FC2ブログ

誉田 哲也 増山超能力師事務所


「ダークマター」という超能力の働きに関わる星間物質の存在の証明によって、超能力の存在が世間で認知され、その測定方法まで確立された社会。「日本超能力師協会」はそういう社会での超能力者の団体です。いわゆる「士業」の一つという位置付けでしょう。ちなみに「超能力師」ではなく「超能力士」である理由は、「力士」、即ちお相撲さんみたいで嫌だ、という女性能力者の意見によるものだそうです

その超能力師の事務所のひとつ「増山超能力師事務所」にまつわる物語を描いているのが、全七編の連作短編小説集である本書です。とはいっても、「内実は普通の探偵業とあまり変わらない」らしい。

これまでの誉田哲也の小説のうち、『ストロベリーナイト』で代表されるミステリーではありません。また『アクセス』のようなホラーではなく、人間ドラマの系譜に属します。でも『世界でいちばん長い写真』のような青春小説よりはエンタメ性が強い物語です。なにせ超能力が題材ですから。

第一章の「初仕事はゴムの味」では、二級超能力師の試験に合格した高原篤志の仕事ぶりが描かれています。そこでは、超能力者ということで「世間に認めてもらえないというのは、人間にとって非常につらいことだと思う。」という独白があります。社会から排斥されていたのだけれど、超能力師という有資格者になったことで「無能力者というマイノリティから、超能力師という有資格者、立派な社会的マジョリティの仲間入りを果たしたのだ。」という喜びを持って出勤するのです。

第二章は高原篤志の先輩二級超能力師である中井健の視点での物語です。家出した娘を探してほしいという依頼を処理します。

第三章では、宇川明美という新人も登場し、ある政治家の絡んだ調査依頼に所長の増山自らが乗り出します。

こうして、多視点で物語は進んでいくのですが、書評家の藤田香織氏も書いているようにマイノリティの物語と言えると思います。超能力を持つがゆえに社会から排斥され、「普通の人」からは拒絶される超能力者たち。彼らの苦悩を知りつつ、それでも助け合いながら社会に認知させていく、その姿をエンターテインメントの衣を着せて読ませてくれます。

この作家の作品の中では多分優先順位はあまり高くは無いと思います。でも、やはりこの作家の作品は面白い、としか言えないのもまた事実でしょう。シリーズ化されて続編が出るのであれば、勿論読みたいと思う一冊です。

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

siro

Author:siro
このブログの本棟として本の紹介のサイトを開いています。
(こちらです⇒読んだ屋
本ブログを別棟として位置付けて、読んだ本を記録していこうと思い立ちました。ここでの文章を母屋であるそのサイトに転記していくつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR