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真山 仁 コラプティオ

コラプティオコラプティオ
(2011/07)
真山 仁

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理想に燃えた政治家の理念とその行きつく先を、首相の側近ともいうべき政権内部の立場の白石望と、在野の代表である批判勢力の新聞記者の神林裕太の両方の視点から描いています。

勿論小説だし、政治の構造がデフォルメされ、また単純化されてもいるのでしょう。しかし、本書の焦点となる宮藤隼人首相は、震災以降においては原発事故を乗り越えつつある日本こそ原子力政策の真の舵取りが出来るとして、日本の原子力技術を世界に売りこもうとしていて、まるで現実を映しているかのようです。

政治の世界は本作品のような小説や映画、テレビドラマの中で覗き見るだけで、現実の政治の世界は一般庶民である私等には全く無縁なものです。事実、私達は政権担当政党の交代による大きな変動を経験したばかりですが、そうした政治の仕組みや実際の動きでの中で個々の政治家の政治活動がどのように為されているか何にも知らないことに気付かされます。

本作品がどこまで政治の世界を喝破したものであるのか、私等には知る手段はありませんが、登場人物の一人が言うように「正義」を行動の軸として持っていると信じたいものです。私等の青春期は学生運動の終焉期で、そこでは私も含め実社会を知らない学生の浅薄な正義を振りかざした書生論花盛りでした。でも、歳を重ねてみるとその青臭い書生論はそれなりに重要なものだったという気がします。

本書では終盤になると物語は一気に加速し、ドラマチックな展開が待っています。

色々と考えさせられる小説でもありますが、物語としてもかなり面白く読みました。

葉室 麟 春風伝

春風伝春風伝
(2013/02/22)
葉室 麟

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個人的に歴史上の人物ではもっとも魅力的だと思う人物の一人である高杉晋作の物語です。

「銀漢の賦」や「蜩の記」を書いた葉室麟の初めての歴史小説ということでかなりの期待をもって読みました。しかし、若干の期待外れではありました。勿論私の過大な期待と、また個人的な好みに若干合わないというだけのことなのですが。

つまり、晋作という人間象が今一つ感じられなかったのです。全体的に歴史上の出来事の摘示は緻密に描いてあると感じたのですが、葉室凛版の晋作象が見えてこない。例えばここの晋作と言う名前を「竜馬」と置き換えてもそれはそれで通るのでは無いかと思ってしまったのです。

特に前半で高杉晋作の中国行きのことが書かれていますが、どうしてもコミックの「おゝい竜馬」の中で竜馬が上海に行き列強の傍若無人振りを見る場面と重なり、その描写の長さもあって、その長さの分晋作の物語を展開してほしいと思ってしまいました。

「父子鷹」や「北斗の人」のような主人公が生き生きと動きまわる、そうした高杉晋作像を前提としての物語を勝手に期待していたので残念でした。

そうした不満はありながらも、特に後半の晋作が歴史の表舞台に飛び出してからの展開などはかなり面白く読みました。薩長同盟の最初の提唱者が月形洗蔵という人物であることなど、この手の歴史小説では初めて明記してあったのではないでしょうか。もしかしたら私が知らないだけかもしれませんが。

葉室凛の今後の歴史小説にも期待してみたいです。

東 直己 向う端にすわった男

向う端にすわった男 (ハヤカワ文庫JA)向う端にすわった男 (ハヤカワ文庫JA)
(1996/09)
東 直己

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図書館に無かったので注文をし、やっと読むことができました。これでこのシリーズ全部を読み終えたことになります。実に残念です。

「俺」が主人公の初めての短編集。いろんな男が登場します。

標題になっている「向う端にすわった男」では、まずは文章がこれぞハードボイルドだという雰囲気をあたりに振りまいています。そんな男が実際に居る筈もないと思いつつ、それでも<ケラー・オオハタ>では静かな店の中にキースジャレットのピアノが流れており、男はひとり静かにマティニを飲んでいるのです。これがまた実にかっこいい。ここだけ取り出せば、北方謙三の「ブラディドール」だといっても通るかもしれない。 そうした設定のもとで「俺」はまた悪い癖でトラブルに巻き込まれていそうな男に声をかける・・・・・。

この短編とあわせて5編の物語はやはり面白い。

結局、このシリーズがもっとも私の感性に合うようで、続編を読めるのはいつだろうかと、今から心待ちにしているのです。

百田 尚樹 海賊とよばれた男

海賊とよばれた男 上海賊とよばれた男 上
(2012/07/12)
百田 尚樹

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海賊とよばれた男 下海賊とよばれた男 下
(2012/07/12)
百田 尚樹

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出光興産の出光佐三をモデルとしたこの小説はまさにドラマであり、一人の男の一代記です。

いわゆるメジャーと言われる国際的な石油資本に対し、それに属しない独立系の会社という意味での民族派の石油資本である出光興産。

この本の中にもありますが、私の地元の小学生(?)の代表が出光丸の見学に上京した記憶があります。また、私が多分中学校の時の修学旅行の行き先の一つに徳山の石油化学工場がありました。

国岡鐵造が日田重太郎から資本提供をうけ、個人商店から会社組織へ、その会社はやがて満州鉄道へ食い込み、戦後の挫折を乗り越えて日章丸事件等の山を乗り越えて、メジャーのくびきから解放されるまでの苦難の道のりが描かれるのです。

特に下巻の日章丸事件のくだりなどは手に汗握る男の物語であり、実話だとはとても思えないほどです。そうした男達の努力の上に今の私たちの生活があるということを忘れてはならないでしょう。

ただ、主人公と対立するメジャーの傀儡として描かれている旧来の石油業界が、あまりに一方的に悪とされている点が若干気になりました。もう少し旧勢力の側の事情を加味した描き方であれば更にのめりこめたのに、と思わざるを得なかったのです。とはいえ、旧勢力がメジャーの息がかかっていたことは事実でしょうから個人的な好みの問題になるのかもしれませんが。

2013年の「本屋大賞」受賞作品です。

高木 彬光 破戒裁判

破戒裁判 新装版  高木彬光コレクション (光文社文庫)破戒裁判 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)
(2006/06/13)
高木 彬光

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全編が法廷での検察、弁護人のやり取りで成り立っている珍しい構成の本です。検察と弁護人とのやり取りの中から被告人の真実の姿が浮かび上がってきます。そこには皆の思いもかけない本当の理由がありました。

法廷場面だけの構成なので、決して派手さはありません。言わば、本格派の推理小説での探偵の謎解き場面だけで成り立っていると言ってもいいかもしれません。

今回図書館で目の前にこの本があったので思わず借りて読み返してみたのですが、今でも小説としての面白さは色あせてはいませんでした。前回読んだのは私が20代の頃、もう40年近くも前になります。

これは当時から思っていたことですが、文章が少々大時代的に感じる個所があります。本作品は台詞が法廷での弁論という特殊な設定なのである程度仕方がないことがあるかもしれませんが、他の作品でも同様な感想をもっていたのですから、これは高木彬光という作家の特色と捉えるべきなのでしょう。

また、当り前ではありますが、お金の価値の感覚が今とは相当異なるのが新鮮に感じてしまいました(作品の出版は昭和36年)。

蛇足ですが、今回読み返すまで奥さんのことをペリと呼んでいたのは高木彬光の代表的な探偵役の一人である「検事霧島三郎」だと思っていました。ところが、本作品の探偵役である弁護士百谷泉一郎が奥さんのことを「ペリ」と呼ぶ場面がありました。記憶は当てにならないものです。

この弁護士百谷泉一郎シリーズは本作品が最初です。女傑である奥さんも活躍するこのシリーズは他に「誘拐」、「人蟻」等があり、かなり面白く読んだ記憶があります。

リベリオン

リベリオン -反逆者- [DVD]リベリオン -反逆者- [DVD]
(2003/10/24)
クリスチャン・ベール、エミリー・ワトソン 他

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前田有一氏の批評でアクションシーンを絶賛してあったので借りてみた。

舞台設定やストーリーそのものは決して及第点とは言い難い。戦争をなくすために人間の「感情」を悪として抑え込み、それに反すると問答無用の死刑。感情を殺すという秩序維持のために、闘争術の特殊訓練を受けた主人公も属するクラリックという一隊が活躍する。しかし、薬を飲み損ねた主人公が感情を得たとき、世界が変わる。

