FC2ブログ

真保 裕一 連鎖

連鎖 (講談社文庫)連鎖 (講談社文庫)
(1994/07/07)
真保 裕一

商品詳細を見る

物語の舞台背景としてあるのは「食」の問題です。1986年4月に起きたチェルノブイリ原発事故による放射能汚染問題が絡んでいます。出版年も1994年ですから今からちょうど20年ほど前の作品で、第37回江戸川乱歩賞を受賞しています。

元食品Gメンであった過去を持つ検疫官の羽川は、親友であるフリーライター竹脇が自殺を図ったという連絡を受け、竹脇の自殺の原因を作ったのは竹脇の妻と不倫関係に陥った自分なのだろうと煩悶していた。同じ頃、羽川は倉庫に農薬を撒かれたファミリーレストランに調査に行くが、肉の検査をしようとしても店の拒否にあい、何もできないでいた。しかし、その裏を調べていくうちに、竹脇も同じ筋の事件を追いかけていたらしく、あちこちで竹脇の名前にぶつかるのだった。

とにかく輸入食品のその後の流れについて良く調べられており、一般国民の全く知らないところでの食の流通の裏面を描き出してあります。本書は直接的には「輸入食品」の問題なのですが、本書の時代背景にはチェルノブイリ原発事故による放射の汚染食品の問題があり、2011年の東日本大震災を経験した現代(2014年)の私達にとって、近年の食品偽装問題を持ち出すまでも無く見過ごすことのできないテーマを含んでいます。

「食」の流通の問題と言えば相場英雄の『震える牛』があります。そちらは食肉の流通に絡めた刑事ものの推理小説であり、ある刑事の執念が描かれていました。本書は推理小説というよりは冒険小説に近い趣を持っています。輸入食物の流通の裏面を追求していく羽川の行動に焦点が当たり、その内面の描写がなかなかに面白いのです。少々色々なことを盛り込み過ぎと感じないでもありませんが、十分な調査をもとにして緻密に書き込まれたその文章は魅力的です。

真保裕一と言えば『ホワイトアウト』という、我が国の冒険小説の名作がありますが、本書はこの著者のデビュー作だそうで、第三十七回江戸川乱歩賞を受賞しています。

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR