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高嶋 哲夫 ジェミニの方舟


自然を相手にしたパニック小説です。この著者の『M8』『TSUNAMI』という作品とあわせてパニック小説三部作があり、本書はその三冊目だそうです。

東京の荒川領域は、「街は川の流れよりも低い位置に広がってい」て、堤防が決壊すればひとたまりもなく壊滅するだろう海抜ゼロメートル地帯である。静岡県牧之原の「日本防災研究センター」に出向している東都大学理工学部地球物理学科の講師・玉城孝彦は気象を専門とし、スーパーコンピュータを使っての台風の発生メカニズム等の研究をしているが、そのシミュレーションは超巨大台風の襲来を描き出した。数日後、中心気圧が820ヘクトパスカルを下回り、最大瞬間風速は80メートルを超えるという超巨大台風が首都東京に襲いかかる。

エンターテインメント小説としては一級の面白さを持った小説です。台風が次第に巨大化していく様を描く前半は次第に不気味さが広がっていきます。20年ほど前にあの19号台風の直撃を受けた身としては、いやでもその時のことを思い出してしまいました。

後半は実際に超巨大台風に直面した時の行政の動きを描きつつ、主人公家族のありようを追い掛けています。

本書はパニック小説です。決してシミュレーション小説とは言えないと思います。危機に際しての行政の対応を追い掛けてはあるのですが、そこに重点があるのではなく、あくまで主人公やその妻、子らの動きがメインです。

台風の脅威を背景に、主人公家族の戸惑いを中心に人間の自然の脅威に対する対応を描いていて、パニック小説としての面白さが十二分に展開されています。国や東京都という行政の活動の描写が二次的であるのが功を奏していると感じました。

勿論、小説の宿命として、特に台風の規模などはデフォルメされている部分もあるでしょう。しかし、現実に福島原発での惨事を経験している現在では、その誇張も決して誇張とは思えないところが怖いです。自然の前では「何が起こるか分からない」という主人公の言葉が重く感じられます。

初めてこの作者の作品を読んだ、と思っていたら、あの映画化された『ミッドナイト・イーグル』の作者でした。まだ、原作本は未読ですが、本書を読む限りは変に専門的な言葉をちりばめるでもなく、読み易い文章で、一気に最後まで読んでしまいました。他の作品も読んでみたいと思わされる作家さんでした。

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