FC2ブログ

福田 和代 迎撃せよ


これまで読んだ2作品よりは面白く読めた、というところでしょうか。でも、やはり場面設定の荒さは否めませんでした。

航空自衛隊岐阜基地からミサイル4発を搭載した戦闘機が盗まれ、一発が富士の樹海に打ち込まれた。日本の都市にミサイルを撃ち込むというテロリスト。そのテロリストからの犯行声明に予告された攻撃だった。ミサイル防衛統合任務部隊に所属する安将文一等空尉は、自分の恩師で、かつての上官でもある、加賀山一郎元一等空佐の犯行への加担を疑い、加賀山を探し始めるのだった。

まずは、自衛隊の航空基地から現役の戦闘機、それもミサイルを装備した戦闘機を盗み出す行為が、あまりにも簡単に過ぎます。この小説のねらい所からすれば、戦闘機の奪取行為そのものは枝葉なことかもしれませんが、この行為がテロリストの作戦の大前提になっているのですから、もう少し丁寧に、読み手を納得させるだけの理由づけをしてほしく思いました。

更に言えば、加賀山らの犯行動機も今一つ説得力に欠けます。加賀山自身も愛している日本という国にミサイルを撃ち込もうとするのですから、読者を十分に納得くさせるだけの理由を明示してくれないと、この物語に感情移入できないのです。

残念ながら、以上のような疑問点は他にも少なからず見受けられます。ましてや、この手の、北の国のテロリストという設定や、自衛隊員の愛国心から起こすクーデターもどきの話は一つのパターンとして有るのですし、読み手も、それなりのものを期待して読みますから、ハードルはかなり高くなると思います。

結局、本書では中心となるのはどの人物なのかも明確でないまま、作者の最も言いたいことがあいまいになって終わったような気がします。

残念ながら、『特殊警備隊ブラックホーク』『ハイ・アラート』そして本書と、これまで読んだ三冊が皆、似たような印象であるということは、私の好みとは一致しない作家さんだと思ってもよさそうでしょう。

福田 和代 ハイ・アラート

ハイ・アラート (徳間文庫)ハイ・アラート (徳間文庫)
(2013/03/01)
福田 和代

商品詳細を見る

全体的にちぐはぐな印象の小説でした。

「十二神将」を名乗るテロリストが株式会社エアリーフーズに対し爆弾を爆発させていた。 これまで「十二神将」は新宿を皮切りに四か所での爆弾テロを実行していたが、少数のけが人は出したものの死者は一人もいなかった。その頃、神戸でスポーツクラブを経営している田代慎吾は、日本に来ていたペルーの国家警察テロ対策本部の捜査官であるミゲル・ヤマグチと共にファンとサンチョの二人を探していた。
「十二神将」が特定の企業へとテロの対象を変えた理由は何か、また、田代達が探すミゲルとサンチョは「十二神将」との関わりはあるのか。田代達の探索が始まる。

田代慎吾とミゲルというキャラクターもいい。「十二神将」というテロリストの設定も悪くはない。しかし、全体として実にまとまりがないとしか感じられませんでした。

話は、田代らふたり、それに「十二神将」、警察、マスコミなどと視点が結構変わります。その変化が少々わずらわしく感じられます。また状況設定に現実感が無いため物語に感情移入がしにくく、作品の欠点ばかりが目に付いてしまうようになりました。

前に読んだこの作者の「特殊警備隊ブラックホーク」は本作品よりも二年以上も前に出された本ですが、そちらの作品も設定はとても面白かったのですが、小説としてどうもあまり面白いとは思えませんでした。

本書も同様なのです。あらすじそのものは面白そうなのですが、具体的な筋立てになると少々荒さが目立つといいますか、詰めが甘く感じられ、小説のリアリティーが亡くなってくるのです。例えば、ミゲルはペルーの対テロリストの専門家なのに本書では何の意味もありません。またなかなかに警察にその尻尾を掴ませないテロリスト「十二神将」が、その実態はあまりにも素人すぎます。なのに、これだけの事件を引き起こしてたテロリストについて警察が何の手掛かりもつかめないという設定は受け入れがたいのです。

読み手を納得させられるだけの状況を見せてくれなければ物語の世界に入っていけません。勿論個人的な好みの問題ですが、完成度は今一つの小説でした。

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR