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島本 理生 ナラタージュ





直木賞受賞作家の描く長編の恋愛小説です。



大学二年生の工藤泉は、高校時代の恩師である葉山貴司からの頼みで高校の演劇部の手伝いをすることになる。そこには当時の仲間だった黒川博文、山田志緒がおり、また黒川の友人の小野玲二も参加することになっていた。

工藤泉にとって、葉山貴司は高校時代に想いを寄せた相手であり、今回の再開によりその想いはまた二人の距離を詰めるものでもあった。

演劇の手伝いをするうちに黒川の友人の小野から交際を申し込まれる泉だったが、葉山が妻の籍をそのままにしていることを知ったのちは、葉山への未練を断ち切るためにもこの申し込みを受けることになる。

しかし、小野は次第に葉山に対する嫉妬などのその素顔を見せるようになり、泉は二人の狭間で苦しむのだった。



島本理生の第159回直木賞受賞作である『ファースト ラヴ』を読んで、なにか気になる作家だったので、島本理央の代表作的な作品との位置づけになっている本作品を読んでみる気になったものです。

一言で言って、恋愛小説の苦手な私にとり本書は苦痛でしかありませんでした。

読後に調べてみると本書に対する評価は思った以上に高いものでした。ウィキペディアによりますと、「この恋愛小説がすごい! 2006年版」(宝島社)第一位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」で第一位、2006年の本屋大賞で第六位、そして第十八回山本周五郎賞候補にもなっていたのです( ウィキペディア : 参照 )。

ほかにもネット上のレビューでの評判のいいこと。いいとは聞いていたのですが、これほどまでとは思いませんでした。



島本理生の魅力とは、なんといっても恋愛関係にある男女の心理を独特の透明感や表現力で書き表している点。、と書いてあったのは「P+D MAGAZINE」です。

この作家の表現力に関しては否定するものではありません。

本書冒頭だけを見ても、主人公の泉と婚約者の男性と二人で歩く場面がありますが、ここで描かれる二人の関係性と泉の過去に向き合う姿が端的に描き出してあります。

そこでの男性の言葉は私には理解できるものではありませんが、本書で語られる物語の方向性を簡潔に示し、雰囲気も醸成してあります。

そうした文章のうまさは素人が評価するところではありませんが、ただ、うまいものだと感心するだけです。

ただ、ここでの男に対する違和感自体が私がこの作品に入り込めないことを示していたのでしょう。



やはりといっていいものか、読んでいて苦痛でした。最後まで読み通せずに投げ出そうともしかけたのですが、それでは感想も書けないという気持ちだけで何とか最後まで読み通すことができたようなものです。


恋愛小説は「恋愛」という心のゆらぎ、うつろいをテーマに売るものである以上、結局は男女の心理を深く追い求めざるを得ないものでしょう。といいうことは主観描写を避けては通れず、つまりは心象描写が続くことになります。

この心象描写の連続ということが私の苦手意識の一つでもあります。個人の心象を連ねられてもその中に入り込めないのです。


そのうえで、描かれる人物像がたいていの場合は煮え切れない男、責任をとれない男、が描かれることが多く、そのことも苦手となる原因の一つになっているのでしょう。

本書でもそうした男が描かれていました。それも、主人公の恋愛対象となる男二人ともにそうなのです。

自分がそうした煮え切れない男だなどというつもりは当然なく、というよりもそうした男に近いから、小説を読むときくらいは現実を離れたいと思うのかもしれません。

また、そうした分析をする気にもなれません。やはり、恋愛小説はできるだけ近づかないようにしよう、そう思った作品でした。
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島本 理生 ファースト ラヴ





本書は家族のありようをテーマにしたミステリーで、第159回直木賞を受賞した作品です。


本書の主人公は真壁由紀という名の臨床心理士です。彼女は、父親を殺したとして服役している聖山環菜(ひじりやまかんな)という二十二歳の女子大生についての本を書くように依頼されます。

環菜の父親殺害の動機については分かっておらず、環菜本人も、自分が父親を刺した理由を探して欲しいくらいだと言っているほどでした。

真壁由紀という主人公自身も母親との間に確執を抱えており、更には、環菜の国選弁護人の庵野迦葉は由紀が大学時代に付き合っていた相手であり、現在の夫真壁我聞の弟だったのです。


本書の冒頭近く、由紀と迦葉との会話の場面があります。なんとなく迦葉の皮肉めいた言葉もあり、この二人の間に過去に何らかの関係があったのではないかと示唆されています。

その後、由紀と由紀の母親との間の微妙な関係も描かれ、なんとなくこの物語の人間関係の複雑さを感じます。

話が進むにつれ、、聖山環菜という被告人、そして由紀自身、更に庵野迦葉という中心的な登場人物の三人共に、それぞれの親との間に確執があります。その上由紀と迦葉との間には一言では語れない人間関係が推察されるのです。



残念ながら、このような人間の内面深くに根差した性格に基づく人間模様、特に男女の恋愛模様は私が非常に苦手とするところであり、そうだからこそ途中までは本書の価値を見出すことができませんでした。

本書が直木賞という賞を受賞する理由が全く分からなかったのです。このような作品はエンターテインメントとしてではなく、人間自体を見つめる芥川賞のジャンルではないのか、と思っていました。

しかし、本書も半分をかなり過ぎたところあたりから様子は変わってきます。それまでの人間中心の描写は、環菜の事件中心の展開となり、ミステリーとしての側面が前面に出てきます。

そこでは、迦葉は切れ者の弁護士であり、環菜は自分を見失った末に犯罪行為を犯した被告人として在り、物語は意外性の中に展開していきます。

そして、このミステリー小説としての面白さは、これまでの由紀らの調査の上に成り立っているのであり、だからこそのこの結末なのだと、やっと理解できるまでになりました。

やはり直木賞を受賞した小説でした。



しかしながら、それでもなお本書の前半の登場人物個々人の内面描写の部分は好みではなく、他の描き方もできたのではないかと思いますし、由紀らの行ってきた調査も本来であれば本書ではほとんど出てこない警察の捜査の中で明らかにされるべきものだという印象は残ります。

でも、そうした印象は個人的印象にすぎないものだからこそ、高評価を受ける作品なのでしょう。
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Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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