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笹本 稜平 還るべき場所

還るべき場所 (文春文庫)還るべき場所 (文春文庫)
(2011/06/10)
笹本 稜平

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山岳小説としては勿論、サスペンス小説としても第一級の面白さでした。この手の小説としては久しぶりに面白い物語に出会いました。

矢代翔平は恋人でもあるパートナー栗本聖美を世界第2の高峰、ヒマラヤのK2での事故で失ってしまう。その事故で聖美自らザイルを切断したのではないかという疑惑を払拭できないまま、翔平は山に近づけないでいた。四年後、やはり山仲間の板倉亮太の会社の登山ツアーのガイドとして再びK2に登ることとなった。

文庫本で620頁程の長さがあります。途中までは、若干冗長に感じるところもあったのですが、いざヒマラヤに登る第三章あたりからは本を置くことが難しく感じる程に入り込んでしまいました。

山を舞台にした小説は、一般の小説とは異なり、常に自然からもたらされる「死」を根底に据えて語られるので緊張感があるのでしょう。その緊張感の中で人間ドラマが展開されるのですが、作者の描写力が無ければ緊張感も表現できるものではないし、読者の共感を得られるものではないことは勿論です。

笹本稜平という作家はその緊張感を持続させながらも山という特別な舞台で更に特殊な状況を作り出し、一段と高度にサスペンスフルな物語を仕上げているのです。

加えて、山に登る、そのことについての財界の大物である神津とその秘書竹原との会話等に見られるように、山に登ることについての答えを導き出そうとしています。答えなどないであろう設問なのですが、大いに納得させられるのは、その台詞を吐くにふさわしい人物設定のためなのかもしれません。

「春を背負って」で見せた山小屋を舞台とする山の物語とはまた違った、よりシビアな八千メートル級の山の物語は新たな魅力がありました。この作家の他の山岳小説の「天空の回廊」は高所での諜報戦がらみの冒険小説のようだし、「未踏峰」もエベレストを舞台にした魅力あふれるドラマが展開されるようです。早速読むことにしたいと思います。

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8000m級の山

 タレントイモトさんが挑戦させられるはずのエベレスト企画が途中取りやめ。
けがをしないで戻ってほしいとの思いもあったのでひとまずホッとしています。

 siroさんの思入れが感じられるこの本、読んでみたいです。
山は上ることはないけれども、天童荒太の「永遠の子」に出てくる四国の石鎚山に興味を持っています。

 いつか登ってみたいと思っています。

Re: 8000m級の山

>  タレントイモトさんが挑戦させられるはずのエベレスト企画が途中取りやめ。
> けがをしないで戻ってほしいとの思いもあったのでひとまずホッとしています。

そうですね。
私もあの番組は見ています。

>  siroさんの思入れが感じられるこの本、読んでみたいです。

面白いですよ。

> 山は上ることはないけれども、天童荒太の「永遠の子」に出てくる四国の石鎚山に興味を持っています。
>
>  いつか登ってみたいと思っています。

山登りも良いですね。
私も何時か登れたらと思います。
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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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