戦争を無くすために感情を殺すという処置をとった筈なのに、そういう体制の維持のために問答無用の暴力を用いる、というその設定自体が矛盾をはらみ疑問として残ってしまうのだけど、まあ、何とか妥協して最後まで見続けた。

確かに、アクションシーンは凄いの一言だ。「ガン=カタ」という独自のアクション手法なのだそうだけど、マトリックスのアクションシーンを思い出してしまうほどに似ている。マトリックスは1999年、本作は2003年の公開と、本作の方が新しい。なのに独自のアクションと言えるのだろうか。細かく見れば違うのだろうけど、一般素人が見て同じと思う程度であれば、それはもう独自とはいえないような気がする。

にもかかわらず、確かに、アクションシーンは見ごたえはあった。

葉室 麟 いのちなりけり

いのちなりけり (文春文庫)いのちなりけり (文春文庫)
(2011/02/10)
葉室 麟

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私には少々情報が多すぎました。

水戸光圀のその家老藤井紋太夫の殺害、徳川綱吉との確執、鍋島藩と側用人柳沢保明。加えて島原の乱に起因する復讐譚等々盛りだくさんの内容です。メインである筈の主人公雨宮蔵人とその妻咲弥の物語は、他の本のようには語られません。

隆慶一郎であればもう少し整理されて主人公に焦点が合うのかもしれない、などと勝手なことを思いながら読んでいました。ただ、隆慶一郎ならば伝奇的な味付けがなされていたかもしれず、また、主人公についてあまり語られないからこそ、「忍ばれる恋」が印象的になったのかもしれませんが。

とはいえ、上記の点が気にかかることを除けば小説として面白いのは間違いありません。読んだ新刊書の帯に「骨太の時代小説にして清冽な恋愛小説」とありました。想う人のためには死をも厭わないというその設定自体は珍しくも無いのですが、武士の在り方等も絡み、読後は密やかな感動が残ります

葉室麟という作家の力量が十分に示されているのではないでしょうか。

「葉隠」に「恋」に関する記述があると知ったのは佐伯泰英の「酔いどれ小籐次留書シリーズ」の中の「寄残花恋(のこりのはなよするこい)」を読んだときです。

本書では「忍ぶ恋こそ至極の恋と存じ候」という「葉隠」の中の一文を紹介してありますが、この「寄残花恋」という本の中には「葉隠」という言葉のもととなった西行法師の「葉隠れに散りとどまれる花のみぞ忍びし人に逢ふ心地する」 という句が紹介してありました。

それともう一句「恋ひ死なむ後の煙にそれと知れ終にもらさぬ中の思ひは」 という句もありました。真の恋はひっそりと秘めたままに恋い死にするものだ、主従の交わりもそのようなものだという意味だそうです。 「葉隠」という書物の意外な一面でした。

葉室 麟 蜩の記

蜩ノ記蜩ノ記
(2011/10/26)
葉室 麟

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この作品も十分な読み応えを感じる作品でした。

主人公である戸田秋谷の達観とも言うべき心根や、その息子郁太郎の武士の子としての心、そして本作品の語り手ともいうべき立場の檀野庄三郎の、秋谷や秋谷の娘薫への想い等々、登場人物それぞれの調和が読んでいて心地良く感じられました。

全体的にも、藩の過去の秘密に迫る家譜をめぐる謎ときの様相もあり、物語として読み手の興味をかきたてるもので、物語世界に没頭して読み進めることが出来ました。

更には例えば田舎の情景描写にしても読み手の心をを穏やかにするものですし、秋谷の家を「家の中に清々しい気が満ちている・・・」という言葉で表わし、秋谷やその家族がどのような人柄あるのかまでこの一言で表現しているなど、読み進め易い文章でもありました。

