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青山 文平 約定

約定約定
(2014/08/22)
青山 文平

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やはりこの作家の作品は良い。本書もそう思わせる一冊でした。全部で六編の短編が収められた多分初の短編集です。

「三筋界隈」 生き倒れの浪人を助けた「私」は、今では一人の弟子もいない自分の道場へその浪人を連れ帰り介抱することとなった。その浪人は梶原派一刀流の使い手であったのだが、元気になると奇妙な依頼をしてきた。

「半席」 半席とは一代御目見え(いちだいおめみえ)という家柄のことをいう。片岡直人は徒目付ではあるもののこの半席であったため、永代御目見え以上になるために気を入れて仕事をする必要があった。そんな直人に組頭の内藤康平から二十日ばかり前に死んだ矢野作佐衛門の死について調べて欲しいという依頼があった。

「春山入り」 中川派一刀流の取立免状を許されているほどの剣の使い手である原田大輔は、川村直次郎から藩主お声がかりの儒者の国入りに際しその警護を頼まれる。しかし、問題は、反対派の中核に、幼馴染の島崎鉄平がいるということだった。

「乳房」 那珂(なか)は養父の島内清蔵が薦める西崎弘道に嫁ぐことになった。しかし、その西崎は質素を旨とし、日々の日課を粛々とこなすだけの人物だった。その西崎が上方在番で一年の間不在になるという。那珂は自由な日々を夢見るのだったが・・・。

「約定」 明和九年三月七日明け六つ、浄土が原で望月清志郎(もちづきせいしろう)は約定の果たし合いに来ない相手をいぶかりながら、腹を切った。

「夏の日」 旗本西島家の知行地で小前百姓の利助が殺された。知行地の名主である落合久兵衛(おちあいきゅうべえ)のもとに逗留していた西島雅之(にしじままさゆき)は、久兵衛から利助についての話を聞かされるのだった。

どの物語も、主人公の身近な人物が侍としての矜持を貫くその姿から、主人公自らの姿勢を正す様が描かれています。

「三筋界隈」は生き倒れの浪人、「半席」では矢野作佐衛門の死に様、「春山入り」では幼馴染の島崎鉄平の行動と、主人公のまわりの人の振舞いを見て主人公が思料するのです。独特、と言って良いのかは分かりませんが、その周りの人の心情そのものは読者にも明示してありません。当然のことながら主人公も対象となる人物の内心を推し量ることしかできず、読者は主人公の推量を示されるのです。勿論、主人公がそのように考えるだけの根拠は提示されています。そして、そう考える根底には侍の矜持、侍の振舞いのあるべき姿があるのです。

やはり、この作家の作品は見事です。葉室麟の作品で示される侍の姿も感動を呼び起こしますが、葉室麟の作品が登場人物の細やかな心の動きを静謐な文章で語っているのに対し、青山文平のそれは凛とした文章で、より直截的に語られていて、静かな余韻をもたらしてくれます。

ともあれ、青山文平氏の作品はそれほど多くはありません。他に『鬼はもとより』という新刊が出ているそうなので、早速に読みたいと思います。

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 短編集、
私が主人公か

Siroさんの書評を読み直してみる
私が主人公でいいのですよね、

時代小説が続きますね、
時代小説は気持ちをゆったりと落ち着かせてくれる効果を感じています。

「約定」はSiroさんの評価が高いので気になる本の一冊となりました。

Re: 私

> 私が主人公でいいのですよね、

夫々が独立した物語です。
「私」は第一話「三筋界隈」の主人公(?)です。
私の書き方では連作短編集のようにも読めるかもしれませんね。
失礼しました。

> 時代小説が続きますね、
> 時代小説は気持ちをゆったりと落ち着かせてくれる効果を感じています。

はい。
自分を見つめ直すきっかけにもなりますね。

> 「約定」はSiroさんの評価が高いので気になる本の一冊となりました。

最近読んだ本の中では「田牧大和」も「畠山健二」も悪くはないです、「青山文平」という作者の作品が一番のお勧めです。

夫々のコメントへのまとめての返事とさせてください。
ごめんなさい。

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(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

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