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佐伯 泰英 居眠り磐音江戸双紙(46) 弓張ノ月


今回はこれまでの作品とはほんの少しだけ変わった作風になっています。

つまり、本筋の磐根と田沼の争いという本筋の流れから離れ、佐野善左衛門政言による田沼意知殺害事件に焦点が当てられているのです。いわば、歴史的な事実である息子田沼意知殺害事件を主題とする歴史小説と言えなくもない構成になっています。これまでの巻で、田沼意次親子が佐野政言から佐野家の系図を借りるもなかなか返却しないことから、佐野政言が何かと問題を起こす様が描かれてきました。それは、本作に焦点が当てられていたと思われます。

とすれば、この佐野政言について書かれてきた話は、もしかしたら今後の物語に絡むのかもしれませんが、意外に単なるエピソード的な扱いに終わってしまうのかもしれません。本編にどのように組み込まれるものかと思っていたら肩透かしされた、というのは言い過ぎでしょうがそれに近いものはあります。

でも、敵役である田沼意次の息子意知の死去という事実は本筋に大きな影響を与えることは事実でしょうし、この物語の終盤を迎えるにあたり避けては通れない事件ですので、そういう意味では上手い構成と言うべきか、とも思います。

とはいえ、物語としては面白いものでした。この物語の少なくない登場人物のその日の行動に少しずつ焦点を当てて紹介しながら、その時に向けて緊迫感を盛り上げていく手法は見事にはまっているのではないでしょうか。

田沼意知の最後に向けての雰囲気作りはまたこのシリーズの終わりも近いことを語っているようで、あと数巻になった本シリーズの最後の息抜き的な物語だったのかもしれません。作者の言葉を信じるならば本書を除いて残り三巻です。

長大な物語の最後を待ちたいと思います。

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