特に秋谷の「若かったころの自分をいとおしむ思い・・・」という台詞には心を打た、このような表現もあるのかと、ただただ感じ入るばかりでした。

第146回直木賞受賞作品です。

小川 一水 天冥の標6 宿怨 PART 2

天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)
(2012/08/23)
小川 一水

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太陽系世界の均一化をめざすロイズ非分極保険社団に対して、“救世群”副議長ロサリオ・クルメーロは、同胞に硬殻化を施して強硬路線を推し進める。その背後には秘かに太陽系を訪れていた異星人“穏健な者”の強大なテクノロジーの恩恵があった。いっぽうセレス・シティの少年アイネイアは、人類初の恒星船ジニ号の乗組員に選ばれ、3年後の出航を前に訓練の日々を送っていたが―すべての因果が悲劇を生む第6巻第2弾。(AMAZON内容紹介)

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やっと読み終えた。まだ後一冊あるけど。

そう思うくらい、少々読むのに努力が要ります。物語の構成が頭の中で整理できないので、きっちりと読み込まなくては筋を追えません。

確かにスケールも大きく、如何にもSFらしいSFなのだけれど、若いころ読んだSFの胸躍る興奮は見当たりません。

文章も、内容も少々難しいのかもしれません。設定は非常に興味をそそられるのでもう少し読み易くしてもらえたらと思います。

でも、そうしたらこの作者の個性も死んでしまうのかも。

葉室 麟 銀漢の賦

銀漢の賦 (文春文庫)銀漢の賦 (文春文庫)
(2010/02/10)
葉室 麟

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先日読んだ「川あかり」に比べると、こちらの方が数段練れた作品だと思う。

主人公は日下部源五、松浦将監という二人武士、それに百姓である十蔵も加えて良さそうだ。

この3人の現在と少年期、青年期とが交互に描かれる。読み進むにつれ3人の現況とそこに至るまでの秘密が明かされていくのだけど、その構成が読み手を引きつける。

この作品を読む限りでは、前に藤沢周平の余韻は無いと書いたが、逆に藤沢周平のタッチを思い出してしまった。この作品の方が川あかりよりも前に書かれた筈なのだけれど、こちらが落ち着いて感じられるのは私だけだろうか。

登場人物の心理も、情景の描写も丁寧に描かれており、久しぶりに本格的な時代小説作家の登場という気がする。作者は私と同世代らしい。その博識さ、描写力の優しさ見事さ、頭が下がるばかりです。

楽しみが増えた。また次々とこの作家の作品を読むことになるのは目に見えている。

東 直己 鈴蘭

鈴蘭 (ハルキ文庫 あ 10-18)鈴蘭 (ハルキ文庫 あ 10-18)
(2013/08/10)
東 直己

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東直己の探偵畝原シリーズの現時点までの最新刊まで読み通したことになる。

この作家は、このシリーズでは、というよりススキノ探偵シリーズもそうだが、現実におきた事件若しくは出来事をテーマに作品を仕上げているようだ。本作もごみ屋敷と貧困ビジネスという二つの問題を大きな縦糸として練り上げられている。

ススキノ探偵シリーズに比べてトーンが重い本シリーズだが、相変わらず登場人物の個性が際立っていて物語として面白い。

先日読んだ大御所チャンドラーの文章と比べても非常に読み易い。描写も偏執的と言われかねない緻密さで情景を描写するチャンドラーに対し、こちらはただ単に映像を切り取りそこに置いただけで、後は読み手の想像力にまかせているような感じがする。

どちらも、暴力に対する耐性はかなり強いものがあるようで、畝原探偵に至っては招待状無しにやくざのパーティーにも何の躊躇も無く参加できるという、恐怖感が欠落しているとしか考えられない程に度胸もありそうだ。そこらの現実社会との乖離を感じないででもない。

しかし、相変わらず面白いシリーズではある。

水道橋博士 藝人春秋

藝人春秋藝人春秋
(2012/12/06)
水道橋博士

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お笑いが好きで、見るテレビ番組も芸人の出るバラエティーが大半の私です。

本当は吉本の笑いが好きなのだけれど、北野武のハチャメチャぶりもまた好物です。お笑いウルトラクイズなど、ホントに馬鹿だなぁと言いながら見ていたものです。でも、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」はついていけませんでした。

