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浅田 次郎 壬生義士伝

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数年前に一度読みかけたのですが、何故か読まなかった本です。それを先日読んだ「一刀斎夢録」のあまりの面白さにまた手に取りました。大ベストセラーなので殆どの人はもう読んでいる本でしょうし、何を今されと言われそうです。

鳥羽伏見の戦の大勢が決した後、京の人からは「人斬り貫一」と恐れられた吉村貫一郎が満身創痍の姿で大坂にある南部藩蔵屋敷にたどり着いた。そこにいた吉村貫一郎の幼馴染でもあり組頭でもある大野次郎左衛門は即座に「腹を切れ」と命じるのだった。

と、始まるのですが、この後の物語の進行は吉村貫一郎の独白で自らの過去を振り返ったり、斎藤一や稗田利八(池田七三郎)といった吉村貫一郎を知る新撰組の生き残りやその他の人達が、訪ねていった人物に吉村貫一郎の人物像について語り聞かせる形態をとっています。

合間に挟まれる吉村貫一郎本人の独白もさることながら、語り手が吉村貫一郎の息子や、切腹を命じた大野次郎左衛門の息子、大野の中間だった佐助等、より身近で彼を知る者の語りになっていき、更に直接本人の「死」に関わる記述になるので、より感情が揺すられます。

小説を読んで涙するということが今までにも無いわけではありません。ありませんが、この本はあまりに涙腺を刺激するポイントを突いてくるので、逆にあざといと思う人が出てくるのではないかと心配するほどです。浅田次郎という作家がこのように語りが上手いとは、今まで読まなかったことが悔やまれます。

新撰組の物語のようでいて、吉村貫一郎という人物、ひいては「侍」についてのありようについての物語になっていると感じます。読み易い文章で、心の奥に響く浅田次郎の文章は職人技としか言いようがありません。

ところで、語り手の一人に新撰組生き残りの居酒屋主人がいるのですが、このモデルが分かりません。全くの創作上の人物かもしれませんが、ちょっとネットを見た限りでは分かりませんでした。どうも漫画版では明記してあるらしいのですが。

また、各語り手に聞き取りしている人物も明記してはありません。読み進むにつれ、前に子母澤寛が新撰組の生き残りの稗田利八等に取材し「新選組始末記」を著したという記述を思い出し、浅田次郎が誰を念頭に置いていたかとは関係なく、この人物は子母澤寛だと思えるようになってきました。

家族のありようについて思い知らされる一冊でもありました。あとには「輪違屋糸里」も控えています。楽しみに読もうと思います。

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