上田 秀人 密封

密封<奥右筆秘帳> (講談社文庫)密封<奥右筆秘帳> (講談社文庫)
(2007/09/14)
上田 秀人

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「奥右筆とは、幕府の施政にかかわるすべての書付を制作保存するのが任であった」役職です。「幕府の諸役、大名旗本から執政衆に出される書付は膨大な数にのぼる」ため、「まず奥右筆組頭が可否の意見をつけ」たのだそうで、そのため、奥右筆組頭は役高四百俵、役料二百俵で、御四季施代金二十四両二分を支給されているものの、「便宜を図ってもらおうとする者からの付け届けは」群を抜いていて、「実収入は三千石の旗本を凌駕するほど」だったと本文中に記されています。この奥右筆組頭の立花併右衛門が田沼家からの家督相続願いを手にしたところから物語は展開し始めます。

近年、文庫本による時代劇ブームが言われて久しいのですが、本書というよりも上田秀人という作家の作品は、その重厚感からしてブームの中の作品とは若干異なるように感じます。それくらい物語に厚みがあり、時代背景も含めて書き込まれています。

単に文庫本で四百頁を越えるというその分量だけではなく、中身が濃いし、夫々の主人公の設定も面白いのです。

本書に限って言えば、主人公は柊衛悟(ひいらぎえいご)なのでしょうが、この柊衛悟自身は次男坊であり時間が自由に使える身分であって特別なものではありません。そうではなく、柊衛悟が護衛をすることになる隣家の当主である立花併右衛門(たちばなへいえもん)が冒頭に書いた奥右筆という立場です。この立場で様々の幕府の秘事にも接することが出来るがために争い事に巻き込まれていくのです。

本書はシリーズの第一作だそうで、今後は立花併右衛門を頭脳として、柊衛悟が活躍することになるのでしょう。幕府の内部にうごめくもう一つの勢力との戦いが描かれていきます。更にはお決まりの女性も立花併右衛門の娘である瑞紀(みずき)が登場します。柊衛悟の幼馴染でもある瑞紀との仲もどうなるものか、というところでしょうか。

また、第十一代将軍徳川家斉(とくがわいえなり)とその相談役とも言うべき松平定信(まつだいらさだのぶ)、敵役として家斉の父親である一橋治済(ひとつばしはるさだ)などが配置されています。

2013年6月にシリーズ最終巻である第十二巻『決戦』が出版されて完結しているそうで、続けて読んでみたいシリーズがまた増えました。

ちなみに、上田秀人という作家は現役の歯医者さんでもあるそうです。多忙な本業のかたわら、多くの人気シリーズを書かれているのですから見事なものです。更に読み続けたいと思います。

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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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