海堂 尊 スリジエセンター1991

スリジエセンター1991スリジエセンター1991
(2012/10/25)
海堂 尊

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個人的には今まで読んだこの作家の作品の中でベスト3に入る面白さでした。

本書に入り、天城と高階講師との対立は激しさを増していく。公開手術のスタッフの入れ替えなどの障害も乗り越え進む天城。だが佐伯教授、黒崎助教授、高階講師夫々の思惑はお互いの思わぬ方向へ進む。速水という爆弾新入生がその均衡を掻き乱し、世良はその渦の中に巻き込まれていくのだった。

筋立てが面白く引き込まれました。前作では、世界的な名声を持つ天城という医師が、こんな一地方都市の大学病院に縛られ喘がなければならないなど、少々無理があるのではないか、など思わないことも無かったのですが、そういうことを思う暇も無いほどに引き込まれたのです。

新人が入ってきて世良がその世話をすることになりますが、その中に若かりし頃のジェネラルルージュ速水がいて周りを翻弄します。また、病院長選挙も絡んで物語は意外な方向へと進んでいくのです。そんな中で天城の公開手術が行われるのですが、そこでの桜宮市民病院の鏡や高階、天城の行動の描写は息をもつかせません。

物語としての面白さが凝縮された作品として十分に仕上がっていると思いました。勿論、例えば速水の役割が結局は顔見世に過ぎないようにも思えるなど、小さく見ていけば色々と突っ込みどころはあるのでしょうが、そんなことはこの物語で何の問題にもなっていません。単純に読者を引き込む面白さがあった、というだけです。

今回、世良は一段と語り役に徹していて、代わりに思いがけない結末の幕引きという役割を負わされています。この結末にはかなり異論もあるかと思いながら読みました。是非実際に読んでどう思うかを考えて欲しいものです。

なお、この作品をより面白く読むためには、先に「ブラックペアン1988」「ブレイズメス1990」は勿論読んでもらいたいのです。そして、作品の関係で言えばこの作品の前の時代の話として若き高階権太と速水晃一を描いた「ひかりの剣」が、本作の二十年後として「ジェネラル・ルージュの凱旋」では高階権太、黒崎誠一郎、看護師の藤原真琴と花房美和、そして速水晃一が描かれていて、「極北クレイマー」と「極北ラプソディ」で更にその後の世良雅志、速水晃一、花房 美和が描かれています。出版年順、作品内の時系列順と、どの順番で読むかは夫々でしょうが、出版年順に読み、この人はあの作品に出ていた、などと楽しむのも一興です。

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No title

チーム罰スタの栄光の作家ですよね~本は読んでないけど・・・

ネットで検索すると、海堂尊の作品をどの順番で読むと楽しめるか?という項目が出てくるくらいなので、登場人物の推移が面白いのでしょうね~

私の場合、紹介されるほとんどの作品を読んでないのですが・・・
気になる作者や本を調べて行くと、面白い事に気付いたりして楽しいですv-407

No title

チームバチスタの栄光が罰スタになってたね!どうもe-449

Re: No title

> チームバチスタの栄光が罰スタになってたね!どうもe-449

ま、毎度のことで。

それはさておき、この作家の作品は全体が一つの世界を構成していて、一つの作品のあるエピソードを別な作品で詳しい内容を展開してあったりと、最初から伏線として計算の上で書いているのかは不明ですが、そうした構成も面白い点の一つです。
勿論作品自体が面白いことを前提にしての話ですが。

高田 郁

名前に特別な思いを感じた時があります。
それ以来、言葉の意味は引っ込めています。

 嫁さんから お父さんはおしゃべりだ とよく言われるようになりました。そうだと感じます。

 さらに、嫁さんは 無口な人が良くて結婚相手に選んだのにっと冗談とも本気とも思える言葉で私のおしゃべりをけん制します。

 あのころは今よりももっと教養がなかったので、話す材料が見つからなくてしゃべれない、それが無口に見えたのです。

 時代小説に出てくる主人公の多くは無口のようです。あまり饒舌な人は少ないようです。

 高田 郁= かおると読めずに何度となく本の裏表紙にあるTakadaKaoruを確認しています。

 私は食べることに意地汚い面もあります、嫁さんが留守でも私は簡単な食べ物を作ります。

 みをつくし料理帖 で作られる江戸の食べ物に触手が頭の食欲を刺激します。

 私の名前は「一期一会」としました。

Re: 高田 郁

コメント有難うございます。

楽しそう奥様ですね。
私はどちらかというとあまり喋らない方でしょうか。
ただひたすら本を読んでいます。嫁さんはもう慣れたことでしょう。

食べ物に関してもあまり関心がないのです。
ですので、「みをつくし料理帖」は別として、場面の中に食事のシーンがあってもあまり覚えていません。
でも、確か今井絵美子の「立場茶屋おりきシリーズ」には料理に結構重きを置いてあったような・・・。
はっきりせず済みません。

