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浅田 次郎 天切り松 闇がたりシリーズ

闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)
(2002/06)
浅田 次郎

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かつて夜盗の「天切り松」と呼ばれた村田松蔵は、「闇がたり」という夜盗の声音を使って昔語りを始める。その内容は、帝都に名を馳せた義賊「目細の安吉」一家の物語だった。

頭(かしら)である「目細の安吉」を始め、「寅弥(説教寅)」「おこん(振袖おこん)」「英治(黄不動の英治)」「常次郎(書生常)」という安吉一家の面々の物語を、村田松蔵(天切り松)がある時は留置場でそこに居る盗人相手に、ある時は署長室で所長相手にと昔語りをするのです。

この語りが夜盗の声音である「闇がたり」で語られます。

シリーズの始めは大正の初めであり、大正ロマン漂う雰囲気の中で物語は展開されます。加えて、松蔵の江戸弁が実に粋で、小気味良く、作品の雰囲気を形作っています。

形式的には、各話のクライマックスになると、約一頁弱分ほどが改行無しで書かれています。この箇所が江戸弁でつつーっと一気にたたみ掛けられていて、心の奥底まで響いてくるのです。

例えば、一巻目の「白縫華魁」での白縫の道行、更に「衣紋坂から」の最後の松蔵の臓腑をえぐる独白など、この松蔵の江戸弁が一気に迫ってきます。ここはまた涙なくして読み進めません。

一巻目を読み終えたところで、浅田次郎という人の作品は講談であると思いました。山本周五郎の初期の作品は実に通俗的な講談噺なのですが、初期も終わり頃からの作品は、書いていることは同じであるのに読み手の心に訴えてくるものが全く異なる作品として仕上がっています。同じく、その語りの口調もあって、日本人の心情を揺すぶる講談話が浅田次郎作品の根っこだと思ったのです。

しかし、三巻目の文庫本あとがきを2012年に亡くなった十八代目中村勘三郎氏が書いておられました。そこには、その台詞回しが粋で見事なのは、浅田次郎本人が江戸っ子であり、黙阿弥に影響を受けていることにあるらしいとありました(このことは「読本」の中でのお二人の対談においても語られています)。勘三郎氏が言われるように、私が「講談」と思った台詞回しの上手さは歌舞伎の、それも河竹黙阿弥の台詞回しに通じているようです。先に述べた「白縫華魁」での白縫の道行など、まさに舞台上の大見得を切る場面に通じるのでしょう。

結局は「情」、とか「侠気(おとこぎ)」などという言葉で語られる日本人の心の根底にある情感に関わってくるような気がします。本書はそうした粋で固めた一級の人情話、と言いきって良いと思います。

2014年4月現在でこのシリーズは五巻目まで出ていて、他に「読本」が出ています。この「読本」は浅田次郎のインタビューや時代背景や言葉の解説などが詰まった、本シリーズの解説本と言ってもいい仕上がりになっています。別にシリーズを読めば無くても良い本ではありますが、読めばより楽しくなる、そんな本です。

息の長いシリーズです。「読本」の中で筆者は「ライフワーク」だと言っておられますので、この後も続いて行くでしょうし、続いて行くことを心から願います。


残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)
(2002/11)
浅田 次郎

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天切り松 闇がたり3 初湯千両 (集英社文庫)天切り松 闇がたり3 初湯千両 (集英社文庫)
(2005/06/17)
浅田 次郎

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天切り松闇がたり〈第4巻〉昭和侠盗伝 (集英社文庫)天切り松闇がたり〈第4巻〉昭和侠盗伝 (集英社文庫)
(2008/03/19)
浅田 次郎

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天切り松闇がたり 第五巻 ライムライト天切り松闇がたり 第五巻 ライムライト
(2014/01/24)
浅田 次郎

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天切り松読本 完全版 (集英社文庫)天切り松読本 完全版 (集英社文庫)
(2014/01/17)
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No title

そそられる本ですね~
読みたい!!
・・・・・
最近、本を読んでるのに先に進まなくて
全然読書らしい読書をしてません。

時には、本に陶酔したいものです。
浅田次郎は私の中では、今一番興味ある作家さんですよ!

Re: No title

> そそられる本ですね~
> 読みたい!!

このシリーズにはかなりはまっていて、図書館ではなく、我が家の本棚に揃えようかと思っています。

> 最近、本を読んでるのに先に進まなくて
> 全然読書らしい読書をしてません。

こちらは暇なもんで。

> 時には、本に陶酔したいものです。
> 浅田次郎は私の中では、今一番興味ある作家さんですよ!

同感です。

あさだ、ひるだ、よるだ

 4月が間もなくおしまい、寂しい気もします

塩見 三省(しおみ さんせい、1948年1月12日 - )は、日本の俳優。 ... おばけリンゴ(1982年、演劇集団円); 千年の夏(1987年、演劇集団円);

写真を見て分かりました、演劇集団円 も知っています。
昔新宿に小屋を持っていて、上演していました。
その小屋も区画整理で無くなりました。

 我が家のすぐ近くに熊本ナンバーを付けた車が置いてあります。
その家の子が玄関に立っていたので声をかけました。
天草から越して来たと云っています。

 三角にも何度か行ったことがあります、その時に出されたヒラメの刺身がおいしかった。

Re: あさだ、ひるだ、よるだ

> 塩見 三省(しおみ さんせい、1948年1月12日 - )は、日本の俳優。 ... おばけリンゴ(1982年、演劇集団円); 千年の夏(1987年、演劇集団円);
>
> 写真を見て分かりました、演劇集団円 も知っています。
> 昔新宿に小屋を持っていて、上演していました。
> その小屋も区画整理で無くなりました。

そうなんですね。
全く知りませんでした。

>  三角にも何度か行ったことがあります、その時に出されたヒラメの刺身がおいしかった。

三角にはもう何年も行ってませんね。
20年ほど前に仕事で天草に行った時が最後だと思います。
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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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