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三浦 しをん まほろ駅前狂騒曲


おなじみの面子の多田と行天に加え、本作では『番外地』で登場した柏木亜沙子が加わっています。また、本書では「はる」という四歳の女の子がキーマンとして登場するのです。

多田は、行天の過去を知る女性から頼まれ、少しの間、「はる」という名の女の子を預かることになった。問題は極端なまでに子供を嫌う行天なのだが、なんとか騙しながらも三人の共同生活が始まる。三人で暮らす間にも仕事は入り、星の絡んだ依頼や、岡氏を中心とした年寄りたちの騒動に巻き込まれたりと、多田は息のつけない毎日を送るのだった。

本書で登場する女の子「はる」は行天の過去に関係する女の子なのですが、子供に対して異常なまでの拒絶反応を示す行天の、四歳の女の子とのやり取りはまた見ものです。四歳にしては少々達者すぎるとも思えますが、そういう点は物語のリアリティを損なうものでもなく、かえってこの作者の世界が十二分に広がって、より楽しめる物語となっています。

この作品の主軸が「はる」だとすると、横軸として、無農薬野菜の推進団体の話があり、そこで多田と行天の過去が少しずつ明らかにされます。結局は二人の過去も「はる」に何らかの意味で繋がるものではあるのだけれど、そこには家族や夫婦のあり方など、読者に色々と考えさせられるものがあります。

加えて、個々の便利屋の仕事先での出来事もまた物語のリズムを作り、その物語のそれぞれがユニークです。極めつけは、無農薬野菜の推進団体に裏社会のキング的存在の星が関わり、ちょっとした事件となって、そこにこれまた本シリーズの常連である岡氏が騒ぎを巻き起こします。

多田本人の身の上にも変化はあって、勿論そこには行天も絡んでのドタバタが繰り広げられ、ちょっとしたロマンスも生まれるのです。

一点、小さな不満を書くとすれば、ラストシーンの星の立ち位置でしょうか。裏社会で幅を利かせているのなら、もう少し距離を置いてほしかった。詳しくは書けませんが、ワルなりの関わり方を貫いてほしかった、それくらいでしょうか。ここに書く程の事でもないのですが。

あらためて多田と行天を見ると、この面白くも不思議な関係性は読者にとって一つの理想的な関係性かもしれません。「友情」などという言葉は過去のものであり、死語となりつつある現在ですが、そうした関係性には誰しも憧れるのではないでしょうか。そうした関係性を大声で主張することなく、いつの間にか作り上げていくところが、この著者のうまさなのでしょう。

読書に、どれだけ幸せなときを過ごせたか、ということを一つの目安とする私には、三浦しをんの小説は最高の時をもたらしてくれる一冊であり、今のところはずれはありません。

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