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浅田 次郎 一路

一路(上)一路(上)
(2013/02/22)
浅田 次郎

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一路(下)一路(下)
(2013/02/22)
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数え年で十九歳まで江戸表で暮らしていた小野寺一路は、郷里の屋敷の焼失による父弥九郎の突然の死去により、参勤交代の御供頭を勤めることとなった。しかし、一路は御供頭の仕事について何も教えられてはおらず、また、貧乏くじを引くのを恐れて誰も手伝ってもくれない。途方に暮れる一路だったが、屋敷の焼け跡から見つけた「元和辛酉歳蒔坂左京大夫様行軍録」と記された冊子頼りに、古式に則った参勤交代を行うことを決意するのだった。

小野寺一路の仕える殿様の蒔坂左京大夫(まいさかさきょうのだいぶ)は参勤交代はしますが大名ではありません。知行七千五百石で、禄高も格式も高いという、世襲で知行地を持ち参勤交代の義務を負う交代寄合と呼ばれる旗本なのです。作者が大名ではなく、旗本の参勤交代という設定にしたのは、参勤交代の御供頭という役目を何も知らない十九歳の若造に負わせても不思議ではない舞台を設けるためなのでしょう。

とはいえ、大名ではないけれども格式は高い交代寄合という身分設定は、物語全体を貫いて実に絶妙な立場として物語が成立しているのです。浅田次郎という作家の手腕が発揮されている作品だと思います。

本作品は、言い切って良いか疑問はありますが、まあ、コメディなのでしょう。なにせ馬同士の会話や鯉の独白などが挟み込まれるのです。また、参勤の行列の先頭を飾る朱槍を捧げ持つ槍持ち奴が偶然にも一路の前に現れたり、御本陣や宿屋の予約、行列の先のりなどの雑用をこなしてくれる和尚がいたりと、実に都合よく話が進みます。しかし、『きんぴか』や『プリズンホテル』ほどに飛んでるわけではありません。時代小説としての作法はきちんと踏まえた上での物語なのです。

ただ、『新選組三部作』や『天切り松 闇がたりシリーズ』といった浅田次郎の一級の作品程の面白さは感じませんでした。本書で示されている侍のあり方というテーマも『黒書院の六兵衛』の方がより直接的で読み応えがあったように思います。ストーリー自体も少々物足りず、思いのほかに一路の思惑通りに行列が進みます。蒔坂左京大夫の人物設定が名君としてのありながらそれを押し隠しているさまも、また敵役として登場する蒔坂将監も、夫々に登場人物として魅力に欠けるからでしょうか。他の作品ほどに物語の世界に入っていけませんでした。

浅田次郎の作品ですので、作品の完成度に対する私の要求がかなり高くなっています。そうした要求を差し引いて見ると、そこはやはり浅田次郎の物語なのです。そういう意味では面白く読めました。

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