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梶 よう子 桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介


私が一番最初に読んだ梶よう子の作品が『柿のへた 御薬園同心 水上草介』でした。その続編がやっと出ました。

小石川御薬園での毎日を植物の世話に明け暮れる水上草介(みなかみそうすけ)のもとに、吉沢角蔵(よしざわかくぞう)という二十歳そこそこの見習い同心がやってきた。角蔵は何事にも融通が聞かず気難しく、園丁達からは堅蔵(かたぞう)と呼ばれるほどの堅物なのだが、更には角蔵とは正反対の性格の妹美鈴まで現れ、二人して草介の日常に何かと問題を巻き起こすのだった。一方、千歳との仲は相変わらずで、ただ、千歳の振る舞いが折に触れ草介の胸の奥に奇妙な痛みをもたらしていた。その千歳に縁談が持ち上がる。

前作と変わらずに非常に優しい筆致です。読んでいる間中、あたたかな気持ちで満たされながら、草介の行いの一つ一つにやきもきさせられます。この頃、ハードな物語を読む機会が多かったので特にそう思うのかもしれませんが、とにかく読後感が爽やかです。ほっこりとした気持ちがとても心地良い時間でした。

当初は御薬園という舞台設定や主人公の性格設定もあって印象が優しいなのかとも思いましたが、この作者の作品を何冊か読んでみると本質的に優しい人なのだろうと思えて来ました。薬園や朝顔、小鳥などの自然の描写を巧みに取り入れながら、人間の営みの中で起きる様々な出来事を、無理をしないで一つずつ解きほぐしていけばいい、と言っているようなのです。

どの作品も派手ではありませんが、心温まる物語として仕上がっています。悪人という悪人は出てこず、ゆっくりと時が流れ、それでいて単に優しい文章が続くのではありません。草介と千歳との掛け合い、角蔵とその妹美鈴の有りようはユーモアに満ちていて、ほのぼのと、そしてコミカルに物語が展開するのです。

この後もいつまでも続いてほしいシリーズの一つです。

ちなみに、タイトルの「桃のひこばえ」とは「樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のこと」です。「元の幹に対して、孫のような若芽」ということで呼ばれているらしく、漢字を当てると「孫生え」だそうです。

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