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森見 登美彦 夜行


第156回直木賞候補作であり、2017年本屋大賞ノミネート作品です。ホラーと言い切るには何となく抵抗があるような微妙なニュアンスの作品で、章ごとに語り手の異なる別な話が収められた、連作短編小説集とも言えそうな物語でした。

「第一夜 尾道」」 語り手 中井
中井は家を出ていった妻を迎えに尾道まで出かるが、妻が世話になっているという一軒家に妻はおらず、妻そっくりの女性がいるだった。仕方なくホテルに帰ると妻似の女性から電話があり、助けて欲しいというのだった。
「第二夜 奥飛騨」 語り手 武田
武田の勤め先の先輩の増田とその彼女の川上美弥、それに彼女の妹の瑠璃の四名で飛騨旅行へと行くことになった。ところが、飛騨へ行く途中でミシマという女性を拾うのだが、ミシマは「二人にシソウが出ている」というのだ。
「第三夜 津軽」 語り手 藤村
銀座の画廊で働いている藤村は、夫とその後輩の小島の三人で夜行列車に乗り津軽へと向かうことになった。旅の終わりの津軽中里で、見知った町のように歩く小島の行きついたところに三角屋根の二階家があり、そこで不思議なことが起きるのだった。
「第四夜 天竜峡」 語り手 田辺
田辺が豊橋へと帰る列車の中で、通路の反対側にいた中年のお坊さんと女子高生と知り合うが、その坊さんは田辺がかつて良く通っていた岸田という画家の家によく来ていた佐伯という男だった。しかし佐伯は、岸田を殺したのはそこの女子高生だといい、列車を降りてしまったのだった。
「最終夜 鞍馬」 語り手 大橋 鞍馬の火祭を見るために集まった、かつての英会話スクールの生徒たちたったが、十年前に同じように鞍馬の火祭を見に来た際に行方不明となった長谷川と同様に、他の四人が行方不明となってしまう。仲間に電話をかけるとどうも話が変で、中井と会うことになるが。

森見登美彦作品は始めて読みました。本書の終盤に至るまで、私が好きとは言えないタッチのホラー作品、それもあまり主張の見えにくい作品だと思いながら読んでいました。

最終話に至るまでの四話は、どの話も結論が見えず、読み手は何となくの気持ちの悪さ、怖さというよりも若干の不快さを感じるだろうと思っていたものです。

岸田道生という画家の「夜行」という一連の作品が焦点になっていることは分かります。

でも、長谷川という女性が行方不明になっていることとそれぞれの話はどのように結びついているのかよく分からないのです。

また、そもそもどの物語も、前提として五人の登場人物が集まっている現在から過去を振り返っての話であり、とするならば語られた過去の話は現在へとどのようにつながっているのか、など、疑問符が飛びまくりの物語ばかりだったのです。

しかし、最終夜の鞍馬の話で、前提であった筈の現在が前提ではなくなり、この作品全体が、独特の雰囲気を持った、計算され尽くした世界へと一気に変貌してしまいました。

では、各話の結末は明確になったのかというとそうではなく、相変わらずに不明確なままなのですが、全体としてのこの物語が、一個の不安定な物語として確立される、矛盾しているようですが、そのように私の中で落ち着いてしまいました。

ここに至り、やっとこの作品が直木賞、そして本屋大賞の候補になった作品なのだとやっと納得させられたものです。

なにせこの作者の作品は初めてなので、他の作品も読んでみるしかない、と思っているところです。

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このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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