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西條 奈加 涅槃の雪

涅槃の雪涅槃の雪
(2011/09/17)
西條奈加

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江戸時代末期の12代将軍徳川家慶の治世、老中水野忠邦の為したいわゆる天保の改革を、北町奉行の遠山左衛門尉景元の下の高安門佑という吟味方与力の眼を通してみた江戸の町の物語と言って良さそうです。

あることから高安門佑は自分の家でお卯乃という元女郎と同居することになった。天保の改革は江戸の町の活気を奪い、女浄瑠璃のような市民のささやかな喜びでさえも許さないものだった。遠山景元らは改革の手を緩めるように南町奉行矢部定謙らと共に進言するも受け入れられず、かえって南町奉行であった矢部定謙は失脚させられ、その後に妖怪と呼ばれた鳥居耀蔵が就く。この鳥居耀蔵の取り締まりは苛烈なものであり、高安門佑は遠山景元のもと何も手の打ちようが無いことに暗澹とした毎日を送っていたのだが、その救いがお卯乃の存在だった。

こう纏めると天保の改革という暗い時代を生き抜く一与力といった印象になるのですが、主人公は見た目は怖いが心根の優しい一本気の男という設定であり、外回りの時には何時も付き従っている一平の存在もあり、時にはユーモラスに物語は進みます。

とにかく本書は天保の改革それ自体を詳しく述べてあります。遠山景元と水野忠邦、鳥居耀蔵との対立の図式の中、株仲間の解散、寄席の制限、芝居小屋の移転といった数々の施策とそれによる市井の暮らしへの影響を描き、少々変わった物語になっています。

私が読んだ範囲では鳥居耀蔵をこれほど書き込んでいる小説を知りません。主人公との関わりの中、妖怪鳥居耀蔵を人間鳥居耀蔵として描く部分もあり、なかなかに魅力的な物語として仕上がっています。

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