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レイ・ブラッドベリ バビロン行きの夜行列車


私が二十歳前後の頃、SFにのめり込んでいた頃に最も感銘を受けた作家の一人がこのレイ・ブラッドベリという人でした。『火星年代記』や『十月はたそがれの国』など、その幻想的な作風は、小説でこのような雰囲気を表現することができるという驚きと、ブラッドベリの構築する世界の新鮮さに圧倒されたものです。

そのブラッドベリの最新短編集、と言ってもブラッドベリ自身のあとがきの日付を見ると1997年4月8日となっているので、初版はその頃に出されている本です。その本が今年(2014年)の9月に文庫本として出版されたのです。すぐに予約し、読みました。

一言で言うと、少々の落胆と大いなる懐かしさとが同時に感じられました。

懐かしさは、そこにはかつて読んだブラッドベリのどこか幻想的で語りかけるような文体があったことであり、落胆はもう少しはっきりとした「驚き」をもたらしてくれるという期待が満たされなかったことです。

もともと、ブラッドベリという作家の文章は派手ではありません。それどころか、詩情にあふれたその文章は静かにささやくように語りかけるだけでした。それでいながらSFの醍醐味である「新鮮な驚き」をもたらしてくれていました。日常の中の少しの異常性を取り上げ、心の隅をちょっとだけひっかいて行くような物語が紡ぎだされていたのです。

しかし、本書は日常がそのまま通り過ぎていき、日常の少し先にある驚きにまで達していない作品が多いと感じたのです。

とはいえ、本書は短編集と言っても、各編が十数頁という短さの物語集です。この短い物語の中に様々の事柄が詰め込まれています。そして、「ミスター・ペイル」のように変わらずに引きつけられる作品もあるのです。ちょっとホラーチックなSFですが、この作品の雰囲気こそ、私の覚えていたブラッドベリの一つの顔だったように思います。他に「鏡」などのように、落胆があったとはいえ、やはりブラッドベリだと思わされる作品もあり、その意味では打率が若干低い作品集だったと言えるでしょうか。

昔と違い、派手な冒険小説やアクション小説、そうでないにしても人物の心情が書き込まれた人情ものなどを読みつけていると、ブラッドベリのような地味目の作家は受けつけなくなっているのかもしれない、などと少々反省の一冊でもありました。

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このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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