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未須本 有生 推定脅威

推定脅威推定脅威
(2014/06/27)
未須本 有生

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この本の売り文句として「理系ミステリー」という言葉がありました。まさにその通り。航空機好きの人にはたまらない魅力を持った本ではないでしょうか。

領空侵犯が疑われる不明機のためにスクランブル発進をした自衛隊機は、失速により夜の日本海に墜落した。相手はプロペラ機であり、何故に低速側の速度制限を下回った減速をしたのか不明で、パイロットの操縦ミスと考えるしかなかった。その事故機の機体検証作業を言い渡されたのは新しく四星工業のT-F1技術管理室に配属された沢本由佳(さわもとゆか)だった。事故機のデータをもとに動かされるフライトシミュレータを体感した沢本は異常操縦の原因として侵入機が関わっているのではないかと考えるが、即座に否定されてしまう。しかし、その言葉が気になった由佳の上司の永田は知人のデザイナー倉崎修一に相談する。この倉崎は以前T-F1技術管理室で永田の部下であった人物だった。

とにかく、航空機、それもジェット戦闘機の専門的な知識が飛び交う小説です。だからと言って読者を置き去りにしているのではなく、それなりの説明が邪魔にならないように加えてあります。まさに「理系ミステリー」であり、かつその知識を十全に生かしたミステリーになっていると言って良いと思います。

著者の未須本有生( みすもとゆうき )氏は東京大学工学部を卒業の後、大手のメーカーで航空機の設計に携わっていたそうで、まさに航空機業界の専門家なのです。その後独立し、デザイナーとして活躍されていたといいますから、本書のキーマンとして登場する倉崎修一という男は作者自らが投影された人物なのでしょう。まあ、恋愛の部分は判りませんが。

また、仕事柄色々なテストパイロットとも知り合いになり、その素晴らしい能力、人柄に触れ、自らが知己を得たテストパイロットを紹介したかった、ということも語っておられます。

本書中に登場するT-F1という航空機に関しては、1980年代に導入された現在の日本の主力戦闘機であるF15戦闘機とその後継機と目されていいるF35の間があまりにも空いてしまったので、物語の中で、その間隔を埋めるために国産で間を埋める飛行機を作ろうということで創作したといいます。戦闘機としても使用し得る練習機、という都合のいい航空機だそうです。

航空機業界の内部やその業界の民と官の在り方、それに自衛隊内部のパイロットたちなど、普段私達一般人が目にも耳にもしない情報が詰め込まれている作品です。そうした目新しい分野を舞台にして、その専門的な知識があればこそ書くことが出来るミステリーとして十分な面白さを兼ね備えた小説です。

ただ、作者本人も一番難しかったと言われているように、主人公の沢本由佳と倉崎修一との関係で由佳の性格設定などに若干違和感を感じたのですが、それも個人の好みでしょう。

デビュー作でこれだけのものを書かれたのですから、今後を更にその知識を生かした作品を期待したい作家さんです。

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Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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