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青山 文平 白樫の樹の下で

白樫の樹の下で (文春文庫)白樫の樹の下で (文春文庫)
(2013/12/04)
青山 文平

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小普請組の御家人村上登は仁志兵輔、青木昇平と共に竹刀剣術ではなく昔ながらの型稽古を行う佐和山道場で剣を学んでいた。「大膾(おおなます)」と呼ばれる辻斬りが江戸の町を騒がせていたその頃、村上登は町人でありながらかなりの剣の腕を持つ巳乃介から一振りの刀を預かることとなるのだった。

時は江戸時代も中期、侍が侍たり得ることが困難の時代、なおも侍であろうとした三人の若者の物語です。「白樫の樹の下で」というタイトルは佐和山道場が白樫の樹の下でにあるところからきています。

とにかく硬質な文章でありながら、濃密な空気感を持った文章です。葉室麟という直木賞作家の文章も簡潔で格調の高い文章だと思いましたが、この作家の文章の透明感は凄いです。

「人を斬る」というそのことについての懊悩が、叩けば音がするような文章で描写されています。勿論読者は剣のことなど何も知りませんし、当然「斬る」という感覚も知らないのですが、あたかも若者の懊悩が感覚として理解できたかのような感じに打たれます。

また、村上登の前に横たわる想い人の描写は、そこに「白麻の帷子(かたびら)を着けた佳絵」という人が横たわる場面を切り取ったかのようで、その臨場感、村上登の心理描写には驚きました。これまで作家と呼ばれる人たちの文章の凄さには何度か脱帽させられましたが、この青山文平という人の文章も見事としか言いようがありません。

更に驚かされることに、青山文平という人は私と殆ど同世代ということもさることながら、20年ほど前に第18回の中央公論新人賞をとったことがあるけれども時代小説は本作品が初めてということなのです。時代小説の新たな書き手として期待されているという言葉も当然のことだと感じました。

本作品の物語としての面白さは勿論のこと、「詩的」な文章とどなたか書いておられましたが、日本語の美しさ、表現力の豊かさを思い知らされた一冊でもありました。

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