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西本 雄治 やっとうの神と新米剣客




第一回招き猫文庫時代小説新人賞・大賞を受賞した、ファンタジックな長編時代小説です。



京都での武者修行を終え六年ぶりに江戸に帰ってきた瀬川俊一郎は、壊されそうになっていた鈴見神社を救ったところ、五つか、六つくらいの、自分は神だという“鈴”と名乗る女の子につきまとわれてしまう。

鈴の扱いに困った俊一郎は、幼馴染みで清水という料亭の娘の“いち”に鈴のことを頼みこむが、いちは俊一郎に、稲元香純という女剣士を紹介する。香純は吉田道場の高弟で、御老中神谷家匡の御前試合に出場するのだという。

この御前試合には、小さな社を大きな神社に合祀する合祀改革に取り組んでいる武内源太郎という男と香純との婚約がかかっているとうのだった。

そうした中、香純が暴漢に襲われ、代わりに俊一郎が御前試合に出場することになる。御前試合で俊一郎に敗れた武内源太郎のそばには、威風と呼ばれるあの巨漢がいた。



「招き猫文庫時代小説新人賞」とは、白泉社が新たに設けたキャラクター時代小説のと竜門だそうです。白泉社という会社自体が「花とゆめ」「LaLa」という少女漫画雑誌を主に扱う出版社であるからなのか、この新人賞で大賞になった本書も実にファンタジックな物語でした。

ただ、ファンタジックであること自体はいいのでが、ストーリーが時代小説ではなかったのは残念でした。それは、個人的な好みの問題になるのですが、時代小説としての時代的な背景の印象が殆どないことからくるのだと思われます。

時代小説の面白さは、現代とは異なる価値観、物質的な環境の中で暮らす市井の人々や、侍の姿を描くことで現代小説では描き得ない事柄を物語ることにあると思っているのですが、本書にはその時代の香りが殆ど香ってこないのです。

単純に、コミカルな時代小説の衣をまとったファンタジーとして、それなりに面白く読んだ作品であることは否定しません。

無頼漢に壊されそうになっていた社を救った主人公に憑いて、やっとうの神として何とか助けていこうとする姿や、その神様もまだやっとうの神としては新人に近いこと、人の信仰がなければ神様も消えて行かざるを得ないことなど、話自体は面白そうなのです。

それに敵役もラスボスとして神自身が俊一郎の前に立ちふさがること、など、軽く読み飛ばしてしまう作品として、その限りにおいて面白くはありました。

でも、俊一郎の父親や、幼なじみのいちの描き方など、なんとも半端な存在であり、物語の中での存在理由が何なのか、疑問に思ってしまいます。

やはり、時代小説として今後も読むかと問われれば、否定的な言葉しか出てこないと思われます。
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本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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