のクライマックスで重要な位置を占める相国寺大塔なども、その具体的なありようを丁寧に調べ書かれている( 室町小説の誕生 早島大祐 : 参照)とのことです。そうした調査の上にある本書だからこその迫力なのだろうと納得させられたものです。

本書で重要な位置を占める登場人物の一人に、骨皮道賢と蓮田兵衛との両方に可愛がられる才蔵という少年がいます。この少年が、幼いころからボテ振りをしていたため棒術の基礎が自然にできていたというところから、一人の老人に預けられます。そこで過酷な修業を終え棒術の達人として京にもどり、蓮田兵衛の右腕ともなるのですが、前半は彼の成長する姿こそが物語の焦点になっています。

見方によっては、本書前半はこの少年が主人公と取れなくもなく、後半は道賢と兵衛との物語色が強くなってくるので、焦点がぼけているとも言えそうです。しかしながら、作者の筆の力はそうしたことをもねじ伏せ、痛快小説として成立させています。

そしてもう一人、無頼二人の間にいるもう一人の重要人物として芳王子という遊女がいます。まあ、物語に色を添える役割ではあるのですが、この女性の言葉が重い。暗いという意味ではなく、文字どおりに重みのある台詞を発する女性であり、単に物語に色を添える以上の存在感を示しています。

こうした強烈なキャラクタがそれぞれに際立っていて、史実を背景に室町時代という、めったにない時代設定の物語としてできあがっているのですが、劇画調の物語は痛快小説として見事に仕上がっていて、直木賞の候補作となるのも納得でした。

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このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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