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梶 よう子 一朝の夢

一朝の夢 (文春文庫)一朝の夢 (文春文庫)
(2011/10/07)
梶 よう子

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「両組御姓名掛りという奉行所員の名簿作成役」同心である中根興三郎は、図体は大きいものの気性は優しく、朝顔の栽培にのみ熱中している男だった。幕末の江戸では政情不安な中朝顔の栽培が盛んで大名まで乗り出すほどだったが、元北町奉行鍋島直孝の屋敷前で絶命していた武家の死体が消えたり、辻斬り事件まで起きていた。そうした中、興三郎は朝顔栽培を通じて朝顔界の重鎮である鍋島直孝の屋敷で宗観という人物と出会い、時代のうねりの中に引き込まれることとなるのだった。

前に読んだ「柿のへた」でもそうでしたが、植物を中心に話が展開するためなのか、文章が優しいです。決して派手さはありません。でも、淡々と語られる朝顔に対する主人公の思い入れや、蘊蓄は常に朝顔に対する愛情にあふれています。その愛情が他の人にも伝わり、周りの人をもその愛情で包もうとするようです。

歴史上の人物が少しだけ顔を見せたり、ミステリーの要素も少しだけですがあったりと、内容もはそれなりに盛りだくさんではあります。ストーリーも結構入り組んでいます。敵役が若干型にはまっている感じがしないではありませんが、それも瑕瑾にすぎません。何よりも朝顔についての描写が見事で飽きさせません。

と少々羅列気味になりましたが、とにかく軽く読み飛ばせる物語ではないと言いたかったのです。

決して明るい物語ではありません。でも、派手さは無いけど、読んでいてゆっくりとした時間が流れる、そうした心地よい時間を持てる一冊だと思います。

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