田牧 大和 鯖猫(さばねこ)長屋ふしぎ草紙





なんとも奇妙な小説でした。

主人公は売れない絵師の拾楽なのでしょうが、一番存在感があるのは、拾楽と共に暮らしている三毛猫というのです。



「白、茶、鯖縞柄の雄猫で、三毛の雄はごく珍しい。大人の猫にしてはほんの少し小柄だが、すらりとした身体にしゅっと凛々しい顔立ち、毛並みもつややかで、青味がかった鯖縞模様は飛びきり鮮やか、殿様姫様の飼い猫もかくやというほどの美猫(いろおとこ)である。」と描写されるこの猫が、長屋で一番偉いのだそうです。

そもそもこの長屋はもとは差配をしている老人の名をとって「磯兵衛長屋」と呼ばれていたものでしたが、猫の指図に従ったところ命が助かった者が出たこともあって、猫が一番偉いのであり、ついには「鯖猫長屋」と呼ばれるようになったものらしいのです。

この猫、鯖縞模様であるところから名をサバと名付けられたのだそうで、白いご飯に鰹節を乗せ、醤油をひとたらしした食事をいいつけ、その他に、何かにつけ指図をする、というように拾楽には思えるのです。



この拾楽は、何か秘密を抱えていそうです。

その隠された事情を各章の冒頭に設けられた「問はず語り」と題された一頁にも満たない短文で、「其の一 猫描き拾楽」では義賊「黒ひょっとこ」の独白が、「其の二 開運うちわ」では「お智」についてというように少しずつ紹介されていきます。

田牧大和氏の小説では『からくりシリーズ』でも猫が存在感を持って描かれていました。本書の場合、更に猫の存在感が大きくなり、ある種狂言回し的な位置にいるのです。

このサバを中心として、この長屋を取り仕切る拾楽の隣に住む大工の与六の女房おてるをはじめとして、拾楽に想いを寄せるおはまとその兄の貫八兄妹、料理人の利助とその女房おきねその他の住人ら、そして新しく越してきたお智という娘に住まいは別だがこの長屋の差配である磯兵衛といった面々が、この長屋に降りかかる様々な事件を乗り越えていくのです。

なんとも毒気が無さ過ぎて、私の好みからするとはずれはするのですが、そこは田牧大和という作者のうまさでしょうか。水準以上の面白さは持っていると思います。

一応、シリーズとして追いかけて見ようという気にはなる小説でした。
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