あと、料理と言えば池波正太郎は有名ですね。でも私は小説の中での場面をあまり覚えてはいません。
エッセイのことを言うのでしょうか。これまた曖昧な情報で申し訳ありません。

一期一会さん、この出会いを大切にして今後も本サイトをよろしくお願いします。

このサイトについて

 タイトルの中に「このサイトについて」を
今、拝見しました。
最初から「このサイトについて」に入り込んだのならば
プロフィールとして管理人さんsiroさんを知ることが出来ましたね。
失礼をいたしました。

 新宿でアルバイトをされていたのですね。そう解釈していいのですか、今は熊本県在住。難病と付き合いながら小説等を紹介されている。
有難うございます。

 私の本を読む速度は遅いようです。
斜め読みという読み方があるようですが、そのように器用なことはできません。

 観光バスの仕事をしていると、バスの中に本を持ち込んでお客様の観光中の待ち時間に本を読むことが出来ました。
12月10日の定年でそれは無くなりました。

 今、建築3dの勉強に追われて、本に対しての時間が少なくなっています。嫁さんは図書館からせっせと借りてどんどん読んでいるようです。小説より随筆が多いようですが。

 嫁さんと私は全く別人です、当たり前なのですが、食事の好みが違います。
ラジオの戦局も違います。私は朝一番に森本たけろうのTBSラジオから始まり、8:30に文化放送にかえます。

 嫁さんは朝からFMNHKです。
朝、重たいクラッシックやオペラがラジオから流れると一日の始まりはくるってきます。でも朝の放送権は私に譲ってくれるので夫婦仲のヒビは入りません。

 私はコーヒー派、嫁さんは紅茶を好みます。
でも、外出先では私と同じコーヒーを注文している場合が多いです。

 晩酌にビールは欠かせません、嫁さんは晩酌をしませんが赤ワインを買ってくると飲んでくれます。
720mlは一遍では飲みきれません、時間がたったワインは味が変わるといって飲んでくれません。

 私が残った赤ワインを飲むこととなります。一週間以内に飲むのならばさほどに味がかわるとは思えないのですが。
それを言うと、だからお父さんの舌は信用できないと云ってきます。
でも、それほどの事では夫婦間に溝は生じません。
 
 1階の南側にある部屋は私の使える部屋で、パソコンを置いています。

 2階の南側にある部屋は嫁さんの部屋でそこからFMNHKが流れている時も多いのです。
その部屋で嫁さんは主に読書をしているようです。

 3月11日の東北大震災では家がつぶれなくてよかったです。
安普請なので震度がもう一つ上がったならばたぶんつぶれていたと思います。

 すぐに地震保険に入りました。下の部屋はつぶれる危険があるのでそれからの余震では慌てて2階に駆け上がったものです。
今でも地震の揺れを感ずると身構えて2階に移動する準備をします。

 

Re: このサイトについて

> 失礼をいたしました。

いえいえ。
こちらこそ、もうご覧になったものと思い返事を差し上げていました。

>  新宿でアルバイトをされていたのですね。そう解釈していいのですか、今は熊本県在住。
難病と付き合いながら小説等を紹介されている。

そうです。
1970年初めから東京です。
新宿のラーメン屋でラーメンを作ってました。
もしかしたらあのころが一番楽しかったかも。

>  私の本を読む速度は遅いようです。

私はかなり早いと自負しています。

>  嫁さんは朝からFMNHKです。

うちもそうですね。
私は音楽も雑多なものをコンピュータに取り込んで仕事中に流しています。
60年代フォークから、ロック、jazz、クラシックまで本と同じく何でもありです。

>  3月11日の東北大震災では家がつぶれなくてよかったです。

東北にお住まいなのですか?
私は九州なので、震災は実感として分かっていません。
親戚はいますのでいろいろ大変だったと聞きました。

お大事に。

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