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梶村 啓二 野いばら

野いばら (日経文芸文庫)野いばら (日経文芸文庫)
(2013/10/25)
梶村 啓二

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醸造会社での種苗会社買収を担当する縣(あがた)は、英国の田園地帯で一冊の手記に出会う。その手記は、生麦事件の直後の日本で情報収集の任に当たっていた英国人将校の、日本での出来事を記したものだった。そこには日本の美しい風景に対する畏敬の念と共に、英国人将校の日本語の教師であった成瀬ユキという女性に対する想いが綴られていた。

本作品は、五人の選考委員の満票で第3回日経小説大賞に決まったそうです。文章の広がりと詩的な美しさが評価されたのだそうです。

確かに、手記の主体である英国人将校の、日本人や日本の風景に対する心象としてとして語られる文章は美しいものがありました。

また、幕末の日本に滞在した外国人から見た日本、という視点が面白いのです。しかし、文章は美しくても、その内容は日本人が書いた外国人としての文章なのです。その点が妙に気になりました。

しかし、アーネスト・サトウやロバート・フォーチューン他の実際に幕末の日本に居た外国人により書かれた文献を参考資料として挙げておられるので、女性に対する思いはともかく、実際そうした感情を持った外国人が居たのでしょう。その印象を著者が詩情豊かな文章として仕上げておられるのだと思います。

もう一点。読者にとって、本書は英国人将校の一人称で語られているため、成瀬ユキという女性の心情、背景が全く分かりません。英国人将校の心というフィルターを通して推し量るしかないのです。ですから、最後にはその想いが示されているとしても、物語の途中での行動にどんな意味があったのか、その点が私の中ではあいまいに残った部分があります。

でも、そこが良いのでしょうし、示されているそのユキの行動から、ユキの想いを汲み取るべきだろうし、まさに読者の想像を刺激するところなのでしょう。「はかなくて烈しい、時をこえた愛の物語。」という惹句はまさにその通りでした。

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