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葉真中 顕 ロスト・ケア

ロスト・ケアロスト・ケア
(2013/02/16)
葉真中 顕(はまなか・ あき)

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端的に言って重苦しい小説でした。ミステリー文学大賞新人賞を受賞した作品だということで読んだのですが、ミステリー小説としては少々思惑違いというところでしょうか。

冒頭、裁判の場面で幕を開ける。裁かれているのは三十二件の殺人と一件の傷害致死容疑で裁かれている<彼>だった。
 検察官の大友秀樹は、友人の佐久間功一郎が営業部長をしている介護企業「フォレスト」経営の「フォレスト・ガーデン」に父親を入所させることになる。一方、羽田洋子は、認知症の進んだ母親の罵倒に耐えながら母親の糞尿の始末をしていた。しかし、洋子の母は<彼>により殺される。そのことにより洋子は地獄の日々から抜け出すことになるのだった。

作者は介護事業の現場にいる佐久間功一郎に

 介護保険は人助けのための制度じゃない。介護保険によって人は二種類に分けられた、助かるものと助からないものだ。
 介護保険によって介護はビジネス、資本の論理の上に乗せられた。それは、つまり、助かるために金が必要になったってことだ。

 と言わせています。金が無いために十分な介護を受けられない一般庶民は、介護による疲弊、洋子の言葉によると「地獄の日々」から抜け出ることはできないのです。これが作者の言いたかったことと思われます。

前半は介護制度の問題点をこれでもかとつきつけ、読み手は少々辛さばかりが増してきます。「介護」が他人事ではない読み手にとっては更に重い内容です。

若干残念なのは、何故に今の介護制度が駄目なのかを、「金がかかる」、という一点だけで片付けていることです。勿論、介護現場の苦労なども書きこまれてはいるのですが、もう少し介護制度の弱点を多面的に示してあればと思いました。

後半は<彼>とは誰なのか、に焦点が移ります。介護ビジネスの現場の問題点や破綻などが描かれながらも、<彼>の行動が挟まれます。

そして、終末へと向かうのですが、確かに<彼>が誰なのか関心が持たれるところなのですが、終盤での<彼>の思惑など、若干先が見えることもあり、興が削がれるところもありました。

途中、高野和明の『13階段』を読んでいた時の重苦しさを思い出していました。あの小説は死刑制度について考察している話であり、「死」を正面から捉えている作品で、何度も途中でやめようと思ったものです。本書もそれに劣らずに重い本でした。良い本なのかもしれませんが、個人的には、もしこの手の作品が続くのならば、この作者の作品はもう読まなくてもいいかなと思っています。

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このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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