楡 周平 クーデター

クーデター (角川文庫)クーデター (角川文庫)
(2008/11/22)
楡 周平

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前作の「Cの福音」と異なり、物語としてかなり面白く、やはりこのシリーズを続けて読んでみて良かったと思いました。

オウム真理教を思わせる宗教団体が世直しに向けての武器の調達や戦士の育成をし、北朝鮮の仕業と見せかける仕掛けと共に首都東京にテロを仕掛けます。そこに、主人公川瀬雅彦がからみ、その脅威を未然に防ぐべく動くのです。

確かにこの作品でも主人公の川瀬雅彦の活躍場面はそれほどないし、筋立ても決して意外性に富んだものではありません。それどころか、途中のある場面から結末が見えないでもなく、更に主人公の活躍の場面も偶然のたまものといった趣が強くて、少々興が削がれないでもありません。

もっと言えば、少々各場面の描写がしつこく、描写が詳細に過ぎると感じられるのです。本書の半分近くが問題の宗教団体の依頼による武器の調達の場面や途中で絡んでくるアメリカの原潜の描写などで終わってしまいます。もう少し簡潔な状況描写と、簡潔な会話が書かれていればもっと読みやすく、テンポが良いのにと思ってしまいました。この点は読み手により異論があるところでしょうが。

しかし、それでも本筋の宗教団体のというよりは、北朝鮮の行動に見せかけての一連の行為が、一種のシミュレーション小説としても面白く、今後もこのシリーズを読み続けたいと思いました。

ただ、蛇足ですが、北朝鮮の侵略行動のシミュレーション小説としては村上龍の「半島を出よ」があり、比べてしまった、ということがあるのかもしれません。

楡 周平 Cの福音

Cの福音 (角川文庫)Cの福音 (角川文庫)
(2008/10/25)
楡 周平

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殆ど大藪春彦の世界だと思いました。まさに伊達邦彦や朝倉哲也を彷彿とさせてしまう主人公なのです。

本書の主人公朝倉恭介は父親の仕事でアメリカでの暮らす中に両親を航空機事故で亡くし、莫大な補償金を受け取ることとなった。ミリタリースクールで頭脳と肉体を鍛えていた朝倉恭介は、自分の未来を法の裏側の世界に見出すのだった。友人の父親だったニューヨークマフィアのボスの仕事を手伝い、コンピュータを駆使し日本でのコカイン販売網を構築ししようとする朝倉恭介だったが、既存勢力との衝突が避けられないこととなった。

本書は全六部からなる朝倉恭介と川瀬雅彦とを主人公とするシリーズの一作目だそうです。確かに、本書は殆ど主人公の紹介で終わっていると言っても過言ではないようなかなり欲求不満に陥りそうな内容でしたが、これから第二の主人公が登場し、本格的に物語が始まるという前哨戦と読めなくもありません。それにしても長い前哨戦ということになりますが。

でも、出来ればもう少し大藪春彦とは異なる特徴が一作目から欲しいと感じてしまいました。それほどに印象が似ていたのです。テキストベースのコンピュータでニフティ・サーブを使いこなすような、そうした時代の古さもそれ程気にならないだけにおしいと思ってしまいました。

大藪春彦の世界はもっと車と銃への執着が激しく、アクションも派手です。多分本シリーズの主人公ももっと派手なアクションが待っていることなのでしょう。

私はまだこの本が一冊目なので、新たな世界が今後展開されることを期待して次の本を読むつもりです。

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このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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