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黒川 博行 国境


先に読んだ『疫病神』での掛け合いをそのままに、相変わらず調子のよいコンビの登場です。何と今回の舞台は北朝鮮です。

建設コンサルタント業の二宮は自分が仕事の仲介をした相手が、また暴力団幹部の桑原は自分の兄貴分が、夫々に詐欺師の口車に乗せられてしまいます。二人はそのしりぬぐいのために、詐欺師を北朝鮮まで追いかけて例のごとく騒動を巻き起こすのです。

著者がこの作品のために実際北朝鮮に行かれたのかどうかは不明ですが、巻末に記されている資料の数は膨大です。六十冊は軽く超えていると思われます。ですから、その描写は実に詳細で、実際に現場に行かれたのではないかと思わせる書込みなのです。

その北朝鮮を舞台に、暴力団幹部の桑原と建設コンサルタント業の二宮との珍道中が繰り広げられます。珍道中とは言っても、場所は北朝鮮であり、桑原はヤクザですから、単なるコメディとは違い、どこかシリアスで侠気(おとこぎ)に満ちており、ストーリーに引き込まれてしまうのです。

著者がインタビューに答えた文章がネットにありました(こちら)。そこでの記述によると、このシリーズは大ヒット映画『悪名』(今東光原作、1961年)にヒントを得ているそうです。勝新太郎と田宮二郎のヤクザと堅気のコンビが活躍するこの映画は、私が学生の頃にテレビで放映されているのを見た覚えがあります。言われてみればこのコンビだと納得です。

また、「リーダビリティー(読みやすさ)」を意識し、そのリーダビリティーとは「キャラクター」だとも言われています。「あとは会話やアクションのテンポ。早く展開するように、ハリウッドのエンターテインメントが勉強になっています。」と述べられているのですが、まさに著者が言われる通りの物語が出来上がっています。

私達が報道で見聞きすることはあっても、その内実は殆ど知らない北朝鮮という国。観光客には必ず案内員と称する監視がつき、その指導に従わなければなりません。勿論、物を言うのは金で、北朝鮮の警察組織にあたる社会安全員さえも金で動きます。

ちなみに、ウィキペディアによると、「社会安全員」とは以前は社会安全部と呼ばれていましたが、2000年4月に人民保安省、2010年に人民保安部と改称され、国防委員会の直属機関となり、現在(2015年)に至っているそうです。

私達平和日本に住む国民には理解できない国。勿論日本の常識が通用する筈も無く、少しの違反でも命取りになりかねない彼の国が舞台です。しかし、桑原はあいも変わらずにマイペースで、その桑原に振り回されているのがこれまた同様の二宮なのです。

著者の言うように、読者を楽しませることを目標に書かれたこの本は十二分にその目的を達していると思います。

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