FC2ブログ

浅田 次郎 日輪の遺産

日輪の遺産 (徳間文庫)日輪の遺産 (徳間文庫)
(2000/04/07)
浅田 次郎

商品詳細を見る

マッカーサーの財宝をめぐる冒険活劇小説だと思っていたら、全く違う作品でした。財宝の探索ではなく、財宝の秘匿について語られる物語だったのです。

競馬場で知り合った老人の最後を看取ることになってしまった丹羽明人は、ボランティアの海老沢と共にその老人から渡された手帳の内容に驚きながらも、老人の大家だという大地主の金原と共に一夜を明かすこととなった。次第に手帳の内容について虚構とばかりも言えない事実の符合に気付いて行くのです。

終戦時、五人の日本軍の軍首脳から密命を受けた近衛師団の真柴司郎少佐と東部軍経理部の小泉重雄中尉は歴戦のつわものである望月庄造曹長と共に密命を実行すべく任務にまい進します。一方で、財宝の秘密について持て余しつつある金原を中心とする現代の三人の行動が、頁が進むにつれリンクしていきます。この流れはいかにも浅田次郎作品です。

しかし、本著作は著者のごく初期の作品のようで、残念ながら浅田次郎の作品にしては完成度が今一つと感じました。秘密を最小限のものとするために少女たちを使って目的物を秘匿しようとする真柴達ですが、夫々の場面での登場人物の行動が今一つ納得できない個所が少なからずあるのです。

同様の手法で語られる本作品の七年後に書かれた「壬生義士伝」などは全くそうした印象を持たなかったし、文章にしても非常に美しい練られたものでした。だからこそ、その力量で本作品を書いてもらいたいと思ったのです。そうすれば、最終場面でのマッカーサーの行動にも疑問符をつけなくてもよかったでしょうし、一番最後に描写されている少女たちの行動についても、もっと感情移入出来る物語として仕上がっていると思うのです。

著者は「大勢の登場人物が使いこなせず、視点が不安定となり、ときにはあいまいにもなっている。センテンスの配分が悪く、文末の処理も稚拙である。」とがあとがきで書いておられます。「視点の曖昧さ」等のために物語として消化不足と感じるのでしょうか。改めて現在の浅田次郎の力量で書かれた本作品を読んでみたいと思いました。

勿論、以上は何も分からない素人読者の勝手な要望であることは承知しています。あとがきで、「いわゆる『若書き』である。」と書かれている作品に対しての、より完成度の高い物語として読みたかったという一読者の勝手な思いでもあります。

浅田次郎と同じ年に生まれた私にとっても、「戦争はわずか六年前の現実でありながら、遥かな歴史であった」のです。特に感慨深く読ませてもらいました。

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR