FC2ブログ

あさの あつこ 木練柿


熊本地震から三カ月が経ちます。やっと余震も落ち着いてきたかと思えば今度は雨です。屋根の応急処置も劣化し、雨漏りを始めました。

お墓や屋根など、見積もりができてくるのは良いのですが、その値段の高さに目がくらみそうです。相手も商売なのである程度は仕方のないこととは思うのですが、それにしても、と思ってしまいます。

愚痴もいい加減にして本書です。「弥勒」シリーズの第三弾で、シリーズ初となる四作の連作短編集です。個々の物語がこのシリーズに登場する人物を絡ませながら、その人物の背景も垣間見せる物語となっています。

「楓葉の客」

堅気のなりをしてはいるが、その実相当な修羅場を経ていそうな男が殺された。男の袖に残されていた紙くずには「おみつ」との文字が。一方、清之介の遠野屋では、若い娘の万引き騒ぎが起きていた。

遠野屋にはこのおみつの他にも、清之介の家族である義母のおしのや一人娘のおこま、それに手代の信三などの登場人物がいます。清之介の今を支えるこれらの人たちの横顔を語ることで、清之介の人物象を別な側面から描き出しています。

「海石榴の道」

遠野屋で異種の商人たちが集まり新たな商売の道を模索していた集まりは、黒田屋の起こした事件で頓挫していた。なんとかその集まりを再開しようとしていた矢先、今度は帯問屋の三郷屋の吉治が殺しの嫌疑を負うことになってしまうのだった。

「海石榴」は「つばき」と読み、「椿」を意味します。椿の果実が「石榴(ザクロ)」に似ていたところからきているとの説もあるそうです。

前作『夜叉桜』で問題を起こした黒田屋でしたが、今度はその仲間である三郷屋がトラブルに巻き込まれてしまいます。そこで、遠野屋が信次郎に助けを頼むのです。

「宵に咲く花」

伊佐治の息子太助の嫁であるおけいは、何故か子供のころから白い夕顔の花が、気が遠くなる程に怖かった。そんなおけいが買い物の帰途、近道して神社の境内を通りかかったとき、ごろつきに襲われ清之介に助けられる。そのごろつきの内の一人は横網町にある大店の呉服屋である井月屋の息子だと名乗っていた。

このシリーズでは特に重要な役割を担っている、信次郎から手札をもらっている岡っ引きの伊佐治。その伊佐治の家族の物語が、息子太助の嫁のおけいにまつわる逸話を借りて語られます。伊佐治とその嫁おふじ、息子太助とその嫁おけいの心の通い合いが心地よい読後感でした。

「木練柿」

女中頭のおみつが血だらけになり帰ってきた。遠野屋の一人娘おこまがかどわかされたという。早速に連絡を受けた信次郎はお駒の行方を捜すのだった。

おこまの誘拐という事件の成り行きも見所ですが、この話しでは清之介とおりんのなれそめが語られます。清之介は何故に武士を捨てる決心をしたのか、清之介との婚儀に反対していた義母のおしのの過去と今など、遠野屋の家族の物語が情感豊かに語られている物語です。


本書は、信次郎や伊佐治、それに清之介を核としながらも、それ以外の登場人物に光を当てるという、シリーズものではよくあるパターンの作品です。しかしながら、本シリーズの面白さはそのままに持った短編集で、物語に厚みを加える作品集になっていると思います。

スポンサーサイト



プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR