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百田 尚樹 影法師

影法師 (講談社文庫)影法師 (講談社文庫)
(2012/06/15)
百田 尚樹

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しばらく前に読了しており、レビューの下書きも済んではいたのですがUPするのを忘れていました。

茅島藩八万石の筆頭国家老である名倉彰蔵は旧友の磯貝彦四郎が既に二年前の冬に死んでいたことを知らされる。磯貝彦四郎は名倉彰蔵の竹馬の友でありながら、しかし、とある不始末で藩を逐電した男でもあった。若い頃は文武に優れていた彦四郎が何故に今頃になって戻ってきたのか、何故に彦四郎は胸を病み、貧しさの中に死ななければならなかったのか。

身分制度のはっきりとした地方の小藩の下士の家に生まれ、彰蔵がまだ名倉彰蔵ではなく戸田勘一と名乗っていたころ、父千兵衛は勘一の短気が元で上士に切り付け、逆に殺されてしまう。その騒ぎの折、泣きじゃくる勘一に「まことの侍の子なら泣くな」と言ったのが磯貝彦四郎であった。彰蔵は当時はまだ戸田勘一という名であった自分が、彦四郎と初めて会った、生涯忘れることのできないその日のことを思い出していた。

百田尚樹といえば大ベストセラーとなりった『永遠のゼロ』の作者であり、第10回本屋大賞受賞作の『海賊とよばれた男』を著した人でもあります。その人が書いた初の時代小説なのです。期待は膨らむばかりでした。そして、その期待はそれなりに裏切られることはなかった、と言えると思います。さすがに上手い作者だ、というのが最初の感想でした。どこか浅田次郎の小説に似ているのです。特に『壬生義士伝』がそうでしょうか。

ただ、「上手い」という印象は、「感動した」というのとは異なります。浅田次郎の『壬生義士伝』の時も上手い作家だと感心し、更に心の隅に暫くは感動と言ってもいい余韻が残っていたものです。残念ながら本作の場合はその余韻があまり残りませんでした。

私が読んだ文庫版の裏表紙に「確かな腕を持つ彼(彦四郎)が卑怯傷を負った理由とは。その真相が男の生き様を映し出す。」とありました。あまり詳しくは書けないのですが、この卑怯傷こそが浅田次郎程に本書にのめり込めない理由だと思います。

また文庫本の帯には「男の友情、そして絆」とありました。作者は男の在り方らしきものを書きたかったのではないかと思うのですが、しかしながらあまりに現実感が無いのです。学問に優れ、剣にも秀でていた彦四郎の生き方としては少々、いやかなり無理な設定だと感じたのです。

また、彦四郎の人となりについてある時期からは全く描いてありません。それこそが作者の意図だったかとは思うのですが、個人的にはそのことが逆に現実感を無くす理由の一つになっている気もします。

更に言えば、単行本では未収録で文庫本だけに収録された部分が袋とじになっていました。本書終盤で彦四郎の裏の思惑とでも言うべきものが垣間見えるのですが、そのことが書かれているのです。人によっては意外性を好む人もいるかもしれませんが、個人的にはこの部分は無い方が良かった気がします。同じ感想を持つ人もかなり居るのではないでしょうか。

とはいえ、そうした批判的印象を持ちながらも面白い小説だと思うのですから、やはりこの作者は上手いです。

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