初期の電波少年と同じく、私の中でのお笑いと下品との限界を超えていたのです。

本書の著者水道橋博士はネタは多分一度くらい見た気もするけど覚えていません。多分見ていないのでしょう。

その水道橋博士のルポです。対象が面白そうで読んでみたのだけれど、拾いものでした。この頃テレビで見る水道橋博士は馬鹿をやっている姿ではなく、本音を語る場面を多々見る機会があったので頭のいい人だとは思っていたのだけれど、これほどまでに文章力もある人だとは思ってもみませんでした。対象への切り口が非常に冷静で自分らの知らない姿を見せてくれているように思えました。

期待して読んだ「たくらむ技術」とは異なり、なかなかに面白く読めました。

レイモンド・チャンドラー ロング・グッドバイ

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
(2010/09/09)
レイモンド・チャンドラー

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村上春樹の新訳ということで読んでみました。しかし、20代に一度この本を読んでいる筈なのだけれど、内容を殆ど覚えていないことにまず驚きました。

確かに、訳者が清水俊二氏から村上春樹氏に変わってはいるけれどそんなに内容まで変わる筈もないでしょう。それだけ記憶力が衰えたのか、そもそも私の記憶力が不確かなのか。

なにはともあれ、やはり面白い小説ではあります。ただ、昔は感じなかったであろうことが、情景描写が緻密でそこまで必要かと思った事、登場人物の台詞回しが少々冗長に感じられること、主人公のフィリップ・マーロウの台詞にしても同様で、一段としゃべりすぎているのではないかと感じたこと等です。

しかし、これらの不満こそ逆にチャンドラーの特徴と言えるのかもしれません。極端にまで心理描写を排し、客観的に記すことでリアリティーを追求する、その文体こそハードボイルドと称される手法の特徴らしいのですから。

20代に読んだときはそのようなことは思わずに、ハンフリー・ボガードのようなイメージでマーロウを読み、惹かれた筈なのです。近年は軽く楽しく読めるいわゆる軽い小説を中心に読んでいたので、この本のように濃密に書き込まれていると疲れるのかもしれません。

ただ、村上春樹の「訳者あとがき」の「翻訳について」の項目の中に、『「できることなら完全な翻訳を読みたい」と考えるか、あるいは「多少削ってあっても愉しく読めればいい」と考えるかは、ひとえに個々の読者の選択にまかされている。』という文章があるところをみると、私の感想もあながち外れてはいないのかもしれません。

この作品を読み終えて思うことはやはり名作と言われるものはそれだけの価値がある、ということです。二転三転する筋立てと、主人公の台詞回しには結局引き込まれてしまうのです。

この本はじっくりと一行一行を味わいながら読み込むということが要求されるのでしょう。 そうすれば更にこの本の魅力は増すのではないでしょうか。村上春樹氏によれば、私が冗長に感じたと上記に記した点も、それもまた作品の雰囲気作りに貢献しているのであり、一見無関係そうに見えてもその個所を読むのがまた楽しいそうなのですから。

葉室 麟 川あかり

川あかり川あかり
(2011/01/19)
葉室 麟

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正統派の時代小説です。

藩で一番の臆病者とされる主人公が、専横を極める藩の重鎮への刺客として選ばれる。川止めに会い相手を待つ間、うさんくさい同宿の百姓や旅人達の話を聞くうちに自らの使命を明かしてしまう。そして、川止めが開け、狙いとする相手が現れた。

臆病で何の取り柄も無い若者が主人公という設定は実にありがちな設定で、読んでいくうちにあらすじが何となく見えてくるほどです。しかし、それでもあまり不快感を感じずに最後まで読み通してしまいました。

読んでいる途中は、どちらかといえば、物語の面白さというよりも、この作者はどのように決着をつけるのだろうか、という気持ちの方が強かったように思います。残念ながら藤沢周平のような余韻はありませんでした。 山本周五郎の深川安楽亭のような一場面ものかと思ったけど、そんな感動も感じられませんでした。

ただ、ベタではあっても何となくの爽やかさが残ったのは心地よく感じたものです。

直木賞受賞者ということです。力量が無い筈は無く、このほかもう少し読み続けてみようと思います。

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siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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