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梶よう子 ことり屋おけい探鳥双紙

ことり屋おけい探鳥双紙ことり屋おけい探鳥双紙
(2014/05/20)
梶よう子

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江戸は日本橋の小松町にある飼鳥屋(かいどりや)「ことりや」の女主人おけいを主人公とする連作の中編小説集です。店で扱う対象が小鳥ということもあってか、梶よう子という作家らしい慈愛に満ちた暖かい視線で語られる物語です。

亭主の羽吉(はねきち)が、夜になると胸元が青く光る鷺(さぎ)を探しに旅立ってから三年が経つ。羽吉と同道した旗本お抱えの鳥刺しは一人で江戸に帰ってきていたが、羽吉とははぐれてしまい消息は判らないという。おけいは、羽吉のいない年月を「ことりや」を守ることに捧げているのだ。

ある日十五、六ほどの娘が紅雀(べにすずめ)、相思鳥(そうしちょう)、十姉妹(じゅしまつ)と次々と鳥を購っていった。小鳥が好きでも無さそうなその娘が次に来たときに、「あなたには、もう小鳥はお売りできません」と告げるおけいだった。

本作品の最初の物語である「かごのとり」は一人の娘の奇妙な行動の理由(わけ)が解き明かされていきます。このあとに「まよいどり」「魂迎えの鳥」「闇夜の白烏」「椋鳥の親子」「五位の光」「うそぶき」と続きます。

どの物語も、おけいが一人寂しさに耐えながらも、店を訪れる客や定町周りの永瀬の持ち込む話に一生懸命に耳を傾け、鳥にまつわる疑問を解いていきます。そのことが事件の裏に隠された真実を暴きだし、そこにある人間模様が心に沁み入る物語として描き出されています。

若干、物語のきっかけとなる出会いなど、偶然というのか、強引さが気になるところもあるのですが、それは小説の進行上、ある程度は仕方のないところではあるのでしょう。それよりも、この作者の話の進め方の上手さなのでしょうか、優しく語られる物語の先行きが気になり、きっかけの強引さも不自然とまでは言えないとして気にならなくなってしまいます。

脇役として、まずは曲亭馬琴がおけいの後見人的立場で登場します。戯作者である馬琴は物書きの間に息抜きに訪れる客ではあるのですが、おけいの良き相談相手となっているのです。次いで、先にも述べた北町奉行所の永瀬八重蔵という定町周りが登場します。この永瀬が持ち込む事件も、おけいが謎ときをしていくことになります。

この作家は「あさがお」であったり、「薬草」であったりと、自然の有りようを小説の中に取り入れ、展開していく作品が多いようです。その自然に対する作者の対峙のあり方が物語にもそのまま反映しているのだと思います。

毒が無い、と言えば確かにそうで、強烈な悪役も事件もありません。その点に物足りなさを感じる人もいるでしょう。しかし、そのことを補う語りの上手さで語られる、人情ものの中でもより視点の優しいこの作家の物語は、一息つける時間でもあるのです。

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