高杉 良 勇気凛々


自転車の開発・輸入・販売を業務とする実在の株式会社ホダカの創業者武田光司の苦労を描く、実名小説です。

放送局に入社した武田光司は、型破りの伝説的な営業マンとして実績を上げた。だが、サラリーマン生活にあきたらず、友人の勧めで独立を果たし、自転車の輸入販売を始める。当初は失敗が続いて苦悩するが、持ち前の明るさと根性で踏ん張り、たび重なる困難を乗り越えていく。やがて販路として開拓したイトーヨーカ堂の信用を得て、その成長と共に事業を拡大、ベンチャー企業を見事に育て上げる。夢の実現に全力で立ち向かう男のロマンと、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊会長をはじめ、人との得難い出会いを描いた力作長編。 (「BOOK」データベースより)

私はこの作者の作品は初めて読むのですが、一言で言うと経済小説としてあまり面白い作品とは思えませんでした。作者の高杉良と言えば、映画化もされた『金融腐蝕列島シリーズ 』を始め、現実の社会を経済の側面から骨太に描き出す作家というイメージでしたが、本書を読む限りでは期待外れとしか言いようがありません。

本書は実在の会社ホダカの創業者の起業時からの姿を描く小説ですが、どうも人間が見えません。主人公である武田光司という人物の紹介こそそれなりにあるものの、それ以外の登場人物は表面的な紹介に終わっている印象しかありません。

読み終えてから印象に残っている人物は嫁さんである山本香榮子という人しかいないのです。その山本香榮子氏でさえ、縁の下の力持ちという通り一遍の印象で終わっています。銀座のクラブを経営していたという経歴しか頭にありません。もう少し、描き方もあったと覆われるのですが、そうした印象はそのほかの登場人物にしても似たようなものです。

勿論、主人公とそれぞれの人物との関わりやエピソードを描いてはあるのですが、起こった事柄の羅列に過ぎないのです。それまで勤めていた文華放送をやめ、サンポール物産に移り、その後自転車業界で起業してからの今に至るまでの数々のエピソードが同列に描いてあるために、物語の起伏があまり感じられないのだと思われます。

もしかしたら、この物語の舞台となる自転車業界や、少なくとも企業人として生きてきた人たちにとっては読みとるべき事柄も多くあり、小説として面白い側面もそれなりにあるのかもしれません。しかし、私のように企業というものを知らない人間にとってはドラマを感じることのできない物語は感情移入できないのです。

本書の主人公である武田光司という人物は、多分企業人として魅力に溢れた人なのでしょう。だからこそ作者も小説の題材として選んだものと思われます。

しかしながら、繰り返しますが、小説として読む限りにおいてはエピソードの羅列しかないのでは魅力に欠けます。でも、この作者の他の作品が人気を誇っているところを見ると、こうした印象を持たれる作品は本書に限ってのものではないか、という期待はあります。

もう少し、他の作品を読んでみましょう。

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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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