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矢月 秀作 もぐら 讐


シリーズの前作終盤で人を殺してしまった主人公の影野竜司は下関北刑務所で服役していた。そこに、下関北刑務所を始めとする数か所を襲撃対象として狂信集団が動き始めるのだった。一方、府中刑務所の壁に磔られて殺された轟警部補惨殺の犯人が、新宿でも若者を殺した上で自首をしてきた。

今回も当たり前ですがヒーロー影野竜司が大活躍です。敵役としては新興宗教アレースという狂信集団が設定されています。この集団が、前回と同様に新宿の街の真ん中でば爆弾を破裂させたり、刑務所を吹きとばしたりとやりたい放題なのです。

しかし、やはり物語全体の構成が雑でどうしても感情移入できませんでした。

例えば、服役囚である筈の影野竜司が警察の手先として狂信者達を内偵するという設定は、建前は秘密として扱うということで、まだ譲ってもいいでしょう。しかし、更に警察の捜査会議にまでも出席させるのであれば、もう秘密扱いは出来ないので、服役囚を警察官並みの扱いをしてもおかしくないだけの理由づけをしてほしいのです。単に、影野竜司の能力が必要だから、ではストーリーは流れても、物語としては成立しないとしか考えられません。どんな物語でもそれなりのリアリティは必要だと考えます。

こうした個所は随所にあり、その夫々が結局は物語を浅薄にしか感じさせていません。

とはいえ、前作同様それなりに売れているのですから、多数の意見は面白いと感じているのでしょう。ですから、個人的にはこの作者の作品はもう読まないというだけです。

矢月 秀作 もぐら

もぐら (中公文庫)もぐら (中公文庫)
(2012/04/21)
矢月 秀作

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直前に読んだこの作家の『リンクス』という作品が少々読み通すのにつらい作品だったことで本作品も読むのをやめようかと思ったのですが、一冊だけで決めつけてもいけないし、何よりベストセラーということなので最後まで読んでみました。

結論から言うと『リンクス』ほど雑だとは感じませんでしたが、やはり読み応えのある作品とは言えませんでした。

影野竜司はかつては警視庁組織犯罪対策部に所属していたのだが、とある事件で妻子をも殺されてしまう。その後、自ら死ぬこともかなわずに、社会の裏側でトラブルシューターとして生きているのだった。あるとき、妹がクランクという不良グループに拉致され、売春を強要されているので助けて欲しいという依頼を受ける。早速駆け付けた影野は少女を助けだすのだが、その後でクランクという不良グループともどもその背後の暴力団まで何者かに殺されてしまうのだった。

とにかくこの作者の小説は構成が雑としか言えないのです。物語の背景があまり書き込まれておらず、単に主人公がそう思った、とか敵役が殺した、とか、単純な文言だけで片付けています。

確かに、この直前に読んだこの作者の『リンクス』に比べるとまだましとは言えます。スーパーヒーローが悪漢たちをその圧倒的な身体能力で懲らしめていく。そのこと自体は読み手にカタルシスをもたらします。それなりにベストセラーになるのも判らないではありません。

でも、警察も登場するのですがその存在は忘れられているようです。機関銃で十数人を簡単に殺しても犯人たちは夜の街で飲んだくれているだけです。勿論一般素人は彼らに手を出せません。だから、主人公が手を貸すというのです。警察は役に立たない。その一言で終わります。

とはいえ、多くの人が支持するからこそベストセラーになっているのでしょうから、私のような否定的な意見は、そういう意見もあるというにすぎない少数意見なのでしょう。

最新作が最新作だったのでこのシリーズも進化することは無いのでしょうが、もう一冊くらいこのシリーズを読んでみようという気になったのですから、その程度ではあったようです。

矢月 秀作 リンクス

リンクス (中公文庫)リンクス (中公文庫)
(2014/08/23)
矢月 秀作

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誰かのブログだったか、書評だったのかに「お薦め」として紹介してあったので読んでみたのですが、作者には悪いのですが、内容の無い本でした。

日向太一(ひゅうがたいち)は東京臨海中央署地域課所属の交番に勤務する巡査部長だが、同じマンションに住む石田という警備員と知り合いだったことから、石田の失踪事件の捜査という特命を受けることになった。石田の警備先であったレインボーテレビの近辺を調べていくと、石田の同僚であった黒木が嘘をついているらしく、その背後には何やら正体不明の組織が見え隠れしていた。

とにかく、この主人公がスーパーマン的な活躍をするのですが、とても一巡査のやる行動とはとても思えませんでした。物語の背景からして敵役であるテロリストの表面的な主張を書いてあるだけです。警察組織にしても敵役のテロリストたちにしても、背景説明が薄いので全く感情移入できません。

私は小説自体は如何に荒唐無稽な物語であってもまったくかまわいません。しかし、その突拍子もない話なりのリアリティが無ければ受け入れることが出来ないのです。

矢月秀作という作家の初期作品だろうと決めつけていたら、2014年8月に出版された文庫書き下ろし作品だと知り、再度驚いてしまいました。全てに悪い意味でマンガチックとしか言いようが無く、240頁強の文庫本ですが、一時間ほどで読み終えてしまいました。

でも、それはあくまで私の受け止め方であって、レビューを読んでみると面白いという人もそこそこいるようなので好みの問題でもあるのでしょう。

読書に何の意味も求めず、単純にアクション描写だけを好む人であれば少しは楽しめるかもしれません。ただ、そのアクションシーンも決して出来栄えが良いとは言えないと思うのですが・・・・。

この作家の本をもう一冊借りています。『もぐら』作品で、シリーズ化されており、それもベストセラーだそうですので少しは期待して読んでみたいと思います。

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Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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