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梶 よう子 宝の山 商い同心お調べ帖

宝の山 商い同心お調べ帖宝の山 商い同心お調べ帖
(2013/12/12)
梶 よう子

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本の帯には「時代ミステリー」と銘打ってあるのですが、ミステリーというよりは人情ものといった方が良いと思います。

「雪花菜(きらず)」「犬走り」「宝の山」「鶴と亀」「富士見酒」「幾世餅」「煙に巻く」の七編で構成されています。

主人公の澤本神人(さわもとじんにん)は、諸式調掛方同心という江戸市中の物の値段や許しのない出版などを調べるのが職務という珍しい設定です。

「一朝の夢」にも出てきた北町奉行鍋島直孝により、「顔が濃い」という理由で定町周りから諸式調掛方へ配置替えとなりました。まん丸顔で数字に明るい庄太という小物を引き連れ江戸の町中を歩き回ります。

読み始めはとても謎ともいえない謎ときで、これといった人情話があるわけでもなく、この作家さんは短編は不得意なのかと思う出来でした。

それが読み進むにつれ変わっていきました。短編ごとに稲荷鮓屋、献上物や贈答品の余剰品を扱う献残屋、紙屑買い、獣肉を食べさせるももんじ屋など、江戸の種々の商売を織り込んだ話は江戸の豆知識にもなっていて、それが人情話を絡めた物語になっていくのです。やはり朝顔同心の作者だと思える、人情ものとして仕上がっていました。

朝顔同心程の心地よい読後感とまではいきませんでしたが、軽く読める人情本といったところでしょうか。それでもシリーズ化される雰囲気もあり、それがまた楽しみな作品でもあります。

梶 よう子 夢の花、咲く

夢の花、咲く夢の花、咲く
(2011/12)
梶 よう子

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先日読んだ「一朝の夢」の続編、というより時間的にはその少し前の話です。

ある殺人事件が起きるが、その被害者は植木職人ではないかと思われた。中根興三郎は知り合いの植木職人である留次郎やその隣人吉蔵に尋ねるがなかなかその身元が分からない。一方、この事件を調べる定町廻り同心の岡崎六郎太は、吉蔵の娘お京と結婚することになっていたが、その吉蔵に疑いがかかってしまう。ところが、その探索の途中で安政の大地震が起き、江戸の町は壊滅してしまうのだった。

相変わらず丁寧な文章で、前作には出てこない吉蔵やその娘お京、それに岡崎六郎太などを中心に物語は進みます。

地震後の江戸の町の状況は色々な小説でも取り上げられていたと思うのですが、この本のようにお救い小屋の状況等までを舞台に組み込んで描写している物語は私が読んだ範囲では無かったと思います。 興三郎の亡き兄の許嫁で今は材木問屋の内儀となっている志保と再会し共に被災者を助けたり、周三郎という絵師が登場し興三郎と絡んだりと、結構バラエティに富んだ展開です。

ただ、物語自体は少々展開にひねりが無い印象はあります。例えば、敵役の商人の非道さですが、いくらなんでもそうした行為をしていたら商人として終わっていはしないか、という不自然さを感じたことでしょうか。

しかしこの作家の作品には、そうした瑕疵を乗り越えての面白さがあるのです。それはやはり主人公の中根興三郎という人物のキャラクターに負うところが大きいのでしょう。下男の藤吉に助けられながらも必死で朝顔を育てるその優しさは、読者まで暖かな心根にしてくれるようです。

この後続編がかかれるかどうかは分かりませんが、出来れば読みたいと思うのは私だけではないと思います。

梶 よう子 一朝の夢

一朝の夢 (文春文庫)一朝の夢 (文春文庫)
(2011/10/07)
梶 よう子

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「両組御姓名掛りという奉行所員の名簿作成役」同心である中根興三郎は、図体は大きいものの気性は優しく、朝顔の栽培にのみ熱中している男だった。幕末の江戸では政情不安な中朝顔の栽培が盛んで大名まで乗り出すほどだったが、元北町奉行鍋島直孝の屋敷前で絶命していた武家の死体が消えたり、辻斬り事件まで起きていた。そうした中、興三郎は朝顔栽培を通じて朝顔界の重鎮である鍋島直孝の屋敷で宗観という人物と出会い、時代のうねりの中に引き込まれることとなるのだった。

前に読んだ「柿のへた」でもそうでしたが、植物を中心に話が展開するためなのか、文章が優しいです。決して派手さはありません。でも、淡々と語られる朝顔に対する主人公の思い入れや、蘊蓄は常に朝顔に対する愛情にあふれています。その愛情が他の人にも伝わり、周りの人をもその愛情で包もうとするようです。

歴史上の人物が少しだけ顔を見せたり、ミステリーの要素も少しだけですがあったりと、内容もはそれなりに盛りだくさんではあります。ストーリーも結構入り組んでいます。敵役が若干型にはまっている感じがしないではありませんが、それも瑕瑾にすぎません。何よりも朝顔についての描写が見事で飽きさせません。

と少々羅列気味になりましたが、とにかく軽く読み飛ばせる物語ではないと言いたかったのです。

決して明るい物語ではありません。でも、派手さは無いけど、読んでいてゆっくりとした時間が流れる、そうした心地よい時間を持てる一冊だと思います。

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Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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