FC2ブログ

三浦 しをん 舟を編む

舟を編む舟を編む
(2011/09/17)
三浦 しをん

商品詳細を見る

やっと読むことが出来ました。予想通りの実に心地よい読後感をもたらしてくれる本でした。2012年の本屋大賞を受賞してかなり話題になった本であることは改めて言うまでも無いと思います。

先任者の荒木公平が定年で退職した後の辞書編集部を継ぐことになった馬締光也は、監修者である国語学者の松本朋佑と共に、荒木公平を顧問として中型の辞書「大渡海」の出版に向けて乗り出す。「大渡海」という辞書の完成を目指す、玄武書房辞書編集部を中心とした努力を、編集者馬締光也を主人公として描く物語です。

今まで「辞書」そのものについて、その作成過程について示されることはありませんでした。しかし、本書は簡単にではありますが辞書の作成過程を示し、その作業がいかに困難なものかを示してくれています。

本書で編纂されようとしている「大渡海」のような中型の辞書の見出し語で二十万語を越えるそうです。その見出しの大半に使用例や、用例の出典が載っていたりするのですから、チェックすべき事項は膨大な数になります。更には装丁を考え、また紙質へのこだわりがまた半端ではなく、と編集者の苦労の一端が読者の眼に示されます。

読者はその作業の困難さに眼をみはりつつ、物語の世界にどんどん引き込まれていくのです。

更に、馬締光也には林香具矢という女性が現れ、その成り行きも気になるところです。

うまいと思ったのは、登場人物の配置です。前半は馬締とは何もかの反対の性格の西岡正志という男が仕事上のパートナー的存在として配置され、途中でこの西岡の位置に岸辺みどりという女性が配置されるのです。補佐する人物の切り替えで年月の経過を示し、同時に読者の関心を新たなものとしているようです。

辞書監修の中心にいる松本朋佑という国語学者がいて、馬締を支える存在としての荒木公平がいて、馬締のもとで辞書の完成に向けて見事なチームワークを発揮するのです。

身近でいながらその成り立ちについてはあまり知らない「辞書」の編纂という作業が中心であり、従って「辞書」の世界への知的好奇心を満たしてくれるとともに、このチームの人間模様が面白く、爽やかな感動をもたらしてくれます。

さすがに2012年の本屋大賞を受賞した作品です。

なお、本書はどことなく夏川草介の『神様のカルテ』を思い出す作品でもありました。共に自分の仕事に真摯に取り組む主人公とそれを支える女性の存在が描かれています。そしてその女性は手に職を持ち、自分というものをきちんと持った女性なのです。

松田龍平主演で2013年に映画化もされたのですが、この両作品の女性を宮﨑あおいが演じています。

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

読んだんだ!👀

Re: タイトルなし

> 読んだんだ!👀

読んだよ!

三浦しおん

 臨時の仕事が入りました。
東北被災地研修ツアーです。
物見胡散の批判があります、多くの被災地の復興速度はご存知だと思われます。

今回のツアーは復興がされていない福島放射能汚染地区へのツアーです。
立ち入りに多くの制限があります、ツアーは汚染地区富岡町の主催ツアーでした。
復興がされていない現実を見て多くの方にその事実を発信して欲しいのです。
原子力発電の是非で争うことの意味は保留、今を生きる知恵思いやりで汚染地区富岡町を考えて欲しいとのことでした。

「舟を編む」読みました、だからSIROさんの書評の旨さに拍手。

Re: 三浦しおん

> 今回のツアーは復興がされていない福島放射能汚染地区へのツアーです。
> 立ち入りに多くの制限があります、ツアーは汚染地区富岡町の主催ツアーでした。
> 復興がされていない現実を見て多くの方にその事実を発信して欲しいのです。
> 原子力発電の是非で争うことの意味は保留、今を生きる知恵思いやりで汚染地区富岡町を考えて欲しいとのことでした。
>

テレビのニュースで見てさえその大変さがしのばれるのに、別便での写真を拝見すると、何も言えません。
現地で直接見ないとわからないことも沢山あることでしょうね。

> 「舟を編む」読みました、だからSIROさんの書評の旨さに拍手。

有難うございます。
今後ともよろしく。
プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR